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「堀川の奇跡」について地元紙が報じた「奇跡でも何でもない」の意味
「堀川の奇跡」の作り方
京都市立堀川高等学校について小話を少し述べたい。この堀川高校の生徒が国公立大学に現役で多数合格していることから、巷では「堀川の奇跡」と称されることがある。
しかし、「奇跡」というとオール1の生徒がオール5になり、めでたく京大合格と言ったような具合が奇跡だと思うのだが、実際はそうではないらしい。
簡単に言えば、優秀な生徒を堀川高校に集めることから始まる。優秀とはもちろん、学校の成績が優秀であるという意味だ。次に堀川へ入学した生徒達は大学受験のため、徹底的に教育させる。元々成績優秀な生徒だから、受験のための成績が優秀になるのは目に見えている。そして国公立大学現役合格へとなる。
実に単純な話である。出来の良い生徒を高校へ入れて特訓させて、大学へ合格させる。奇跡は予め作られた計画に沿って実施されているのが分かる。
以上申し上げたのは私の虚言ではない。堀川高校の地元紙「京都新聞」でも報じられている。「京都新聞」2005年9月28日の記事には次のような一文がある。
−引用開始−
公立高の専門学科といえば、かつては農業や工業、商業など職業に直結していた。だが、1996年に嵯峨野高が「京都こすもす科」を開設したのを契機に、堀川高や西京高が次々と普通科型の専門学科を設置する。普通科と違って通学圏にとらわれず府内全域から募集できるうえ、推薦入試で優秀な人材を先取りできる。粒ぞろいの生徒を集め、事実上の「受験専門学科」にしようという狙いだ。
こうした専門学科の特長をいち早く見せつけたのが、堀川高探究学科だ。一期生6人が2002年度入試でいきなり京都大に現役合格。以降も10人、32人、24人と、着実に京大の合格実績を挙げている。私学優位だった京都で公立復権の先鞭(せんべん)をつけ、市教委も「堀川の奇跡」と呼んではばからない。
−引用終了−
また、同じく「京都新聞」2005年8月19日の記事には、その実情が述べられている。この中で、堀川高校の校長ではない校長が、自らの高校でも「東大、京都大、大阪大という超難関大学に、現役で進学できるようなシステムを校内につくる」のだという。そして、この校長の話によれば「府内全体の京大の現役合格者数は昔からそれほど変わっていないはず。同じパイの中から優秀な生徒をどれだけ集められるかで、高校の進学実績が決まる。それが現実」と述べている。直接、堀川高校を意識しての発言ではないものの、京都府内における進学の実態を的確に述べている。
つまり進学の数値は変わっていないものの、どの高校がいかに現役で生徒を大学に進学させるかという「競争」を行っていることが分かる。言い換えれば府内の公立高校によって、「格差」が生じてくる。
同じく記事を読み進めると「堀川の奇跡」について、「02年度の大学入試で、堀川高の専門学科第1期生6人が京大に現役合格し、『堀川の奇跡』と呼ばれた」とある。しかしながらその後に続く中で関係者は「入学した生徒の学力レベルから見れば奇跡でも何でもない。そういう生徒が入学する学校に変えたことが奇跡だった」とある。
つまり公立高校の間でいかにどの高校が現役で大学合格させているかを競わせるのである。
プロジェクトXの後継番組はやはりプロジェクトX
やらせ問題等で視聴率低迷により終了したNHKの「プロジェクトX」。その後継番組である「プロフェッショナル 仕事の流儀」では2007年10月16日に堀川高校の校長が出演し、堀川の奇跡についての放送を行った。
私も視聴したが予想通り、「良いように」作られていた。「プロフェッショナル 仕事の流儀」は私はほとんど見たことはない。しかし、別の回を一度見たとき、扇動的に面白おかしく制作されてはいなかったので、以前よりは「マシ」だと思った。しかし、これを見てやはり、以前のプロジェクトXと本質的に変わってはいないなと感じた。
巷で言われている定説どおりの「堀川の奇跡」を放送したNHKの真意は分からない。ただ、あえて「擁護」するなら、現役合格者を多数出していることは事実である。しかし、その裏にあることをNHKは放送しなかった。堀川高校だけ(正確に言えば西京高校も豪華だが)が異様に豪華絢爛な校舎を持っていること。堀川に「受験用」の優秀な生徒が集中したために他校と格差が生じていること(つまり以前は均等に行き渡っていた)。これらについては触れられなかった。
また、堀川高校校長が京都市教育委員会への賛美ともとれる発言が気になったのは私だけだろうか。放送された日時は2007年10月16日。その二ヵ月後、京都市教育委員会教育長の門川大作氏が市長選に出馬表明することは単なる偶然であろうか。私には宣伝を狙ったようにしか思えてならないのだが。
「堀川の奇跡」はごく一部の者たちの聖地に過ぎない
端的に言えば「堀川の奇跡」ほど、選別意識の高い政策はない。優秀(ここでいう優秀とは受験に合格できるという意味での)な生徒を集めて作った学校と、そうではない学校である。
だから私は「堀川の奇跡」の言葉に惑わされないように実情を知らない人に求めたい。それは一部の人の利益にしかならないのだということを。
言い方が乱暴であるが、成績の低い生徒にとって堀川高校はそもそも受験の対象外である。元々成績の高い生徒が入学する高校なのである。そんな高校が現役で大学に合格してもそれは当然といえば当然である。
これが私立であればあり得るだろう。しかしながら堀川高校は公立学校である。受験目的だけに優秀な生徒を集め、現役で合格させたことを「奇跡」と称して宣伝に使っているのはいかがなものか。
おそらく、京都市長選では門川氏は「堀川の奇跡」を成し遂げた一人として格好の宣伝材料に使われるだろう。「堀川の奇跡」の問題点はごく一部の生徒に利益をもたらし、他の生徒はその利益から外されていることである。公立学校を統括する教育委員会の責任者として、全ての公立学校において設備を充実させ、教育を行うことこそが責務だと思うのだが。「堀川の奇跡」の発想は、堀川というごく一部の学校のみ優遇し、他を切り捨てる行為に他ならない。それを前述したNHKの番組を見たであろう多くの視聴者、特に京都市民はどれだけ気づいているのであろうか。
(参考文献)
<京都新聞>
奇跡のからくり 粒ぞろいの人材先取り 専門学科 私学に対抗
http://kyoto-np.jp/kp/rensai/gakuryoku/050928.html
優秀な生徒確保へ京都府内公立高が争奪戦 「入学者が進学実績を左右」
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/syuzainote/2005/050819.html
<NHK>
第65回(2007年10月16日放送) | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/071016/index.html
<NHK番組の感想>
堀川の「奇跡の価値は」
http://blog.goo.ne.jp/nozaki_yasuhito/e/03d67c33cad49ce3b3137bc1dc30cb01