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(回答先: 若い外科医が海外に逃げていく--もう1つの医療崩壊 投稿者 てんさい(い) 日時 2008 年 2 月 06 日 03:14:11)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20061221/116093/
【特集】2007年トレンド(1)「医療編」
2006年12月28日 木曜日 風間 浩
医療崩壊 勤務医 研修医
「医療崩壊」が医師たちの間で大きな話題となった2006年の医療界。2007年は、医療の崩壊を招いた原因を分析し、しかるべき対策が打たれる「医療再生」の始まりの年とならなければならない。どこから手を付けるべきか?
「日本の医療はおかしな方向に進んでいるのではないか?」。多くの医師が漠然と感じていた異常感を、虎の門病院泌尿器科部長の小松秀樹氏は、2006年5月に上梓した自著の書名で明確な言葉にした。
『医療崩壊』――。同書が呼び水となって、これまでいわばサイレント・マジョリティーだった勤務医たちはインターネットなどを通じ声を上げ始める。それが大きなうねりとなり、「医療崩壊」は今日の医療を取り巻く空気を的確に表すキーワードとして瞬く間に医療界に定着した。
勤務医の「立ち去り型サボタージュ」が増加
「医療崩壊」が何かを一言で説明するのは難しいが、現象として最も分かりやすいのは、地域の基幹病院の勤務医の就労環境が異常に苛酷なため、医師が逃げ出し、地域医療が立ち行かなくなっている状態であろう。
小松氏は、勤務医のこのような行動を「立ち去り型サボタージュ」と呼んだ。「立ち去り型サボタージュ」の増加は、近年の、中堅どころの医師の開業の急増で数字的にも裏付けられている。
医師の新規開業数の年次推移(「日経メディカル」2007年1月号より)
「医療崩壊」が国民に影響を及ぼしているのは言うまでもない。例えば、小児科、産婦人科など、特に就労環境が悲惨とされる診療科の医師は、その地域の基幹病院に一人もいないという市もある。その市の住民は、それらの科の高度医療を受けるには、周辺地域に行かねばならないのだ。
2006年は、そのような地域医療が崩壊していく様を憂うばかりだったが、2007年は、その流れを断ち切り、「医療再生」に向けた道筋をつけなくてはならない。そのためには、まず「地域の基幹病院の勤務医の就労環境が異常に苛酷になった」原因を的確に把握する必要があるが、これが一筋縄ではいかない。歴史的な背景を含め、様々な要因が複雑に絡み合っている。
現場の医師たちは、そもそも医師の絶対数が足りないのだと訴える。日本では20年以上、医療費抑制策が進められているが、医療費の水準そのものが国際的に見て低すぎるという識者も多い。しかし医師数増、医療費増は、国民の社会保障負担増に直結する大問題であり、方向転換に社会的コンセンサスが得られるとは考えにくい。
臨床研修必修化が最大の原因か?
3年前の医師の臨床研修必修化が「医療崩壊」の最大の原因だとする声もある。地方の基幹病院の医師の人事権は、地元の大学の医局が掌握してきたが、臨床研修必修化以降、研修医が自由に勤務先を選ぶようになり、大学によるコントロールがきかなくなった。
その結果、若い医師が大都市圏に集中、地方の大学医局に働き手がいなくなり、関連病院から医師を“引き揚る”医局が相次いだ。これにより、残った現場の医師の業務負担は増し、さらに小児科、産婦人科など極端に忙しいされる診療科は医師から敬遠されるようになった。
これらの現象は、従来、大学に支配されていた研修医に選択の自由を与えた反動ともいえ、何らかの対応が取られる可能性はある。一定期間の僻地勤務の義務付け、診療科目ごとの定員制などが議論されることになるかもしれない。
「再生」のカギは国民の現状理解
一方、こうした制度的な問題よりも、国民が医師に向ける目の厳しさが、何よりも現場の医師の負担になっているとする見方もある。近年、患者の権利意識が高まり、医師が医療過誤などを理由に患者に訴えられることが多くなった。
多忙な勤務医にしてみれば「安い給料で忙しい中、一生懸命やっているのに、ミスともいえないような事故で、糾弾されてはやっていられない」というわけだ。
従来も医師の仕事は大変だったが、その大変さが報われる国民からの尊敬があった。今それが希薄になっている。医師も人間である。患者の意識が「病気は治してもらって当然。ちょっとミスすれば罪人扱い」では、モラールを維持できない。
崩壊しつつある医療を、立て直すのは容易ではないが、まずは今医師が置かれている厳しい状況を国民が正しく理解してあげることが「再生」の第一歩になるのではないだろうか。
(風間 浩=日経メディカル編集長)