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【神奈川】現場ルポ 平塚・テレビ塔に無数の南京錠 湘南見渡す景勝地
やまぬ『固い誓い』【東京新聞】 2007年6月30日
平塚市万田の太平洋を望む湘南平の鉄塔に数多くの南京錠がぶら下がり、撤去してもまた取り付けられるいたちごっこが続いている−。そんな話を聞いて、早速現場へ行ってみた。見上げる鉄塔の展望台のフェンスは、落ち葉が付いた迷彩模様のようになっていた。階段を上っていくと、何と網目に無数の南京錠が掛けられ、うわさ通りの光景が目の前に。その数大小合わせて数万個はあろうか。鉄塔に願掛け? いったいどんな御利益が…。 (飯田忠久)
標高一七九メートルの湘南平の山頂は、二・九ヘクタールに及ぶ台地公園になっている。その奥に四脚の鉄骨で組み立てられた東京タワー型鉄塔(高さ約七十メートル)がある。地元では、千畳敷山のテレビ塔と呼ばれている。
施設管理者はテレビ神奈川(TVK)。一九七二年五月から民放五社、NHKとともに平塚中継局(無人)として使っている。
展望台は第一と第二に分かれ、見下ろすと絶景が広がっていた。北側に相模平野と丹沢山塊、南側には弓を引いたような湘南の海が一望でき、かながわの景勝五十選にも入っている景勝地だ。
早速、最上階の第二展望台を目指して階段を上った。上るにつれ、転落防止用のフェンスに掛けられた南京錠の数が増え始め、展望台に到達すると景観を遮る異様な光景があった。「無数」としか言いようのない錠の数に圧倒される。
来るたびに掛けたのだろうか、網目に沿って同じ錠が十個以上も掛けられていた。
大小さまざまの錠にフェルトペンで「いつも心は一つ」「一緒になれますように」「君の帰りを待ち続ける」などと恋人同士と思われるメッセージが目立つ。「愛があれば勝つ」「呪(のろ)ってやる」−などは、青春真っただ中といった感じを受ける。
「子どもが生まれたらまた来ようね」「おばあちゃんの病気治りますように」など、ほのぼのさせるものもあった。
現場で出会ったカップルに聞くと、女性が「錠を掛けるって、世の中的には違うかも。だけど、ここは夜景がきれい。月に照らされる海も幻想的。願掛けの気分になっちゃうんじゃない。遠くからも来るみたい」と話してくれた。
見回りに来ていた保守点検業者が苦笑する。「二年に一回、錠を撤去しているが、クリスマスや正月などのイベントがあると、どっと数が増えちゃう。カッターで切って処分するけど、切れないものもあって困る。撤去した錠は二トン車一台分にもなる」
鉄塔を管理するテレビ神奈川放送センター技術部の関英夫さんは「錠を掛ければ『二人の愛はいつまでも』ということでしょう。(願掛けだから)仕方ないんですかね。錠を掛けるようになったのは、かなり前から。テレビ番組で鉄塔フェンスに錠を付ける場面が放送され、これが飛び火したという話もあります」と困惑した表情で話す。
南京錠が固く誓うイメージにピッタリだったためか、放送事業者にとってはた迷惑な“願掛け”は既に何年も続いていたと知り、驚いた。
撤去費用は一回あたり七十万−八十万円もかかりペンキを塗り直すと各局の負担はさらに膨らんでしまう。フェンスを乗り越え、鉄塔を登ってより高い所へ付けようとする若者も後をたたない。
御利益の程は分からないが、せっかくの名所を封鎖するわけにもいかず、管理者側は解決策を見いだせないでいる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20070630/CK2007063002028357.html