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新医療制度「機能不全」の様相
今年4月の診療報酬改定で、75歳以上の国民が医療を受ける際に1人の「高齢者担当医(仮称)」に限定する新制度の導入が検討されていることに対し、医師の8割が年齢で医療に線引き≠キる制度には反対していることがキャリアブレインに寄せられた情報で明らかになった。医師が高齢者担当医になる場合、厚生労働省は研修を義務づけることにしているが、医師の6割が「受講の意思なし」と回答。高齢者担当医が血液検査や胸部レントゲン等の「総合診療計画」を作成することに関しても、9割近くが無意味という意思を表しており、現場からの反発で、新制度は導入前から機能不全≠フ様相を示している。(山田 利和)
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医療現場は反対が圧倒的
診療報酬改定をめぐっては現在、厚生労働大臣の諮問機関「中央社会保険医療協議会(中医協)」が具体的な内容を検討している。「高齢者担当医(制)」に関しては、1月18日の中医協で確認された「現時点の骨子」に、「(75歳以上の国民が医療を受ける際には)高齢者担当医のもとに、主病と認められる慢性疾患の治療に対して1医療機関のみにおいて(診療報酬を)算定する」と記載。75歳以上の国民が複数の医療機関にかからないようにするため、原則として患者1人について1人の高齢者担当医とすることが盛り込まれている。
この高齢者担当医制について、神奈川県保険医協会が1月17日から25日にかけて同県内の保険医268人から得た回答を集計。その結果、新制度について、「反対」が圧倒的多数の79.4%を占め、「賛成」は4.8%に過ぎなかった(これらの他に「どちらともいえない」が14.9%)。
制度は、4日間の研修を受けた医師に届け出をさせたうえで75歳以上の患者の高齢者担当医とし、患者の年間の「総合診療計画」を作成することになっているが、研修を受講する意向に関しては、「全くない」が41.4%、「あまりない」が18.7%と、研修に否定的な回答が60.1%に上った。一方、「どちらともいえない」(21.3%)、「少しある」(4.1%)、「ある」(12.3%)だった。
研修についての意見では、「4日間の研修は短すぎる」「意味のある研修を行えるか疑問」のほか、「4日間も診療をストップさせるのか」といった疑問も相次いだ。
「高齢者の特性を無視」
高齢者担当医が年2回の血液検査や年1回の胸部レントゲン程度の診療を行うことを想定した総合診療計画を作成することでは、「非常に問題がある」が70.5%、「少し問題がある」が15.3%と、85.8%の医師が問題を指摘し、無意味という意思を示した。「かなり良い」は2.2%、「非常に良い」は0.7%と、肯定的な意思は3%に満たず、医療現場は総合診療計画を否定していることが分かった(これらのほかに「どちらともいえない」が10.8%)。
総合診療計画に対する意見をみると、「高齢者の個々人を考えると、計画は無意味」「作成する時間などない。高齢者は予見不能」をはじめ、「検査回数の規定は医師の裁量権の侵害」「肺炎などの場合、年2回の採血、年1回の胸部X-Pでは対応できない」という指摘があった。患者の立場を想定し「束縛を感じ不安になるのでは」と心配する声も出た。
75歳以上の後期高齢者の初診料を引き上げ、再診料は引き下げるという案についても、賛成は1.5%に過ぎず、反対が81.0%に上った(ほかに「どちらともいえない」が15.7%)。この案に関しては、「初診の人は少なく言語道断」「ほとんどが慢性疾患の再診」という意見のほか、「変更する根拠が不明確」「再診を大切にするのが高齢者医療」と訴える声も寄せられた。
制度の全体に対する意見では、「患者のフリーアクセスを奪うので反対」「実施は不可能」「医療費抑制を目的としており反対」をはじめ、「主治医権の剥奪(はくだつ)を伴っており、診療所は閉院に追い込まれる」「個人差が大きく、ちょっとしたことで容易に合併症を引き起こす高齢者の特性を全く考慮していない」などの批判的な指摘が続出。「主治医を変えたい場合にどうするのか」という根本的な疑問のほか、「研修内容も不明、周知もない」「国民にほとんど説明がない」など、診療報酬改定を控え、いまだ情報を明確に開示していない国の無責任さを指摘する意見もあった。
後期高齢者の初診料を引き上げ、再診料を引き下げる案をめぐっては、1月30日の中医協で白紙に戻し、据え置くことが決まっている。
更新:2008/01/31 キャリアブレイン