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http://news.livedoor.com/article/detail/3566604/
小児用ICU「20か所は必要」
2008年03月24日16時44分
「小児用ICU(PICU:PediatricICU)が少ないことが乳児期以降の小児救急医療を妨げている。危機的状況の小児救急医療を立て直すためには国内に少なくとも20か所程度のPICUを整備すべきだ」―。国立成育医療センターの阪井裕一手術・集中治療部長は3月22日、日本小児科学会が開いた市民向けの小児救急フォーラムで、日本の小児救急医療を立て直すためにPICUが必要と訴えた。「日本は新生児死亡率は先進諸国に比べて圧倒的に低いが、乳幼児死亡率は高い」と指摘し、重症の小児患者に対応できる体制整備を求めた。
新生児用ICU(NICU:NeonatalICU)は新生児や未熟児を対象に、内科疾患や呼吸管理を行うのに対し、PICUは重症の子どもに総合診療を行い、さまざまな疾患や年齢の子どもを受け入れて状態に応じた医療を提供している。
阪井氏は「日本は、新生児死亡率は先進諸国に比べて圧倒的に低いが、1〜4歳の死亡率は12位で高くなっている」と指摘。先進13か国で比べると、0歳以下の死亡率は平均を約40ポイント下回る好成績だったが、1〜4歳は約10ポイント上回っていることを示すデータを紹介した。また、救急外来の小児患者のうち、入院が必要な患者が11%、PICUが必要な患者は0.3%いることを示したアメリカのトロント小児病院のデータを紹介。その上で、NICUではなく幅広い年齢や疾患の子どもを対象にしたPICUを日本も整備しなければ、小児救急が改善されないと主張した。
PICUはNICUに比べて施設や病床数が少なく、欧米と比較しても未整備だと指摘した。NICUは00年には209か所(1482床)と、5年間で87カ所(611床)増えていたが、PICUは04年では16か所(97床)と、10年間で3か所(27床)しか増えておらず、「とても少ない」と述べた。アメリカでPICUベッドは小児人口2万人に1床整備されているが、日本は26万人に1床しかなく、極端に遅れていると訴えた。「アメリカなどと同じ基準にするにはあと500から1,000床は必要。そのためには20から30か所はPICUの施設がいる」と、試算を示した。
PICUには、さまざまな疾患や生活の背景を持った子どもが入院するため、医師だけでなく看護師やソーシャルワーカー、ボランティアや児童福祉士など、多職種の連携で子どもを支援する体制づくりが必要と強調した。日本小児科学会が昨年10月に示したPICUの指針を紹介し、活用するよう呼びかけた。
■小児救急トリアージで重症患者の入院率低下
同センター総合診療部救急診療科の上村克徳医師は、毎日100人以上の小児救急外来がある中で、状態に応じて緊急度が高い患者を優先的に診察するトリアージの取り組みを紹介し、「限られた医療資源の中で必要な治療を必要な患者に遅延なく行うことが大事」と訴えた。トリアージにより重症患者の入院率が低下したデータなどを示した。
同院の救急診察室には医師12人と看護師15人が交代で勤務、日中は医師3人で対応する。1日に約100人の小児救急外来を受け入れるが、緊急度の高い患者を優先的に診察するため、02年から看護師によるトリアージを実施している。院内で研修プログラムを受け、認定された看護師が院内の運用基準に基づいて実施。全身の状態や緊急度、心肺機能などを評価し4段階の優先度で判定する。同センターの研究データによると、トリアージを実施したことで、緊急度が最も高い患者の入院率が予測入院率を下回った。入院率も年々低下し、07年には03年に比べて約5ポイント下がった。
トリアージの結果、06年の小児救急外来患者約3万8,500人中、診察や治療がすぐに必要だった患者は1割にとどまった。救急搬送された3,200人中、緊急度が最も高いと判断したのは約3割。このため、緊急度が低いと判断した患者を数時間待たせることもある。
「なぜ早く来ていたのに後から来た人のほうが診察が早いのか、と詰め寄られることもある。トリアージした患者や家族に、『なぜ遅かったのか』が納得できる情報や根拠を示すことが大事」と述べた。
こうした取り組みの結果、診察が後になった患者から「いいサービスをしている」と評価されたこともあった。地域の基幹病院は救急患者も多く、症状も多様なため、「トリアージで患者の状態を迅速に見極め、最も適切な治療の場を提供することが重要」とし、患者の理解を得ていくことが今度の課題と示した。