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夕張 2008春<上> 疲弊する市職員 『頑張った先 見えない』【中日新聞】
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008030902093867.html
2008年3月9日
北海道夕張市は、雪解けの季節を迎えた。だが市職員がまた去って人口は減り、残った住民らは支え合いを頼りに暮らす。三月、同市は財政再建団体になって二年目に入った。 (鈴木久美子)
「お世話になりました」
二月二十九日午後六時、市役所一階の市民課で、同課職員の高田秀昭さん(31)が花束を抱えて深々と頭を下げた。この日で、市役所を辞めた。
「子どもや家族の生活を考えれば、当然の選択だが…。ここまで減ると一人でも痛い。悲惨だ」と、拍手で見送った職員は、顔をゆがめた。
給与30%カット。二〇〇七年から十八年間で三百五十三億円の借金を返済する財政再建計画に従い、市は大幅な人件費削減を進める。昨年度末に全部長を含む百五十二人が退職して百二十七人になった職員はさらに、百十三人に減った。
高田さんは市民課で、国民健康保険を担当していた。昨年、同課の保険担当者は七人から五人に減るなか、後期高齢者医療制度など、今年四月以降の制度変更に伴う事務作業はかえって増えた。
「やってもやってもおっつかず精神的におかしくなった」と高田さんは一年を振り返る。夜中に帰宅し、妻や一歳半の娘と話す気力も起きない日が続いた。同じ苦労なら新しいところで、と昨夏、職探しを始めた。札幌市営地下鉄に職を見つけ同市に家族と引っ越す。
市は職員減の対策で今年機構を変え、担当ごとに「グループ制」にしてチームで仕事を支えようとしている。だが「そもそも元の数が少なすぎる」(ある職員)。
市民課に、今年一月東京都から派遣された職員の鈴木直道さん(26)がいる。「紙ファイルさえぼろぼろになるまで使っている」と金が使えない窮状を肌で感じる。
「頑張った先の道が見えず、職員は疲弊している。国や道の支援の下で人を減らすのだから合理的な体制でスタートしていると思っていたが、そうではなく、まず計画ありきで、あとは無理やりやれという感じだ」
◇
去る人あれば、来る人もいる。
「ここで暮らす。お互いできることを考えた」
約九百世帯の住む若菜地区で、若菜連合町内会会長の川村実さん(71)らは週二日、「ふれあいサロン」を開く。閉鎖された市役所支所に、志願した住民十七人が交代で“相談員”を務める。
「役所の手続きを含め何でも困ったことがあれば、話していってもらう場。独り暮らしの引きこもりを防ぐためにもね」
身寄りのない四十四人が暮らす市養護老人ホームは、改修費用のめどがつかず、再建計画で来年三月の廃止が決まっていた。だが、夕張に近い恵庭(えにわ)市の社会福祉法人「いちはつの会」(西部充子理事長)が名乗りをあげ、今年十月から運営を引き継ぐ。建物は無償で譲渡、土地も無償で貸与され、同法人は老朽化した建物の改修も行う。
「同じ炭鉱町の三笠市出身の理事長が、放っておけなかった。困ったときはお互いさまだ」と西博康事務長は言う。
だが市の人口減は止まらず、一月末で一万二千百六十九人と昨年同月より六百二十九人減。三十九歳以下が約9%、四十−五十九歳が約7%減り、高齢化率は42%だ。「もうすぐ限界集落になる」(住民)。
市民税や各種手数料など住民の負担は増え、税収は減った。本年度、再建計画で見込んでいたより地方税収入は約八千百万円少なかった。
「誰もいなくなるまで待てということか」。ある住民はこうため息をついた。 =次回は十三日掲載