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今回の提訴は、以下の行動予定の第一弾とのことです。残念ながら『後期高齢者医療制度』に関しては、制度そのものを廃止する法的手段がないとのこと。野党提出の廃止法案を盛り立てて行くしかないようです。
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5 行動予定
(略)
第一次訴訟期限越えのリハビリは「月に4 時間20 分まで」の規定の差止訴訟・不服申立 ・3 月18 日(火)
第二次訴訟(予定) 居宅等退院率6 割以上という数値目標に関する厚生労働大臣告示の差止(4月1 日より前)・取消訴訟(4 月1 日以降)
『高齢者の医療の確保に関する法律』第4 章の後期高齢者医療制度に関しては、2 月28 日に民主党など野党が廃止法案を衆議院に提出した。私個人には後期高齢者医療制度そのものを廃止する法的手段がないため、言論活動を継続する。
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---厚労省の棄民政策(リハビリ関係の「質の評価」等と後期高齢者医療制度)を一挙に粉砕しよう から転載-----------
http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/
■最新の情報
3月16日
第一次訴訟: 3月18日、重症リハビリ医療日数等制限差止請求事件として国を被告に東京地方裁判所に訴状を提出します。
記者クラブで配布する資料(内容の変更がありえます) http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/papers/A4-1b.pdf
---重症リハビリ医療日数等制限差止請求事件 記者クラブ配布資料------------------------------------------------------------
http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/papers/A4-1b.pdf
明白かつ差し迫った危機
新年度診療報酬における3つの棄民政策を粉砕する
澤田石 順
2008 年3 月18 日
回復期リハビリテーション病棟勤務医(この仕事をして満6 年)
ホームページ http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/
自宅:〒227-0048 神奈川県横浜市青葉区柿の木台10-5-503
mail: jsawa@attglobal.net 電話: 045-971-3572 FAX:045-971-3572
職場:鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 電話: 0463-78-1311
目次
1 はじめに: 事件の概要と医師の社会的責務
2 診療報酬改定における3 つの棄民政策
2.1 リハビリテーションの入口での切り捨て. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
2.2 長期リハビリを必要とする患者の切り捨て. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
2.3 後期高齢者に対する迫害. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
3 厚労省の政策決定手続の違法性、および内容の違法性
3.1 憲法31 条および行政手続法第39 条違反の疑い. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
3.2 憲法25 条違反. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
3.3 厚生労働省令および医師法違反. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
3.4 債務不履行あるいは不法行為法違反. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
4 『高齢者の医療の確保に関する法律』による迫害
4.1 65〜74 才の身体障害者も迫害される. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
4.2 医師のジレンマ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
4.3 医師の悩み: 身体障害者の認定を勧めるべきか. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11
5 行動予定12
