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療養病床削減「医療格差」助長も
厚生労働省が進める「療養病床」の削減計画が、揺らぎを見せている。1月10日までに17都道府県が削減の目標値を決めたものの、香川県を除く16都道府県が同省の目標6割削減≠下回った。削減率が最高の香川県が65.4%、最低の山形県は13.2%などと、都道府県で大きな差が出ている。目標値は同省の基準に従い算出されたが、行政の姿勢で療養病床が左右されるとも見られ、地域の「医療格差」を助長する恐れも小さくない。このような現状について、医療関連団体などは「国が一つの基準を当てはめて機械的に全国の病床数を数値化しようとしていることが最大の問題」と反発している。
療養病床は、病状が安定した患者を入院させることから「定額制」になっており、大半の検査や処置について保険からの支払いは増えない。このため「厚労省が医療費の削減・抑制を狙って導入した」という指摘もある。同省は全国の病院に対し、一般病床にするか・療養病床にするかの選択を迫り、2003年8月までに届け出るよう義務づけて誘導≠オておきながら、06年2月には方針を一転して削減を打ち出したという経緯がある。
現在、医療保険が適用される「医療型」の療養病床が約25万床、介護保険が適用される「介護型」の療養病床が約11万床あり、同省は12年3月末までに医療型を15万床に削減し、介護型は全廃する計画を進めている。
こうした計画に基づき、各都道府県は同省の指示で療養病床の削減目標を含む「地域ケア体制整備構想」を策定している。1月10日までに17都道府県が削減の目標値を決定=文末表参照。削減率を見ると、香川県の65.4%を最高に、福島県の50.5%、高知県の50.3%が続いた。一方、削減率が低いのは、山形県の13.2%、愛知県の24.7%、宮崎県の28.5%など。17都道府県の平均は36.7%で、同省が目標とする60%削減を大きく下回った。
全日本民主医療機関連合会(民医連)は、都道府県によって削減率に相当の差が出ていることに関して、「都道府県は療養病床を持っている病院の意向を調査するなどして目標値を定めている。例えば、削減率が低かった山形県では医療療養病床を持つ90%の病院が療養病床を今後も『維持』する意向を示している。既に判明している17都道府県を見ても、地域医療に向き合う病院等の考えと国の計画が非常にかけ離れていることが表れている」と指摘する。
民医連は、国の基準に従い削減率を決める都道府県の姿勢で療養病床が左右され、地域間の「医療格差」を助長する可能性があることにも触れ、「国は机上の計算で機械的に6割″減を打ち出しているが、地域の事情や入院患者の状況を考慮せず、一つの基準を全国一律に当てはめることには無理がある。削減率についても、病院や地域住民の意思をどれだけ反映しているかを精査する必要もあり、機械的に療養病床を廃止・削減することは大問題であり、反対だ」と話している。
更新:2008/01/10 キャリアブレイン