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(回答先: 政治なんか無くても人は生きてゆける、心さえあれば 投稿者 まや 日時 2007 年 7 月 08 日 10:34:01)
ホッブス 『リヴァイアサン』【京都外国語大学】
トマス・ホッブス(1588〜1679)は、イングランドのウィルトシャー州マームズベリに生まれた。オックスフォード大学卒業後、キャベンディッシュ伯の息子の家庭教師や、フランス亡命中のチャールズ皇太子(後のチャールズ二世)の数学教師などを務めながら、著作活動に専念した。
ホッブスが生きた17世紀は、清教徒革命、クロムウェルの独裁及びその後の王政復古といった変動の時代であり、彼の発想に深い影響を及ぼした。彼の最大の意図はこのような動乱の結果生ずる無政府・無秩序の状態を抑えて、安定した国家を樹立し、諸個人の安全を図ることであった。この『リヴァイアサン』(本書は1651年刊の初版本である)もそうした意図を著したものであるが、単なる政治論、国家論とは異なっている。国家論を基礎に独得の人間論を持ち、人間論と国家論が首尾一貫した哲学体系をなしているところに、本書の理論構成の堅固さが認められる。
ホッブスは事物の第一原理を「運動」(motion)に求め、人間の心の数々の運動の中で特に「死によってのみ消滅する永久不断の意欲」であり、人間の自己保存の衝動に結びつく「力への意欲」に着目する。しかし、この意欲が無制限に発揮される「自然状態」の下では、各人の安全を守れない。各人は理性に導かれて相互に契約を結び、国家を形成して、自然権を国家人格の体現者としての主権者に与えるというのである。こうした政治形態の中では、君主制が最も安定度が高いとして称賛された。
ホッブスの思想史的意義は、個人の保全を重視した点と、王権を神によってではなく、契約という合理的な観念に基礎づけた点が、個人主義や自由主義に通じることにあろう。彼の思想は無神論とみなされたために、当時は受け入れられなかったが、現代では常に顧みられる思想の一つになっている。
『GAIDAI BIBLIOTHECA』 158号より
http://www.kufs.ac.jp/toshokan/gallery/158.htm