6 おわりに12
1 はじめに: 事件の概要と医師の社会的責務
厚生労働省が平成20 年度診療報酬改定において、リハビリを必要とする重症患者を迫害する政策を開始しそうだと気づいたのは昨年の10 月。12 月末、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の幹部が厚労省による棄民政策に屈服したことが明白となった。私は1 月29 日にホームページ(http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/) を立ち上げて、厚労省の政策の非人間性と違法性を訴えてきた。
2 月9 日〜10 日の全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の研究大会(名古屋) において、同協議会の幹部(複数) に最後の訴えを試みた。
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厚労省が新年度から実行しようとしている「質の評価」は欺瞞・偽装であり、医療費削減という至上命題のために重症患者を切り捨てるものだ。あなたは指導者であるから社会的責任を果たす義務が課せられている。全国の回復期リハビリテーション病棟(病院) が団結して反対運動を展開したら、厚労省の暴挙を阻止できることは自明である。今からでも遅くはない、立ち上がろう。
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予想通り、説得することはできなかった。
平成20 年3月5日付官報(号外 第43 号)に平成20 年度の診療報酬改定に関する厚生労働大臣告示が掲載され、「平成20年度診療報酬改定に係る通知等について」が同省のホームページで公開された(http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/tp0305-1.html)。リハビリテーションおよび後期高齢者関係の診療報酬改定の内容は、“リハビリを必要とする重症の患者” および“後期高齢者” に対する迫害・棄民政策と断じざるを得ないものである。
厚生労働省が“リハビリを必要とする重症の患者” および“後期高齢者” を迫害する理由は、そのような不幸な人々への公的医療支出削減以外に全く考えられない。そのような方々の圧倒的多数は、厚労省の政策により不当な仕打ちを受けたことを知ることはなく、そもそも厚労省に対して強く抗議する知力・精神力・体力を欠いている。
厚生労働省は“リハビリを必要とする重症の患者” および“後期高齢者” を標的とした医療費適正化のための棄民政策に関して、被害者に対してはおろか被保険者ら(一般市民) に対しても一切の説明(広報・周知活動) をしていない。
厚労省は通常人の道徳が禁じる超えてはならない一線を超えたばかりか、被保険者の生命にかかわる重大な政策決定を適正な法的手続(due process of law) なしで実行しようとしている。
厚生労働大臣の告示という議会の審査なしの行政行為の実務的効果は、医師らに対して憲法違反、医師法違反、厚生労働省令違反を促すものである。医師らが良心の命じるところにしたがって違法行為を行わないならば、医師らが所属する保険医療機関は存続の危機に瀕しかねない。よって、保険医療機関は医師らに対する圧力を強めるか、あるいは医師らに対して不利益処分を課しかねない。
医師らには法的および道徳的な責務が課せられている。医師らは、中央政府(厚生労働省) が弱い立場にある患者の公的医療受給権を侵害しようとしている時に、それを阻止するために実行可能なあらゆる手段に訴えねばならない。そのような活動は、すべての医師に与えられていると想定される医療権を守るためであり、同時に犯罪者となることを避けるためでもある。
2 診療報酬改定における3 つの棄民政策
ホームページ(http://homepage1.nifty.com/jsawa/medical/) に、詳細な資料等をたくさんおいてあるので参照のこと。
2.1 リハビリテーションの入口での切り捨て
厚労省は、全国の回復期リハビリテーション病棟に“居宅等” 退院率6 割という数値目標の達成を強要する。その施策は「質の評価」だと虚偽の宣伝をしてきた。
・ 常識: 回復期リハビリテーション病棟に入院した患者の自宅退院率は、重症者の入院割合が高いほど低くなる。したがって、回復期リハビリ病棟の診療の質を自宅退院率で評価してはならない
・ 厚労省による“居宅等” の定義: 自宅、家族宅、有料老人ホームなど医師が不在のところ、すなわち公的医療支出が安いところ
・ 死亡も居宅等に入る これは道徳的に許されない。死亡退院により医療費がゼロになるから厚労省は“高く評価” するのであろうか
・ 事実: 軽症者の自宅退院率は82.2 %、重症者は37 %と、重症者が自宅に退院する確率は低い(私が所属する病院のデータ: ただし人手が不足する病院の数値はもっと低くなる)
