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橋下・大阪知事就任1か月
歳出カット突っ走る【読売】
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80306c.htm?from=tokusyu
大阪府の橋下徹知事は6日で就任1か月を迎えた。38歳という若さを武器に、かつてないスピードで財政再建に取り組む姿勢には、府民から「大阪が変わるかも知れない」と期待の声が上がる。一方で、次々と繰り出される歯切れ良い改革のスローガンには、「打ち上げ花火に過ぎない」との批判も。記者会見が生中継されるなど、その一挙手一投足が注目を集める最年少知事の今後を探った。
職員操縦アメとムチ
本音はどこに
初議会となった2月29日の所信表明演説。橋下知事は「大阪維新」という言葉を2度繰り返した。
「〈大阪を変えたい〉じゃ、ちょっと締まらないんで、作った言葉」と本人は気に入っているようだ。
「府債発行原則ゼロ」「財政非常事態宣言」「全事業見直し」。刺激的な「ワンフレーズ」を繰り出す。まずは方針を打ち上げて、状況を見ながら、落としどころを探る〈橋下流〉。水面下で検討を始め、煮詰めていく通常の行政手法とは、大きく異なる。
「意気込みのない職員は府庁を去れ」「(記者会見での)無意味な質問は容赦なく論破する」と攻撃的な発言も繰り返し、波紋を広げてきた。中でも、「民間ではあり得ない」と批判の矛先を向けているのが、府立施設や出資法人だ。
2月24日には、府立青少年会館の運営に携わる府の出資法人職員が民間側スタッフの3倍の給与で働いていると聞き、テレビカメラの前でこう言い放った。「(職員派遣は)なしでいきましょう」。現場での即断は、そばで聞いていた幹部を慌てさせた。
とはいえ、個別の事業・施設の見直し方針について尋ねられると、「PT(プロジェクトチーム)が検討している」「最後は政治決断する」と述べるにとどまる。府幹部からも「どうしたいのか本音が見えない」との嘆き節も漏れる。
矢継ぎ早にメール指示
24時間労働
2月中旬。ある府幹部が週明けに庁内のパソコンを立ち上げると、土日に発信されたメールが十数通あった。差出人はいずれも「橋下徹」。そこには知事の思いや新たな方針が記されていた。
部長級幹部あての通称「部長メール」で、土日でも、深夜でも、矢継ぎ早に指示を飛ばす。「僕は休みでも24時間働いている。皆さんにも受信責任はある」とプレッシャーをかける反面、素早く対応した職員にはメールの中で名前を挙げて絶賛し、付け加える。〈僕は感動しています〉と。
2月22日には、府庁の全職員にメールを送り、直接メールで意見や不平不満を送るよう呼びかけた。同27日の部長会議では「残業代稼ぎの人をどうにかしてほしい」「資料作成に時間をかけすぎ」など直接届いた“内部告発”の一部を紹介、改善を指示した。若手職員からは「意見を反映してもらえるなんて、以前では考えられなかった」と期待の声が聞こえる。
「反論に応えず」の批判も
したたかに逆ギレ
「どこまでもついていく所存でございます」。今月2日に大阪市内で開かれた自民党府議後援会の集会。あいさつに立った橋下知事は、府議を幾度も「お兄さん」と呼びかけ、親しさをアピールした。
知事選で支援を受けた自民、公明両党府議団に対しては、後援会でのあいさつはもちろん、議会対策の「根回し」も欠かさない。所信表明の文案や暫定予算案なども、事前に説明し、したたかさをのぞかせる。
その反面、批判されると、感情をむき出しにする場面も。テレビ番組では、アナウンサーやキャスターに声を荒らげて言い返した。橋下知事は「計算していなければ単なるバカ」と計算ずくであるとするが、「反論されると逆ギレして、政策論争に応えていない」(府議)との批判は強い。
さらに、橋下知事が府の特別顧問就任を要請した上山信一・慶応大総合政策学部教授(50)を巡っては、「強力なブレーン」との評価とともに、「火種になりかねない」との見方が庁内に広がる。
上山氏が大阪市の市政改革推進会議委員長として、市政改革を強力に進めた結果、市議会から「議会軽視」と反発を受けた経緯もあるだけに、橋下改革の行方に影響しそうだ。
出資法人・府立施設、6月めどに結論
橋下知事は就任と同時に財政非常事態を宣言した。知事直轄のプロジェクトチームで、46出資法人の存廃や府立25施設の廃止・民営化検討を含め全事業の見直しに着手。6月をめどに結論を出し、8月以降の本予算に反映させる。
