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−−日本が誇れるものは文化だ−−
(黒澤明)
「芸術」と「娯楽」は、しばしば相対立する物の
様に語られます。
「オペラは芸術か娯楽か?」とか、「マンガは
娯楽を超えて芸術に成り得るか?」とか言った
様に、「芸術」と「娯楽」は別の物の様に語られ
る事が少なくありません。
しかし、「芸術」と「娯楽」は、そう簡単に区別
出来る物ではないと、私は思ひます。シェイクス
ピアにの作品には、優れた娯楽性が有ると思ひま
すし、浦澤直樹氏の劇画など、非常に高い芸術性
を持って居ると、私は思ひます。これらがそうで
ある様に、「芸術」と「娯楽」は、簡単に分けら
れる物ではないと、私は、かねがね思って居ます。
黒澤明監督の映画についても、同様の事が言へる
と思ひます。黒澤明監督の映画については、芸術
的な作品と娯楽的な作品の二種類が有ると言った
受け止め方が昔から有りますが、私は、黒澤監督
の映画が、そう簡単に、二分出来るとは思って居
ません。
『椿三十郎』(1962年)がいい例です。この
作品は、とにかく、面白い。面白い事では、
『隠し砦の三悪人』(1958年)と双璧の作品
でしょう。見る者を引き込んで離さない点におい
て、本当に驚くべき作品ですが、一般に、『椿三
十郎』は、「娯楽」的な作品と見なされて居る様
に思ひます。
しかし、私は、そう単純ではないと思ひます。
確かに、この作品(『椿三十郎』(1962年))
は、滅茶苦茶に面白い。そして、面白いから、
「娯楽」だと見なされる傾向に在るのだと思ひま
すが、一面において、この作品(『椿三十郎』
(1962年))は、極めて芸術的な作品だと、
私は、思ふのです。
『椿三十郎』(黒澤明監督・1962年)をまだ
観て居ない方は、是非、DVDなどで観て頂きた
いと思ひます。江戸時代、或る国にお家騒動が
持ち上がる。その国(藩)の汚職に気が付いた
若い武士達が、腐敗に憤って、決起しようとする
のですが、正義感溢れる彼らの行動が、汚職をし
て来たその国(藩)の上層部に知れて、彼らは、
逆に追はれる立場と成る。特に、彼らの味方であ
る家老が、捕らえられ、軟禁されてしまった為に、
汚職に憤って立ち上がった若侍たちは、手も足も
出なく成ってしまふ。そこに、たまたま、彼ら
(若侍たち)と出会った放浪の武士(椿三十郎)
が、その騒動に巻き込まれる形で、形成を逆転
してしまふと言ふ物語です。
とにかく、面白いのですが、私が、この映画
(『椿三十郎』黒澤明監督・1962年)を
愛してやまないのは、この映画が、ただ面白い
からではありません。この映画は、ただ面白い
だけではなく、美しく、そして、人間に対する
深い洞察に満ちて居ます。だから、私は、この
映画を愛してやまないのです。
(今日、公開されたリメイク版の事は知りません。
私がお話して居るのは、黒沢明監督が作った
『椿三十郎』の話です。お間違え無く。)
「良い刀は、鞘に入って居るものです。」と言ふ
のは、この映画の中で、家老の奥方(入江たか子)
が口にする台詞ですが、この映画は、ただ面白い
だけではなく、深い。と或る藩のお家騒動を喜劇
的に描きながら、人間社会の本質を、実に良く捉
えて、描いて居ると、私は、思ふのです。
そして、この白黒の美しい映像で印象的な物は、
自然の美しさです。即ち、物語の中で、合図に
使はれる武家屋敷の椿を、白黒の映像で映し出し
て居るのですが、その椿が、白黒なのに、どうし
てこんなに美しく感じられるのだろうと、思は
ずに居られません。
何より、争いをする人間達の愚かさと、武家屋敷
の椿が象徴する自然の静けさ、美しさの対照が、
この映画の重要なモチーフに成って居て、そこに、
私は、下手な「芸術映画」より余程深い芸術性を
感じずに居られないのです。そして、この映画の
持つ深い芸術性は、単に、黒澤監督の個性だけで
なく、日本の文化が結晶化した物だと、私は、思
ひます。そう。この映画は、日本の文化が生んだ
作品だと、私は、思ふのです。
ところで、思ひ出した事が一つ有ります。
今から12年前、『マルコポーロ』廃刊事件と
言ふ事件が有りました。『マルコポーロ』が
廃刊に成り、同誌の編集長だった花田紀凱氏が、
文春社内の対立も在って、解任された、あの
事件です。
あの時、解任された花田さんの動静に、私は、
大いに心配し、私も、花田さんを救ひたいと
思ったものですが、事件の途中で、私は、あ
の時の騒ぎ(『マルコポーロ』廃刊事件)が、
『椿三十郎』にそっくりである事に気が付き
ました。文春藩のお家騒動と、そのお家騒動
の中で、幽閉された家老(編集長)をどうや
って助け出すか、と言ふ事件の推移が、本当
に、『椿三十郎』にそっくりだったのです。
その事に気が付いて、私は、改めて、黒澤さ
んは凄いと、あの騒動の只中で、感心したも
のです。
事件から少し経った頃、私は、花田編集長に、
「この事件、『椿三十郎』に似てましたね。」
と言ひました。
その時、花田さんが、何と言ったかは、残念
ながら、忘れてしまひました。
平成19年12月1日(土)
西岡昌紀
http://nishiokamasanori.cocolog-nifty.com/blog/
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http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=349959&media_id=25
巨匠・黒澤の不朽の名作をリメイク! 現代を生き抜くヒントを掴みたい『椿三十郎』
(cinemacafe.net - 11月28日 18:20)
巨匠・黒澤明監督と主演・三船敏郎コンビが生み出した不朽の名作『椿三十郎』。
45年経った現在も色褪せることなく、世界中から注目を浴びている作品である。そん
な日本映画史上に輝くヒーロー活劇が森田芳光監督の手によってリメイクされた!
監督から「この人しか考えられなかった」と熱いラブコールを受け今回、椿三十郎を
演じるのは、『踊る大捜査線』や『ホワイトアウト』など数多くのヒーローを演じてきた
織田裕二。黒澤監督の脚本をそのまま活かすという大きなプレッシャーのなか、協
調性とリーダーシップのある椿三十郎を作りだしている。
上役の汚職を暴き出そうとしている若侍たちの密議を偶然聞いてしまった素浪人の
椿三十郎は、彼らを放っておけず助太刀することに。ちょっと頼りない若侍たちを引っ
張りながら“茶室の三悪人”の陰謀を明らかにしていくが…。椿の必殺の剣、宿命の
ライバル・室戸半兵衛との決闘シーンなどはオリジナル同様に見どころとなっており、
若侍と椿をはじめキャラクターそれぞれの性格が伝わってくる会話がまた面白い。時
代劇というと堅苦しい、古くさいなどと若い人には抵抗のあるジャンルかもしれないが、
『椿三十郎』は時代を超えた人間ドラマ。椿の生き様はかっこいいし、現代を生き抜く
ヒントが隠れているし、マツケン、トヨエツといった豪華キャストも見どころだ。
(text:Rie Shintani)