・ 厚労省の考え: 重症患者へのリハビリは医療費の観点から効率が悪い、よって重症者へのリハビリは極力制限する
・ 厚労省は、回復期リハビリ病棟(病院) の居宅等退院率が6 割未満の病棟に金銭的な厳罰を与える
− そのような回復期リハビリ病棟(病院) は倒産を回避するために、重症患者の入院制限をするか、人減らしをするほかなくなる
− 旧年度までは、リハビリ病院に入院できていたはずの患者さんは、新年度からはリハビリができないため、早期に死亡したり、障害が固定する
− 厚労省はリハビリの入り口で切り捨てる政策の是非について、被保険者に対してなんら説明することなく、同意を得る努力をしなかった
全国の救急病院において回復への挑戦を最初から奪われる患者が増加し、早期に死亡したり障害が固定したままとなる。” 棄民とされた方々は言葉を発することすら困難。ご家族は“医療を受ける権利を守るための官庁” である厚労省が棄民政策を開始したなどとは夢にも思わないため声をあげることはなかろう。
2.2 長期リハビリを必要とする患者の切り捨て
・ 厚労省が“勝手に決めた期限” を越えてリハビリを継続する必要がある患者さんは、一ヶ月に4 時間20 分(13 単位) しかできなくなる
− 回復期リハビリテーション病棟においてリハビリを実施する患者さんの中には、期限を越えても一日二時間程度のリハビリを必要とする方が存在する
− 外来でリハビリを継続している患者の中には月に4 時間20 分以下のリハビリでも機能が維持・向上できる者もいるかもしれないが、4 時間20 分を越えるリハビリを必要とする方もいる
− 厚労省は一ヶ月13 単位以上のリハビリは選定療養という事実上の自費で実施できると規定しているが、極めて裕福な患者以外に支払能力はない
− 新年度から、リハビリの量を圧倒的に減らされる患者は生活機能が低下し、生きる希望を失う
− 厚労省は、リハビリ医療の専門家がリハビリの継続を必要と判断しても、一律に制限する政策に関して、被保険者に対してなんら説明することなく、同意を得る努力もしなかった
図1 脳幹梗塞の67 才、男性 (図は原PDF文書を参照のこと)
私が担当した患者さんの中で、180 日を越えてからも一日二時間余りのリハビリを実施して、驚くほどの回復をした代表例を図1 に示す。FIMは機能的日常生活自立度で、全介助18 点、完全自立126 点(60 点未満が重症、95 点あればおおむね一人で留守番可能)。
2.3 後期高齢者に対する迫害
・ 厚労省は、後期高齢者が一般病棟に入院して91 日目以降、一日の入院料を1 万5550円(7:1 看護の場合) から、9280 円に削減し、しかも、薬代、検査代および処置代を一円も保険から払わせない
・ 厚労省は、後期高齢者が癌治療の専門医が基本的に不在の療養病棟*1に入院している場合は例外的に抗癌剤、癌の痛み治療の薬等に保険から支払うと定めている*2。
*1 患者30〜50 人に医師は一人はのみが一般的で、薬代、検査代、処置費用等について保険から一円も支払われない
*2 療養病棟で癌の治療をすることはそもそもないからであろう
・ 厚労省は、後期高齢者が一般病棟に入院して91 日目以降、抗癌剤、癌の痛み治療の薬等にすら一円も保険から払わせない
・ 厚労省は、後期高齢者の医療の内容は非後期高齢者となんら変わることはないと嘘の宣伝をしてきた
3 厚労省の政策決定手続の違法性、および内容の違法性
3.1 憲法31 条および行政手続法第39 条違反の疑い
憲法31 条は、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合には、当事者にあらかじめその内容を告知し、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならないと規定している。直接には刑事手続についての規定であるが、行政手続に関しても準用されることが最高裁判例により確定しているとみられる。行政手続法第39 条は意見公募手続を規定している。
1.「平成20年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」に関するご意見の募集について 平成20年1月18日 中央社会保険医療協議会 〔事務局:厚生労働省保険局医療課〕 (http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/index.html)
・ 意見公募の締め切りは、同年1 月25 日であり、行政手続法第39 条1 項に定める「意見提出期間は、同項の公示の日から起算して30 日以上でなければならない」に違反した
・ 行政手続法第40 条は「やむをえない場合は30 日を下回る意見提出期間を定めことができる、この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない」とあるが、理由は明らかにされなかった。よって、行政手続法第40 条違反は明白である。
