★阿修羅♪ > 医療崩壊1 > 261.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
産科医療と
----天漢日乗 から転載------------------------------------------
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/04/nicu_4c56.html
2007-04-12
NICUの向こう側 長期入院している子どもはなぜ家に帰れないのか
胸の詰まる統計がある。
NICUに長期入院している子どもに関する統計だ。
日本の産婦人科学会である日本産婦人科医会が平成17年3月に発表した
NICUに関する実態調査報告
http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/research/boshi/NICU_0503.pdf
から、抜粋したものだ。
以下に示したのは
受け入れ先の条件さえ整えば、退院できる見込みのある子どものリスト
である。
しかし、
親の経済状況や重い障碍
などが足かせになって、
NICUで入院を続けなくてもいいのに、退院後の見通しが暗い子どもが多い
のが見て取れる。
青で示したのは親の事情が整わなかったり、後方支援施設がないために退院できない子ども、赤は親との関係が希薄になってしまっているのではないか、と疑われる子ども、緑は見通しの明るい子どもである。
◎ 退院見込のある患者の現病歴および主治医コメント
在胎週数(週)/出生体重(g)/延入院月数(月)/主病態/担当医コメント/
24 /395 /17/胎児発育遅延、早産児:低酸素虚血性脳/症、慢性肺疾患/気管切開を出来るだけ避けようとしたことによる長期入院 /
24 /447 /23/子宮内感染による早産:慢性肺疾患など/家族の経済的問題 /
24 /592 /19ウィルソンミキティ症候群 //
25 /760 /15/新生児仮死、先天肺炎:慢性肺疾患 //
25 /866 /14/呼吸窮迫症候群:出血後水頭症 //
26 /588 /12慢性肺疾患 //
26 /662 /13/デ・ランゲ症候群 //
26 /711 /14/双胎第二児、呼吸窮迫症候群、頭蓋内出血:慢性肺疾患/家族の受け入れが困難だった /
27 /802 /21/双胎第一児、声門下狭窄症/家族の受け入れ困難、遠距離からの搬送例 /
27 /896 /15/髄膜炎後水頭症/家族とのコミュニケーション困難 /
28 /774 /27/胃破裂、水頭症/家族の受け入れ困難 /
28 /1496 /34/呼吸窮迫症候群、ヌーナン症候群.家族の受け入れ困難、後方支援施設の不足 /
29 /732 /13/先天性サイトメガロ感染症、慢性肺疾患/家族の受け入れ困難だった /
30 /1072 /43/DIC、頭蓋内出血/家族の受け入れ困難 /
30 /1605 /13/双胎間輸血症候群(受血児):低酸素虚血性脳症 //
31 /2090 /64/呼吸窮迫症候群/後方支援施設の不足/
33 /1562 /20/双胎第二児、心奇形:脳性麻痺/CATCH22手術待機中、家族の受け入れ困難 /
34 /1728 /29/18トリソミー/家族の受け入れ困難 /
34 /1926 /55/軟骨異栄養症、肺低形成:慢性肺疾患/人工換気をできる周辺施設の不足 /
35/1962/20/新生児仮死:低酸素虚血性脳症/呼吸管理が困難、家族の受け入れ困難 /
35/2240/17/双胎一児死亡、胎児仮死:脳性麻痺/家族の在宅酸素トレーニング中/
35 /2602/40/新生児仮死:低酸素性虚血性脳症/呼吸管理が困難 /
36/2495/14/新生児仮死:脳性麻痺 //
36/2580 /18/ガレン静脈瘤:脳性麻痺/家族の受け入れ困難(遠方からの搬送のため)/
36 /2698/23/新生児仮死:脳性麻痺/家族の経済的問題 /
36/2837/19/低酸素虚血性脳症 //
37/2032/16/致死性小人症、呼吸不全//
37/2310/24/二分脊椎/呼吸管理が困難/
37/2893/29/新生児仮死:低酸素性虚血性脳症 //
38/1346/22/18トリソミー、ファロー四徴症/家族の受け入れ困難/
38/1670/27/骨形成不全症/母親の休職、同胞の精神的ストレス
38/1960/17/一過性多呼吸、四肢絞扼輪、シルビウス裂周囲多小脳回症 //
38/2073/14/多発性関節拘縮/家族の受け入れ困難/
38/2310/25/新生児仮死:ペナ・ショッカー症候群/後方支援施設の不足/
38/2338 /23/彎曲肢異形成症//
38/2380/14/先天性有機酸代謝異常症、脳性麻痺 //
38/2910 /21/新生児仮死:脳性麻痺/家族の受け入れ困難/
39/ 2167 /12/先天性関節拘縮 //
39/2616/50/新生児仮死:低酸素虚血性脳症//
39/2672/33/胎児・新生児仮死(臍帯脱出):低酸素虚
血性脳症//
39/2868/21/胎児・新生児仮死:脳性麻痺//
39/3033/27/気管無形成症/家族の来院がない(遠方からの搬送)、家族行方不明/
