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(回答先: [看護師さんを苛めて何になる!]業務上過失致死->警察の出番? 事故再発防止になど役に立つわけない。 投稿者 どっちだ 日時 2008 年 3 月 18 日 03:52:56)
----がんになっても、あわてない から転載-----------------------------------------
http://air.ap.teacup.com/awatenai/616.html
2008/3/18
「注射後高校生死亡、再発は防げるか」
広島の病院で、原因不明の脳症で入院していた高校生に対して、臀部(お尻)に注射すべきところを静脈に注射し、その後その高校生が死亡するという事故が起きた。
記事は次のとおり。
注射ミス、16歳死亡=誤って静脈に、警察が捜査−広島
2008年3月17日20時31分配信【時事通信】
広島市立安佐市民病院(安佐北区、日高徹病院長)は17日、内科に入院していた高校1年の男性患者(16)=山口県平生町=に対し、女性看護師(23)が誤って静脈に抗てんかん薬を注射し、患者が死亡したと発表した。広島県警安佐北署は業務上過失致死の疑いもあるとみて、詳しい死因などを調べる。
同病院によると、患者は原因不明の脳症で全身発作を起こし、2月26日、意識不明の状態で山口県内の病院から転院してきた。一時は短い会話ができるまで回復したが、今月15日から再び症状が悪化した。
女性看護師は16日午前10時20分ごろ、臀部(でんぶ)などに筋肉注射すべきだった抗てんかん薬「フェノバルビタール」300ミリグラムを、患者の左腕につながれていた管を通して静脈に注射。患者は心停止となり、約5時間後に死亡した。
(記事ここまで)
15日からふたたび悪化しており、16日の心停止は病気の悪化によって起きた可能性もあると考えるが、それはここでは置いておく。現在準備中の医療事故調査委員会が正しく機能するようにできれば、それについては医療事故調査委員会で判断されることになるだろう。
ここでは、お尻にする「筋肉注射(筋注)」と、血管に入れる「静脈注射(静注)」の間違いを起こさないためには、どうすればよいかを考えてみたい。
まず簡単に考えつくのは、不注意をなくすことである。「筋注」と書いてあるものを静注しないようにするために、担当看護師に「十分注意しておこなうように」と言うのはたやすい。しかし不注意によるミスをしない人間などいない。気を引き締めることは大事だが、それで間違いが起こらないようにすることはできない。
不注意を減らすための工夫は、さまざまなものが実行されている。静注すると危険な薬には、大きく「静注禁」と赤い字で書かれているものも多い。しかしこのような注意書きでは事故を防ぎ得ないことは、さまざまな方法で実証されている。そのために発売中止になった薬が、これまでにもたくさんある。
次に考えつくのは、複数の人間で確認をすることによって、間違いを減らす方法である。一人で確認するのに比べて、複数の人が確認すると、確実に間違いが減る。しかし逆に、複数で確認するという行為そのものによって安心してしまい、確認がおろそかになる傾向もある。また、2人で確認した場合にどちらも責任者だと自覚していなければ、無責任体制になる。
システムによって間違いを減らす方法もある。静注する薬は青い箱で運ぶ、筋注する薬は黄色い箱で運ぶなどで一目でわかるようにしておけば、さらに間違いは減らせる。しかしそのルールをわかっていない人には意味がないので、完璧とはいかない。
最も事故防止効果が高いと私が考えるのは、その薬を「静注できない形でのみ供給する」方法である。たとえば筋注(または皮下注)のみでしか投与できないようにするには、静脈につながっている点滴ルートに接続できないような形状にしてしまえばいい。薬を注射器に入れて、通常では外せない筋注用の針をつけて製薬会社が供給するようにすれば、静注される間違いはほぼ根絶できるのではないか。
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現在準備段階で議論が進められている「医療事故調査委員会」も、ここに挙げたような観点からの再発防止が一番の目的になるような組織になってほしい。3 月中には「第三次試案」が出されるという予想もあり、どのようなものになるのか注目していきたい。ただし、中途半端な試案を出してきたときには、そのまま成立されては困るので即刻このブログで晒し者にする予定。
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報道の通りだとすれば、今回の当事者となった看護師に、不注意があったことは否めない。しかし不注意があっても事故を防ぐ仕組みは構築できるし、そこには必要なコストをかけて事故を防止すべきである。
当事者となった看護師の不注意の程度は、食堂でいえば冷たい蕎麦を注文したのに温かい蕎麦が出てきたというのと、不注意のレベルとしてはそう違わないと思う。「命にかかわる仕事だから、そのような認識では困る」と思われる方は多いだろうが、純粋に不注意のレベルとして比較するとそれくらいではないか。
もちろん、命にかかわる仕事だという自覚を持って、緊張して仕事に当たっている医療従事者がほとんどである。しかし日本の医療従事者は、諸外国に比べると圧倒的に少ない人数で、多くの仕事をこなしている。不注意によるミスを完全に防ぐことはできないと考えた方がいい。
そこを「不注意による間違いが起こるのはたるんでる証拠」と罰するばかりでは、システムの改善によって防げるはずの事故は減らせない。
結果の重大性(今回は「死亡」)と遺族側の感情に依って、当事者に責任をすべてかぶせる今のやり方では、どんな小さな医療行為でも恐ろしくてできなくなり、医療現場から医療従事者がいなくなる。つまり、現在急速に進んでいる「医療崩壊」を加速するばかりである。
・結果の重大性と、当事者となった医療従事者の不注意の程度は切り離して考える。
・本人や遺族には、当事者となった医療従事者の刑事罰や民事での賠償ではなく、他の補償制度を考える。
・システムの改善によって防げた事故には、システム改善を最優先する。
このような視点が、これからの医療事故を減らす結果につながる。今回の報道は、これまで通りの「医療にかかっていて死亡した事故がありました。当事者となった医療従事者には業務上過失致死の疑いもあるので調べています」というよくある形。何か悪い結果があれば医療に間違いがあったに違いないという決まったパターンから抜けられていない。しかも逮捕も起訴もされていない段階での全国報道である。
医療事故にもさまざまな要因があり、当事者の不注意はその一部ではあるが、すべての責任をそこに求めるのはバランスが悪いという認識を広めた方が、今後の再発防止につながる。報道機関ももう一歩進んで、そのあたりまで国民に考えてもらうような報道にしていただけると、ありがたいと思う。