2. 中央社会保険医療協議会は平成20年2月13日(水)に新年度の診療報酬改定案を厚生労働大臣に答申
・ 中医協の答申を受けての厚生労働省の診療報酬改定案こそが、全国の医療関係者の最大の関心であり、それに対する意見公募がなさねばならないことは行政手続法第39 条からして明白であったが、意見公募はいまだになされていない
・ 厚生労働省告示が官報(号外 第43 号)に掲載されたのは平成20 年3 月5 日。同省告示は同年4 月1 日から実施としている。すなわち、行政手続法第39 条1 項に規定する30 日以上の意見公募という規定に違反したことが確定している
・ 行政手続法第39 条4 項では意見公募をしなくてもよい条件を8 種類規定しているが、診療報酬改定に関してはいずれも該当しない
? なお、平成20 年1 月18 日から25 日の意見公募は「現時点の骨子」に関しであり、その意見公募をもって新年度の診療報酬改定の具体案に関する意見公募とみなすことはできない
3.2 憲法25 条違反
新年度の診療報酬改定は、リハビリを必要とする患者を入り口で切り捨てる傾向を強め、リハビリの継続を必要とする患者を途中で切り捨て、後期高齢者が受ける入院医療の水準を低下させるものであり、患者の生存権(憲法25 条) を侵害するものである
3.3 厚生労働省令および医師法違反
居宅等退院率が6 割という数値目標は、医師に対して厚生労働省令の療養担当規則12 条違反を促すものである
保険医療機関及び保険医療養担当規則 第十二条 保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F03601000015.html)
・ 回復期リハビリ病棟への入院申し込みを受けて、入院の可否を審査するのは医師である
・ 入院審査を行う医師は、旧年度までは患者の病状および自院の診療能力の二つを勘案して可否を決定していた
・ 居宅等退院率が6 割という数値目標を達成できないと、回復期リハビリ病棟は50 床あたりで年間約1500 万円の減収となるため、入院審査の医師には大きな圧力がかかる
・ ある医師が患者の利益のみを考慮して重症患者の入院を旧年度と同様に積極的に受け入れる方針を貫いたらば、その結果として考えられること
・ 数値目標が達成されないため病院の存続事態が危ぶまれる事態となる
・ 当該医師が入院審査の担当からはずされ、数値目標達成という病院の方針に従順な医師に交代させられる
・ 当該医師が減給・解雇等の不利益処分を受ける、あるいは「数値目標を達成するために、適度に重症患者の入院を制限せよ。そうしないと不利益処分に処す」と病院当局から警告される
・ 旧年度までは受け入れていた病状の患者の入院を、数値目標達成のために「リハビリの適応がない、あるいは自院での受け入れはできない」と理由付けしたら、それ自体が患者に対する虚言であり違法
・ 旧年度までは受け入れていた病状の患者の入院を、数値目標達成のために断ったら、それは厚生労働省令の療養担当規則12 条違反
・ 厚生労働省令の療養担当規則12 条違反は同時に、医師法に規定される応召義務違反でもある
3.4 債務不履行あるいは不法行為法違反
一般に、保険医療機関と患者は明示的な(文書による) 診療契約を締結はしない。しかし、医師の診療上の過誤で患者に被害が生じた場合は診療契約上の債務の不履行とみなされ、損害賠償責任が発生する。医師による医療過誤は患者に対する不法行為とみることもできる。
厚生労働大臣は「期限を越えてのリハビリは一ヶ月あたり4 時間20 分しか認めない」と告示した。
診療報酬が支払われないことを理由に、「旧年度までは実施していた必要なリハビリを実施しなくなることは、道徳的に問題であるが、法的にも大きな問題を発生させかねない。
そもそも、数年前は言語聴覚士によるリハビリテーションには診療報酬が全く支払われなかったが、大多数の回復期リハビリテーション病棟において、必要とする患者に対して言語聴覚療法が実施されてきたのであった。私が勤務する病院のように、レクリエーションサービス実施者をたくさん雇用しているところが少なくないが、レクリエーションサービスには一円も診療報酬が支払われない。患者にとって有益だから実施しているのである。
3.4.1 医師が患者に嘘を言った場合
医師がある患者について、医学的な根拠から「一ヶ月あたり4 時間20 分を超えたリハビリが必要」と判断したにもかかわらず、厚生労働大臣告示を盲目的に遵守して、「あなたのリハビリは一ヶ月あたり4 時間20 分で十分」と患者に告知し、医師のリハビリ処方はその通りだったとするといろいろな問題が考えられる。
1. 医学的な根拠から「一ヶ月あたり4 時間20 分を超えたリハビリが必要」という判断は医師の心の中のものであり文書での証拠はないであろう
2. 患者への告知は虚偽であり、それ自体が違法であるが、知られることはない
