投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 11 月 25 日 22:53:33: mY9T/8MdR98ug
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社会保険庁 身内には甘く、「民」には厳しく
年金問題で度重なる不祥事が明るみになった社会保険庁で、今度は東京社会保険事務局の医療指導官の「個別指導」を受けた歯科医師らが相次いで少なくとも3人、自殺していたことが分かった。同様の自殺は全国各地で起きており、保険のルールを懇切丁寧に指導するはずの「個別指導」が恫喝の場と化している実態が明るみに出てきた。指導を受けた歯科医師の1人は「戦前の特高警察のような扱いを受け、私も死にたくなった」と話す。医療関係者らは「指導は密室で行われ人権無視が常態化している。行政による殺人であり許せない」と怒りの声を上げている。
港区で開業していた57歳の歯科医師が9月17日、自らの診療所で首をつって死んだ姿で発見された。「優しくて真面目な歯医者さん」と近所の評判も上々だった。個別指導の対象に選定され、社会保険庁の指導医療官から「お前は全てを失うぞ。今から診療所に行って、洗いざらい調べてやってもいいんだぞ」などと怒鳴られ、カルテのコピー提出を強要された。「最初から犯罪者扱いだった」と知り合いに漏らしていたという。
昨年4月に最初の指導を受け2時間で終了。何の連絡もなく7ヶ月以上も放置されていたが、今年1月に30分ほどの再指導があった。さらに、今年9月上旬には「監査」へと移行。監査では通常、5年間の保険医停止の処分か保険医取り消しが課され、事実上、歯科医療はできなくなるため、「医院開業時に巨額の借金を抱えることが多い歯科医師にとって死刑宣告に近い」とされる。 この歯科医師は監査の通知が届いた4日後の9月10日に自殺未遂し病院に搬送。家族から診断書を添えて出席できない旨、連絡したが東京社会保険事務局は黙殺。そして、自殺に至った。友人の歯科医師は「何らかの対応をしていれば自殺は未然に防げた。指導医療官は歯科医師であり、医療に携わるものとしてのモラルにも反している」と憤る。
歯科医師らへの個別指導は、健康保険法や行政手続法などで実施方法が定められている。毎年のように取り扱いが変わる複雑な保険内容を周知するため、「懇切丁寧に行う」のが原則だ。以前は「国などの行政や、歯科医師会盾突く者が標的にされ報復された」と囁かれるほど恣意的に行われることが多く、各地で自殺者が出た。そうした反省もあり、「新指導大綱」などにより実施方法が明確化されたが、最近ではそうしたルールを無視した違法な指導が行われるようになった。「医療費を削るのが医療指導官の仕事」
政府は「医療費削減」の方針を強めており、「とにかく、医療費を削るのが医療指導官の仕事」(歯科医師会関係者)。弁護士や同僚の歯科医師を指導に立ち会わせたいと希望しても、社会保険庁側が拒否することが多い。ある指導医療官経験者は「相手がどんな歯科医師であれ『不正をしている』とレッテルを貼るのは難しくない」と明かす。
例えば、レントゲンを撮影した際、詳細にどんな画像なのか文章で数行にわたってカルテに記載するよう厚生労働省・社会保険庁は厳格に求めている。だが、レントゲンは「見れば分かる」ものであり、詳細に書く歯科医師は皆無だ。こうしたケースでも、「不正」として対応する指導医療官が多い。
(写真:安心・安全な歯科医療を求める署名活動) 小泉改革などで医療などの社会保障が狙い撃ちされている。医療ではリハビリに大幅な制限が課され、障害者自立支援法で障害者にも生活の多くの場面で負担金を支払わせるようになった。医療の中でも、「生命に直接関係ない」と思われがちな歯科治療は、相次ぐ制度改悪で、保険では満足のいく歯科治療が受けられなくなった。歯科医師や技工士、衛生士らに支払われる診療報酬は、先進国の4分の1ほどにとどまっている。こうしたことから、以前は医療費全体の12%あった歯科医療費が、現在は7%台にまで下落。一方で、病院窓口などでの支払いが基本的に3割にまで負担増となったため、国民としては「歯科医療費は高い」との思いがある。
歯科医院の経営状態は悪化の一途だが、景気の低迷もあり「今まで大丈夫だったのに、『自費になりました』とお金はもらえない」のが実態だ。ある歯科医師は「患者さんの負担を考えて、従来どおり、保険の枠内で治療しようと努力すると、医療指導官からは『不正だ』とされてしまう」と明かす。複雑な保険制度を完璧に理解することは不可能で、あとで訂正せざるを得ないことが多く、不正・不当と決め付けられることが少なくない。< また、指導医療官の資質の問題もある。担当者によって、取り扱いが大きく異なるのだ。「俺がルールだ」と明確な根拠もなく、保険での治療を認めないケースが少なくない。今回の個別指導を担当した東京の医療指導官は、前任地の京都などでも、指導を長期間中断して歯科医師の恐怖心を煽ることで有名だった」という。
医療崩壊の先頭に立たされる歯科医師
産科や小児科をはじめ、医療が崩壊しつつある中、歯科医療はさらに危機的状況にあえいでいる。歯科医師の5人に1人、歯科技工士の3人に1人が年収200万円程度以下にとどまる。日曜日や深夜まで診療している歯科医院が増えたのは、借金を返すために寝る時間を削って働かざるを得ない実態がある。先進国の中で日本はムシ歯や歯周病の状況が最悪なのに、真面目に治療し、できるだけ安くしようと努力すれば個別指導で恫喝される。「指導」名目での医療機関への締め付けは強化される一方だ。このままでは、更なる犠牲者が続くことになるだろう。
薬害エイズ、薬害肝炎など国民の生命に関する事項を隠蔽し、職責を果たさなかった厚生労働省。年金問題では度重なる不正行為で社会を不安におとしめた社会保険庁。自らの不正には目をつぶってきた。一方で、「民」へは不正・不当とレッテルを貼り歯科医師らを死に追いやる。逸脱した医療指導官はもちろん、黙認した社会保険庁、厚生労働省の責任は重大だ。厚生官僚は、国民の生命や健康を守るのが任務ではないのか。真摯に反省し、安全・安心な歯科医療を行えるようにすべきだ。
10月28日には自殺した歯科医師の妻も参加し、東京・砂防会館で「歯科保険医自殺事件緊急抗議集会」を開いた。集まった歯科関係者ら300人は、人権を無視した個別指導は「行政による殺人だ」と怒りの声を上げた。そして、厚生労働省による真相の究明、事件に関与した指導医療官らの処分、指導・監査の抜本的改善などを求める決議を採択した。(JCJ運営委員)
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