39/3110/17新生児仮死(早剥):脳性麻痺//
39/3120/ 17/脊髄髄膜瘤(Chiari奇形)/家族の受け入れ困難であった /
39/3130/53/ミトコンドリア脳症/家族の受け入れ困難 /
39/3230/22/新生児仮死:低酸素虚血性脳症/家族の受け入れ意志なし(児への関心なし)/
40/2786/15/彎曲肢異形成症/後方支援施設の不足/
40/2924/ 19/新生児仮死:脳性麻痺/家族の経済的問題/
40/3014/19/肺胞蛋白症:間質性肺炎//
40/3102/27/新生児仮死:脳性麻痺、先天性気管狭窄症/家族の経済的問題(受け入れ良好)/
40/3194/25/中腸軸捻転症:短腸症候群//
41/2984/16/低酸素虚血性脳症/家族の受け入れ困難(経済的等)/
//51/細菌性髄膜炎:水頭症/ヒルシュスプルング病手術待機中/
主治医の所見が書かれてない子ども達も、重い障碍や先天性の病気を負っている場合が多い。
病院は命を助けてあげたけれども、家族にすれば、「五体満足」でない「手の掛かる」赤ん坊が生まれてしまった
ということなのだ。
こうした辛い境遇にある子ども達の中でも、赤字で示した
家族が子どもの手を離してしまったらしい例
を見ると、実に悲しい。
母親の休職、同胞の精神的ストレス
家族の来院がない(遠方からの搬送)、家族行方不明
家族の受け入れ意志なし(児への関心なし)
と書かれている赤ちゃん達は、退院しようにも受け入れてくれる家族がいないのだ。「同胞の精神的ストレス」というのは、障碍を負った妹弟を上の兄姉が受け入れられないということなのだろうか。遠方から搬送された赤ちゃんの「家族行方不明」というのは、気管無形成症という難しい病気の赤ちゃんを、親が受け入れられなくて、まったく連絡が取れなくなったということなのだろうか。「児への関心なし」という赤ちゃんは、病院に22ヶ月入院しているが、母親の退院後は、一度も家族が誰も顔を見に来たことがないのだろう。重い脳障碍を負っていると考えられるこの赤ちゃんは、ひどい言い方をするのだが、病院にやっかい払いされてしまったのである。
この後のリストは
退院の見込みのない子ども
のものである。その中では
致死性四肢短縮症の子ども
は、家族が受け入れてくれないだけでなく、
家族の受け入れ意志なし(同胞には秘密)
と、生まれたことすら、兄姉に秘密にされている。致死性四肢短縮症とは、
骨の形成が不全で、骨が成長せず、最後は肺など骨格内の内臓が圧迫されて死んでしまう
病気だという。延べ入院月数は、統計が間違っているのでなければ
124ヶ月
となっている。10歳を超えて、その子が生きていることを、家族が認めてないのだ。
せっかくNICUを整備して、危険な状態の赤ちゃんを受け入れ、命を救っても、赤ちゃんの状態が普通でなく、親に余裕がなければ、NICUから外に出ることができない。
後方支援施設が整備されていれば、NICUの病床をあけることが可能な子ども達も、そうした施設の不備のために、やむなくNICUのベッドにいる。
こうした長期入院の子ども達の管理に追われて、NICUでは、ベッドも人手も足りない。危険な状態の新生児は、受け入れてくれるNICUが見つからず、産科は遠くの病院にまで呼びかけ、なんとかNICUのベッドの空いているところに、赤ちゃんを運んでもらっているのだ。
その赤ちゃんが、無事に退院できればいいのだが、医学の進歩で、昔なら短い時間で亡くなってしまった赤ちゃんが助かるようになった。助かった赤ちゃんが、NICUを出ても、健康であるとは限らない。
健康であっても、うんと小さく産まれた、超低体重出生児であれば、発達がゆっくりになる。
はたして、NICUに長期入院していて、家族に見捨てられてしまった子ども達は幸せなのか。
メディアは「大淀病院産婦死亡事例」以来、特に、
NICUを整備すればいい
と数ばかりを問題にするが、
NICUに入っている子ども達のQOLについては語らない
のだ。NICUを取材すれば、難しい状態の赤ちゃんを見ないはずはないのだ。わたしたちは
NICUに入っても、赤ちゃんはみんな健康になって退院する
と考え勝ちだが、上記の統計が示すような、難しい病気を抱え、なおかつ家族に見捨てられて、NICUから出られないでいる子どももいるのだ。
2007-04-12
この記事へのトラックバック一覧です: NICUの向こう側 長期入院している子どもはなぜ家に帰れないのか:
» ここは酷いうまし国ですね [障害報告@webry]
http://lm700j.at.webry.info/200704/article_15.html
「うまし国」論争和解 宮城県知事が電話謝罪 http://www.isenp.co.jp/news/20070411/news01.htm あー、はいはい http://www.google.co.jp/search?num=50&hl=ja&safe=off&q=%E7%BE%8E%E3%81%97%E5%9B%BD%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%80%80site%3Amlit.go.jp&l......