3. しかしながら虚偽の告知をしたことそれ自体が医師の心の痛みである
4. 患者の日常生活機能が結果として低下した場合に、医師の医療過誤とは言えないであろう
5. 患者の日常生活機能が結果として低下した場合に、医師を債務不履行あるいは不法行為法違反で提訴することは可能であろう
6. 裁判官は当該医師に対して損害賠償を命じることもあろう
7. 医師が、「実は一ヶ月あたり4 時間20 分を超えたリハビリが必要と判断したのであるが、厚生労働大臣告示に従わざるを得なかった」と法廷で弁明したらば、患者に虚偽の告知をしたことを告白したことになり、そのことで刑事責任に問われかねないし、そのような弁明はそもそも「正当な事由」とは決してみなされないであろう
3.4.2 医師が患者に正直に語った場合
医師が患者に「あなたには一ヶ月あたり4 時間20 分を超えたリハビリが必要と思われますが、厚生労働大臣が定めた規則があるので、一ヶ月あたり4 時間20 分しかできないのです」と説明したら、患者は了解するであろうか。
患者がしぶしぶ納得して、実際にそれだけしかリハビリができなかった場合の問題。
1. 患者の日常生活機能が結果として低下した場合に、医師を債務不履行あるいは不法行為法違反で提訴することは可能ではなかろうか
2. 厚生労働大臣が定めた規則は法律に匹敵する強制力を持たない
3. 保険医療機関は厚生労働大臣が定めた規則に従って、社会保険診療報酬支払基金に支払いを求める
4. 社会保険診療報酬支払基金は厚生労働大臣が定めた規則に従って保険医療機関に診療報酬を支払うのであるが、規則から逸脱した請求に対して支払うことは違法ではないと考えられる
5. 保険医療機関(医師) は患者のために真に必要ならば、詳細な理由を付して、厚生労働大臣が定めた規則を逸脱した診療報酬の請求を社会保険診療報酬支払基金に求めることができよう
6. 保険医療機関(医師) が厚生労働大臣が定めた規則を逸脱した診療報酬の請求をしなかったことを理由に、患者から提訴されることがあり得るのではないか
7. 保険医療機関(医師) が厚生労働大臣が定めた規則を逸脱した診療報酬の請求をしたものの却下されたとして、そのことが、医師が必要だと判断した量のリハビリを実施しない正当な事由といえるであろうか
4 『高齢者の医療の確保に関する法律』による迫害
法律の条項を行政訴訟で廃止することはできないが、一部の条項の執行停止を求めることは可能かもしれない。同法の第4章「後期高齢者医療制度」から、特に甚だしい人権侵害を以下に列挙する。
第五十四条
・ 4 後期高齢者医療広域連合は、保険料を滞納している被保険者が、当該保険料の納付期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合を除き、厚生労働省令で定めるところにより、当該被保険者に対し被保険者証の返還を求めるものとする。
・ 6 前二項の規定により被保険者証の返還を求められた被保険者は、後期高齢者医療広域連合に当該被保険者証を返還しなければならない。
・ 7 前項の規定により被保険者が被保険者証を返還したときは、後期高齢者医療広域連合は、当該被保険者に対し、被保険者資格証明書を交付する。
第六十四条 後期高齢者医療広域連合は、被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。ただし、当該被保険者が被保険者資格証明書の交付を受けている間は、この限りでない。
1. 診察
2. 薬剤又は治療材料の支給
3. 処置、手術その他の治療
4. 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
5. 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
第九十二条
1. 後期高齢者医療広域連合は、後期高齢者医療給付を受けることができる被保険者が保険料を滞納しており、かつ、当該保険料の納期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合を除き、厚生労働省令で定めるところにより、後期高齢者医療給付の全部又は一部の支払を一時差し止めるものとする。
2. 後期高齢者医療広域連合は、前項に規定する厚生労働省令で定める期間が経過しない場合においても、後期高齢者医療給付を受けることができる被保険者が保険料を滞納している場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合を除き、厚生労働省令で定めるところにより、後期高齢者医療給付の全部又は一部の支払を一時差し止めることができる。
第八十七条 被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に疾病にかかり、若しくは負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給(以下この款において「療養の給付等」という。)は、行わない。
