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新銀行東京 延命策 見えぬ根拠【朝日】
http://www.asahi.com/national/update/0315/TKY200803140410.html
2008年03月15日03時12分
都民の税金1000億円をつぎこんで経営難に陥った新銀行東京について、石原慎太郎都知事はさらに400億円を追加出資することが「次善の策」と訴える。
こうした「延命」ではなく、自主清算や破綻(はたん)処理による銀行業からの撤退となれば、持ち出しはより大きくなるという見解だ。
だがその根拠となる情報は十分に開示されておらず、金融の専門家からも疑問の声があがる。
新銀行東京の融資状況
定例会見を終えて退席する石原慎太郎都知事=14日午後、都庁で
■回収不能額 想定に疑問
銀行を自主解散する「事業清算」は、金融庁の許可を受け、協力銀行に融資先と預金者を引き継いで清算会社に移行する形。都は、預金4000億円の全額払い戻しも想定し、銀行が保有する有価証券売却などに加え、新たに都から1000億円の貸し付けが必要になると見込む。また、過去の銀行や信用金庫の破綻例から、融資総額の5割前後の約1000億円が回収不能になると推計する。
立教大学の山口義行教授(金融論)は「預金は融資とセットで受け皿銀行に譲渡される。預金が消えることはなく、貸し付けが必要なほど取り付け騒ぎが起きる状況にはならない」と疑問を示す。
融資回収についても「本当にそこまで融資先の経営が悪いのか」と指摘する。実は融資残高のうち大企業分が1200億円(50社)あり、同行も「焦げ付く可能性はほとんどない」と認める。推計通りなら残る中小企業分の大半が焦げ付く計算で、「よほど経営が苦しい企業ばかりに貸し付けていないと、こういう数字は出てこない」。
都は「受け皿銀行がない」とも主張するが、山口教授は「財務状況がきちんと公開されれば、可能性は見えてくる」という。
もう一つの選択肢、預金保険法に基づく破綻処理について、都は「ペイオフ発動となり、国民経済上多大な損失が発生する」と訴える。同行では1月末現在、1000万円を超える部分の預金は477億円。しかし、同法の規定では、預金を全額保護する特例もある。
■問題先送り 負担拡大も
新銀行は08年度中に自己資本比率が4%を下回り、金融庁の業務改善命令の対象となる見通しだ。信用度の急落を心配し、都は400億円の追加出資案を決めた。「融資先にも預金者にも影響が少ない策」だという。
銀行側は追加出資を受けたうえで、店舗を1カ所にして従業員も減らし、融資残高も4分の1にスリム化する。一方で業務粗利益を倍にし、「11年度の黒字化」を目指すとしている。
慶応大の池尾和人教授(金融論)は「金融庁による厳密な資産査定をしないまま追加出資を決めるのはどうか」。90年代の金融危機では、金融機関自らの恣意(しい)的ともとれる資産査定で経営破綻に至った事例があった。第三者の査定がない事業継続は「問題先送りの懸念がある」と指摘する。
中小企業融資が既存金融機関でも難しい中、新銀行のコンセプトは「ビジネスとして成り立たず赤字垂れ流しになる」と話すのは早稲田大大学院の川本裕子教授(金融システム)。都内中小企業は07年に2500社が倒産し、2年連続の増加。審査を改善しても、不良債権が予想より膨らむ恐れも懸念される。
そうなると400億円で足りず、さらなる追加出資もあり得るとする。将来再び経営が悪化し清算などの処理を迫られた場合、長期的には都民の負担が大きくなる。
経営規模を縮小し「身軽」にしておくのは、「今後の業務提携や営業譲渡への布石」とみる向きもある。これまで11金融機関と交渉して不調に終わったが、石原知事は「ノー(といわれているわけ)ではない」と話している。
■石原さんは銀行業を甘く考えすぎている 大手行首脳
大手銀行首脳は「石原さんは銀行業を甘く考えすぎている」と手厳しい。「単独での生き残りは無理。追加出資で食いつなぐにしても、ビジネスモデルをしっかり立て直してくれる救済相手を見つけなければならない」とある大手銀幹部は話す。
だが、それについても「支援する金融機関など出てくるのか」と別のメガバンク幹部は懐疑的だ。新銀行東京は預金者に対し、他行よりも高い金利を提示することで融資に回す原資を調達してきた。それだけに「同じ条件で資金調達を続ければ、自行の業績を圧迫することになる」(大手銀幹部)。
もはや、当てもなく支援先を探すより、いち早く自主清算する方が結果的に都民の負担は軽く済む――。そんな考え方も銀行業界には根強い。
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