受信: 2007-04-13 01:06
» 出産記録の目次 [ムスコとヨメとオレと]
http://musukoyomeore.blog107.fc2.com/blog-entry-6.html
はじめまして。オレです。 このブログは、低酸素性虚血性脳症でNICUに入院し、低体温療法を施行されたムスコと、その母のヨメ、父のオレの記録です。 情報交換とか、発信とか、忙しいのであまり頻繁にはできませんが、お読みいただければうれしいです。 以下、目次です。 出産? 出産? 出産? 出産? 出産? ...
受信: 2007-09-19 20:11
コメント
よくお気づきになりましたね。
私は、重症身障者が「生活」している病院に勤務していますが、
病院で、40代、50代になっている入所者をたくさん見ています。
この病院も、もとは国立療養所だったのが、民営化され、存続が危ぶまれています。
私自身は無くなっても何も困りませんが、路頭に迷う人たちが何百人もでそうです。
投稿 ssd | 2007-04-12 14:42
御専門外の関心領域が広いですね。奈良事件も影響しているのでしょうか。
人工呼吸器と退院見込み有無との関連がもっと強いかと思いましたら、さほど差は無いのですね。私は、リハ科専門医なので小児リハにも関わりがあります。後方施設にリハの重要性が多く挙がっていますが、そのとおりです。小児は中枢神経系の発達が十分見込める症例は多いもので、訓練とともに知能のみならず情緒も発達してきます。放置プレイは発達が極めて少ないですね。
しかし家庭用人工呼吸器を管理しつつの自宅退院は親にとって大変な心身の負担になることは間違いなく、経済力なども影響します。(気持ちはあっても)退院見込み無となる場合が多い。また、障害児が生まれたことで両親が離婚したり、不仲になることもままあり、それも退院不可能となる要因と思います。
投稿 雪の夜道 | 2007-04-14 07:37
ssd先生、雪の夜道先生、コメントありがとうございます。
医学の進歩と医療機器の発達で、以前は生き延びることのできなかった難しい病気でも、家庭や施設で管理すれば、育つようになりました。ただ、核家族化が進み、世帯の収入の伸びが望めない状況では、子どもを引き取ることができない場合があります。他にお子さんがいらっしゃれば、大学卒業までにひとり2千万円かかるといわれる教育費も必要でしょう。親が一人に掛かりっきりになることで、他の子どものケアできなくなることを恐れる場合もあるかと思います。
障碍を持つ子どもが生まれてきても、親がその事実を受け入れられるかどうかはわかりません。わたしも重度視覚障碍がありますが、両親はいまでもその事実を受け入れられないのです。障碍のある子どもを持つと、親の自己イメージが傷つき、あるいは親同士やその家族の間で責任のなすり合いが起きたりして、子どもの障碍を認めず、障碍のリハビリを放置したり、邪険に扱ったりすることもあります。子どもの発達を考えれば、リハビリはできるだけ早く始めた方が、子どもにとってもいいはずなのですが。
雪の夜道先生、共通一次終了直後に文転するまでは、医学部志望でした。家族の希望でした。ただ、臨床に向いているとは思えず、基礎医学で先天異常解析をやりたいと言っていました。医師に欠格事項があるということも知らなかったのです。大学入学後、手帳をとりました。京大に入ったら、大学の先生や事務の方達に「なぜ、早く障碍のことを申し出てくれなかったのか。もっと早くあなたのために準備をしてあげられたのに」と諭されました。
投稿 iori3 | 2007-04-14 09:51
『私は、それで、産婦人科を諦めました』
大学を卒業する前は産婦人科医も選択肢に入っていましたが、障害児のこと、堕胎のことを考えると、出産という業務を扱える自信がないことに気付きました。
誰かがやらないといけない仕事から、誰かがやってくれるだろうと思って逃げてしまって、もうかなりの時が経っていますが、未だに産婦人科の先生には頭が下がる思いです
解決する術などないでしょうし、答が出るはずもないのですが、陰ながら応援しております
(頑張れとは、とてもとても、、、、)
投稿 Med_Law | 2007-04-15 01:28