第八十八条 被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によつて疾病にかかり、又は負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付等は、その全部又は一部を行わないことができる。
第八十九条 被保険者又は被保険者であつた者が、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁された場合には、その期間に係る療養の給付等は、行わない。
第九十条 後期高齢者医療広域連合は、被保険者又は被保険者であつた者が、正当な理由がなく療養に関する指示に従わないときは、療養の給付等の一部を行わないことができる。
第六十条 後期高齢者医療広域連合は、後期高齢者医療給付に関して必要があると認めるときは、当該被保険者若しくは被保険者であつた者又は後期高齢者医療給付を受ける者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる
第九十一条 後期高齢者医療広域連合は、被保険者若しくは被保険者であつた者又は後期高齢者医療給付を受ける者が、正当な理由がなく第六十条の規定による命令に従わず、又は答弁若しくは受診を拒んだときは、療養の給付等の全部又は一部を行わないことができる。
これらの条文の多くが憲法違反であることは明白ではないか。こんな法律が内閣法制局の審査を通り、国会を通過(自民党・公明党の強行採決) したとは信じがたいことである。
厚労省が自らを検察と同様の強制力を有する捜査機関とみなしていることも明白。厚労省は、後期高齢者を潜在的な犯罪者とみなしている。
この法律のただ一つの目的が後期高齢者への公的医療支出を極限まで削減するためのものであることも、人権侵害の条項を多数含むことも、広く社会に知られてはいない。我々医療人はもとより報道機関には、この法律は後期高齢者に対する迫害以外のなにものでもないことを広く社会に訴えていく責務があると信じる。
4.1 65〜74 才の身体障害者も迫害される
一般市民は、後期高齢者医療制度に強制加入させられるのは、75 才以上の方々(生活保護の方は除く) だけだと思っているのではなかろうか。2008 年3 月31 日までに、身体障害者認定の撤回を市町村に自ら申し出ない限り、65〜74 才の身体障害者(1〜3 級: 肢体不自由、視力障害、ペースメーカー植え込み、重症の呼吸器疾患等) は、本人への説明も同意もなく、広域連合によって強制的に後期高齢者医療制度に組み込まれる。自分が調べた限りでは、65〜74 才の身体障害者に対して後期高齢者医療制度への強制加入により現実にどのようなデメリットがあるのかを知らせる広報活動は皆無。デメリットは次のとおり。
1. それまでは被扶養者のため保険料は免除であった方は、4 月1 日から保険料を支払わねばならなくなる(年金から天引き)
2. 被用者保険の本人で妻や子供が扶養者である場合は、妻や子供は国民健康保険に加入して、4 月から保険料を払わねばならなくなる
3. 身体障害者手帳を持っている方は、保険料を滞納しても被保険者証が取り上げられて資格証明書を発行されることはなかったが、後期高齢者医療制度に組み込まれると、保険料を滞納すると広域連合は被保険証を取り上げ、資格証明書を発行する(法律で広域連合に義務付けられている!)
4. 前述のように救急病院に入院した時に、入院が長期化すると棄民扱いされる
身体障害者認定の撤回を自ら役所に申し入れることで、65〜74 才の身体障害者は後期高齢者医療制度から逃げることができるものの、身体障害者手帳を返上すると、保険料滞納による資格証明書発行を避けられない。つまり65〜74 才の身体障害者には被保険者証を取り上げられるという事実上の無保険状態からの逃げ道がないのだ。障害者手帳を返上することのデメリットはもちろん以下のようなこと。
1. 病気や怪我で病院に入院した時に窓口自己負担無しであったのが、1 割〜3 割負担になる
2. タクシー券など、交通機関利用の優遇措置を失う
3. 税金などの減免措置を失う
さすがの厚労省も65〜74 才の身体障害者に対して、「後期高齢者医療制度への強制加入はメリットがあります」との虚偽の宣伝はまったくしていない。逆に厚労省は地方自治体等向けの公開文書(複数) で、「65〜74 才の身体障害者は、身体障害者認定の撤回を市町村に申し出ると後期高齢者医療制度に入らなくてよくなります。4 月1 日以降に撤回することもできます。」としきりに強調している。65〜74 才の身体障害者を医療費適正化の対象にすることについて、厚労省とて後ろめたいのであろう。
4.2 医師のジレンマ
後期高齢者医療制度の法律の条文の一つ一つに対しての弾劾を記載することはここではできないので、一つだけ取り上げる。まず確認しておく。
