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産科の補償制度、骨格まとまる
出産した子どもが脳性麻痺(まひ)になった場合、医師らの過失を裁判で立証しなくても補償がなされる「産科医療の無過失補償制度」の骨格が1月23日、財団法人「日本医療機能評価機構」の準備委員会(委員長=近藤純五郎・近藤社会保障法律事務所)でまとまった。民間の損害保険を活用した裁判外の紛争手続きによって訴訟リスクを減らし、深刻化する産科医不足の解消につなげる狙いがある。しかし、医療事故の被害に遭った家族などから「不平等な制度だ」という不満も出ている。
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この制度は、分娩を取り扱う病院や助産所が「運営組織」を通じて損害保険会社に保険料を支払い、新生児に脳性麻痺の後遺症が残った場合に保険金が支払われる仕組み。
補償対象に認定されると、新生児1人当たり数百万円の「準備一時金」と総額2,000万円の「分割金」が支給される。
この分割金は2,000万円を20年分割にした金額で、20年以内に死亡しても20年間支給される。
補償の対象は「通常の妊娠・分娩にもかかわらず分娩にかかる医療事故により脳性麻痺になった場合」で、「医療事故」には医師らに過失がない事故も含む。
具体的には、(1)出生体重2,000グラム以上で、かつ、(2)在胎週数33週以上で脳性麻痺になった場合で、(3)重症度が身体障害者等級の1級および2級に相当する者――が補償対象になる。
ただし、これらの要件を満たしても、「除外基準」に該当する場合は補償されない。除外基準は、脳の奇形や染色体異常などの先天性要因、分娩後の感染症で脳性麻痺になった場合であり、補償の対象は極めて限定されている。また、出生後すぐに亡くなった場合には脳性麻痺の診断が付かないため、補償されない。
■ 「線引きが分かりにくい」
この検討会は昨年2月から約1年間にわたり開催され、12回目にようやく取りまとめに至った。これまで終始議論になったのは、この制度で救済される範囲(補償対象)だった。
会議には、陣痛促進剤の事故で長女を亡くした京都府の高校教師である勝村久司さんが委員として参加し、制度の創設を急ぐ意見に反対してきた。
この日の会議でも、勝村委員は「補償の対象が限られている」と改めて反対意見を述べた。「ほとんどの妊産婦が保険料を払う。それは『脳性麻痺の子どもが産まれるかもしれない』という不安を取り除くために新しい補償制度ができたからだと理解する。しかし、実は6カ月以内に死亡するとダメ、未熟児は除外、先天性の脳性麻痺もダメ。市民の感覚では『過失のない事故は対象になるが先天性は補償されない』という線引きが分かりにくい」と訴えた。
また、勝村委員は「新制度は小さく産んでいただいた方が、トラブルが少ない。妊婦の保険料負担も少なくしてほしい」と述べ、総額2,000万円の分割金を1,500万円にするなど、金額を下げて救済範囲を広げることを求めた。
これに対して、近藤委員長は「小さく産んで大きく育てるのは難しい。小さく産めば小さいまま。大きくなれないまま価値がないから抹殺される。これが今までの制度の…」と反論し、会場内に冷たい空気が流れた。
勝村委員は「脳性麻痺の子どもを抱える家族にとっては、先天性でも救済してほしいはず。なぜ、こんなに不平等な制度なのか」と声を強めたが、近藤委員長は「それを言い出すと、この制度をやめろということになる」と一歩も引かなかった。
近藤委員長の指揮でやや強引にまとめた今回の報告書案は、若干の文言修正の後、日本医療機能評価機構の理事長に提出。同機構の理事会で承認された後、金融庁の審査を経て来年度内に無過失補償制度が創設される予定。
運営組織は、厚生労働省の関連組織である同機構が担当する。同機構は、医療機関の第三者評価や医療事故の収集事業などを行っている。
更新:2008/01/23 キャリアブレイン