予算編成では、借金返済のために積み立てている「減債基金」からの借り入れや、国の目安以上に府債を借り換えていた「禁じ手」をやめる。さらに、今後9年間で計6500億円の改革に取り組まなければ財政健全化団体に転落するとの試算を発表。事業費、人件費削減にどこまで踏み込むかが焦点となる。
識者
「予算の勉強をしっかり」「効率財政手段が目的に」
識者は橋下府政をどう見るか。
作家で東京都副知事の猪瀬直樹氏「職員に『破たん企業の従業員』と言っているようだが、その通りだと思う。役所は『面従腹背』の世界。それを知るためにはある程度の経験が必要で、気を付けたほうがいいとアドバイスした。まずは予算をしっかり勉強してもらいたい」
神野直彦・東京大教授「住民の生活を守るのが行政の責務。効率的な財政運営は、そのための手段に過ぎず、橋下知事は手段を目的にしている。黒字の最大化を目指す民間企業と、赤字でも暮らしに必要な事業を行う行政とは、違う。ムダを省くのはいいが、失敗のツケは知事ではなく、住民が背負うことを忘れないでほしい」
インタビュー
「最後は政治決断で・・・」
就任1か月を前に読売新聞のインタビューに応じた橋下知事。主な発言は次の通り。
――就任から1か月になる。
責任の重さは感じますよね、その判断の一つ一つに。言ったって、38歳ですから。今までだとクライアントだけだったり、テレビの発言といっても視聴者に責任とるわけじゃなくて、テレビ局に対する責任だけですからね。今は880万人の府民に責任とるポジションなので、正直、この年齢で重いっちゃ、重いです。
――印象に残ったことは。
組織が大きいのに、方針決めたら動くのが速い。民間企業ではあり得ない速さ。3日、4日後には府内全域に、実施されます。すごいなと思いましたね。ただ裏を返すと危険ですよ。超独裁者になってしまう。そこはしっかりメディアの皆さんに批判してもらい、庁内で議論していきます。
――6500億円の歳出削減が必要と発表した。
1年目から6500億円に向けてやるのか。「転覆しないよ、大阪は」「なんやかんやと最後は国が面倒みてくれる」という議論になるのか。まさに議論を起こすために、事務方にこの数字をはじきださせた。メディアの報じ方や、議論がどうなるのか見てみたい。
――出資法人の在り方についてはどうか。
財団職員がやっている仕事内容がわからない。みんな言うのは、コーディネート業務。僕のイメージでは、民間に放り投げているだけ。それで年収1000万円というのはどうなんだと。大変ですよ、これは。6月までに全部見直すということを言いましたけれども、どこまで出来るのか分からない状況です。
インタビューに答える橋下知事(大阪府庁で)=上田尚紀撮影 ――ダム建設について、どう考えるのか。
国直轄ダムの追加負担金に関しては、これは嘉田(由紀子・滋賀県)知事ともこの間お話ししたんですけど、京都と大阪と滋賀で共闘して説明を求めようということになった。ちゃんと説明がなければ追加のお金なんて払えない。これはやります。
――どのように事業の見直しを進めるのか。
やれるところをとにかくやって、6月までに出来た範囲で最後、政治決断します。エイヤーで。それしかないですね。議論を起こしてもらって、僕も判断しなければいけない。でも府民が関心あるかなというのがちょっと心配なんです。
――就任後も前言撤回を言われている。
前言撤回とか言っている人は一部の識者とか、そういう議論が好きな人たちじゃないですかね。前言撤回だろうが何であろうが、今のこのやり方をやって、見直しをしているわけで。そうじゃないやり方をやっていたら、一切このような見直しにはなってなかったと思う。
大局観示せ・・・インタビューを終えて
「オセロで眼前の白黒の取り合いに勝つ戦術はあっても、四隅を取る戦略には欠ける」。知事の昔からの友人の「橋下評」だ。
職員たちは、そんな知事に従順に仕えている。例えば、ロハスライフ支援事業。「健康と環境を重視した価値観(ロハスライフ)を提供します」という遊休地の活用施策は、知事の指示で、廃止が決まった。事業の有効性を否定されながら、幹部からは異論もなく、公の仕事を担うプライドも感じられなかった。
走りながら考えるトップと、唯々諾々と従う職員たち。歳出削減だけを旗印に突っ走った結果、気がつけば「四隅」はすべて取られていた――なんてことのない大局観を望む。
(祝迫博)
(2008年03月06日 読売新聞)