1. 日本国には禁酒法がない
2. 後期高齢者に限っては飲酒してはならないという法律はない
3. 後期高齢者医療制度の条文に、「泥酔」を科学的に診断する方法についても、誰が診断するかについての記載も存在しない
4. 広域連合が脊髄損傷や脳挫傷の患者を同定して、医師が記載したカルテを調べて「飲酒による事故」を発見したら、恣意的に保険給付の差止めをすることが可能であろう
泥酔による事故で手足に障害を負った患者を私はこれまで幾人も診療してきた。現在も担当している。中には後期高齢者もいる。カルテには「飲酒して自転車運転して...」とか「飲酒して階段から転落して頭部を打撲して...」と記載してきた。4 月1 日以降、そのような後期高齢者のカルテを改竄しないと、保険給付が中止されかねない。カルテ改竄は刑事犯罪であり、カルテを改竄しないことは患者を危険にさらしつづけることである。
4.3 医師の悩み: 身体障害者の認定を勧めるべきか
私は年間に50〜100 枚ほど身体障害者認定のための書類を記載してきた。患者のために有用だから、自分からそのような制度があることを患者・家族に教えて、基本的に発症後4 ヶ月〜6 ヶ月の時点で書類を作成。ところが、新年度からの後期高齢医者医療制度という迫害制度のおかげで、75 才未満の方々に無条件で認定をすすめることができなくなってしまった。お金持ちならば、もちろん障害者認定は有益である。しかし、そうではない方々の場合は必ずしも身体障害者の認定が有用とはいえない。個々のケースで判断せざるを得ないのだが、その判定が困難なのである。先週から、患者・家族に文書を渡して、その中で65〜74 才の身体障害者は、後期高齢者医療制度に組み込まれること、そのメリット・デメリットを明記して配布している。
5 行動予定
平成20 年4 月1 日から実施される予定の明白で差し迫った危機(clear and present danger) を回避するための行動から開始する。
重症患者を多く受け入れてきたために居宅等退院率6 割未満の回復期リハビリ病棟が大打撃を受けるのは平成20 年10 月1 日からである。全国の回復期リハビリ病棟は4 月1 日からの6 ヶ月の間に居宅等退院率6 割以上を達成して、大打撃を逃れようとすることになる。つまり4 月1 日から重症者の選別が始まる。
第一次訴訟期限越えのリハビリは「月に4 時間20 分まで」の規定の差止訴訟・不服申立 ?3 月18 日(火)
第二次訴訟(予定) 居宅等退院率6 割以上という数値目標に関する厚生労働大臣告示の差止(4月1 日より前)・取消訴訟(4 月1 日以降)
『高齢者の医療の確保に関する法律』第4 章の後期高齢者医療制度に関しては、2 月28 日に民主党など野党が廃止法案を衆議院に提出した。私個人には後期高齢者医療制度そのものを廃止する法的手段がないため、言論活動を継続する。
6 おわりに
電気料、タクシー料金、NHK の受信料などの公共料金変更は国会での承認が必要であるが、人々の生命にかかわる診療報酬の改定は厚労省が議会の審査なく恣意的に決定してきた。リハビリ患者の棄民政策と後期高齢者の迫害政策を根絶した後には、診療報酬改定の手続を法的に適正なものにすることが課題となろう。
福田内閣は生活安心プロジェクトを立ち上げた。同プロジェクトには市民らの一定の期待が集まりつつあるが、厚生労働省が同プロジェクトの思想と真っ向から対立する政策を強行(凶行) せんとしていることは、福田内閣に対する反乱でもある。福田総理大臣も舛添厚生労働大臣もおらそく何も知らされてない。もしも彼らが厚労省の暴挙を知ったらば、一日も早く撤回することが望まれる。
2006 年度の診療報酬改定における「リハビリ打ち切り事件」は第一回目の棄民政策というべきものであった。多田 富雄先生らによる「リハビリ打ち切り撤回」を求める市民運動は歴史にのこる偉大な壮挙であった。運動は大いに盛り上がり、44 万の署名が厚生労働大臣に提出されたが、厚労省は行動をあらためるどころか偽装・偽装工作を更に巧妙化して、切捨て政策を強化したのであった。
医療関係者、特に全国の医師らがどんどん立ち上がることを確信している。我々、医師は役人を指導する立場にあり、決してその逆ではない。そもそも、厚労省官僚は公的医療支出削減原理主義という病にかかっており、彼/彼女らの視覚・聴覚・現実感覚等はすべて鈍麻しており、誰にでも生まれながら備わっている道徳心・良心はほとんど消滅している。したがって、厚労省官僚に直接訴えるのは基本的に時間の浪費である。
行政事件訴訟法を根拠とした差止・取消・撤回訴訟、厚労省への不服申立(行政不服審査法) という法的手段を実行する医師、患者がこれから増えることを期待したい。厚労省の棄民政策を知った医師らに、報道関係者、国会議員、一般市民、患者・家族らという一般常識を有する人々への宣伝・訴えを強化することを呼びかけたい。
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