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外国人雇用の件、シンガポールの例がありましたのでご参照下さい。
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http://news.nna.jp/free/mujin/deka/deka26.html
外国人労働者と雇用税(1)
シンガポールは比較的早い時期から外国人労働者を導入してきた国である。1965年、シンガポールは独立を果たすが、当時は高失業率を記録していたため政府は雇用の創出を重要な政策課題としていた。しかし人口の少ないシンガポールにおいては、外国資本の誘致によって労働力不足に陥り人件費が高騰したため、国際競争力の低下の不安からマレーシアから外国人労働者を導入した。1973年にはすでに労働力人口の約10%以上に相当する10万人の雇用許可証が発行されていたといわれ、それでも足りない分は、タイ、スリランカ、インド、バングラデシュ、フィリピン、インドネシアといった国々から労働者を受け入れ始めた。
1980年、シンガポール政府は、外国人労働者への過度な依存を防ぐため雇用税を導入した。雇用税の目的は、第1に外国人労働者の数を税額の上げ下げによって調整するといった量的管理であり、第2に安い労働力を目的として外国人労働者が雇用されることを防ぐためである。後者は外国人労働者に対する搾取を防ぐという意味ではない。外国人労働者の賃金は低く抑えられているが、雇用主が安価な労働力に過度に依存しないために、高額な税金を課すことで「高価な労働力」にしているのである。ちなみに現在でも、インドネシア人家事労働者の賃金(月約2万円)よりも、雇用税(約2万5,000円)の方が高い。
翌年、政府は製造業などで外国人労働者の受け入れを停止すると発表した。安価な労働者への依存は地元労働者の雇用を奪う恐れがあることと、高度な技術開発と導入のインセンティブを失わせるために、いつまでも労働集約的になってしまうというのが大きな理由とされる。政府はこうした外国人労働者の受け入れ停止を何度か発表しているが、絶対的な労働力不足のため、実行に移されることはなかった。
■同等のコストと労働力
1987年、雇用税の設定方法が変更され、外国人労働者の雇用コストが地元労働者と等しくなるように設定された。これは雇用税の目的が外国人労働者の量的な抑制を目的としていたのが、外国人労働者を同等の労働力とみなして必要な量を導入できるようにするという目的に変更されたということを意味する。
これは重要な政策変更であった。つまり、外国人労働力を地元労働者の雇用のコストと同等にすることで、安価な労働者の雇用という企業のインセンティブを断念させ、それでも労働者が必要であれば外国人労働者の雇用を認めるというものである。雇用税は企業が常に安定的な労働力を確保しつつ、安価な労働力に依存することなく、常に技術革新や新技術の導入のインセンティブを持ち続ける方法として位置づけられたのである。
ただし、外国人労働者の賃金は安価に固定されているので、賃金額に相当する巨額の雇用税はそのまま政府歳入となった。外国人労働者の雇用コストを上昇させる政策によっても外国人労働者数は増加を続け、1995年には外国人労働者の数は約35万人程度に達した。
筆者の調査では、高齢者介護施設で雇用されている外国人労働者の雇用のコストは、地元の労働者とは変わらない、あるいは地元の労働者の方が低いことも多い。しかしそれでも地元の労働者の雇用が進まないというのが実情である。ある施設を訪問しているときに、地元の女性が施設の清掃をしているのを見かけた。施設によると軽い刑事罰の後、ボランティアを義務付けられているといい、所管官庁から受け入れを求められたという。別の施設では家族の介護をしていた女性が、介護職に興味を持ち施設で働き始めたという。しかし数日でやめてしまった。シンガポールにおける介護職確保の困難は、これまで人材育成をほとんどしてこなかった「つけ」でもあるが、施設はとにかく地元の介護労働者を定着させるのが困難であるという。(毎月第3水曜日掲載)
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―著者紹介―
安里和晃
日本学術振興会特別研究員。沖縄県人材育成財団、国際交流基金のプログラムでフィリピン大学、シリマン大学(ネグロス島)に留学。現在は、アジアにおける外国人出稼ぎ労働者問題に取り組み、韓国、香港、台湾、中国、シンガポール、日本などでも調査を続ける。