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●映画「TOKKO 特攻」 木下昌明
「日系2世の女性」が撮った「特攻隊」ドキュメンタリー
石原慎太郎が脚本を書き、製作総指揮した「俺は、君のためにこそ死ににいく」は、いわゆる“特攻隊もの”で、自爆攻撃をした隊員たちを"「美しか若者たち」とたたえて描いているのが特徴。内容は高倉健が主演した「ホタル」(01年)の二番煎じの感ありで、都知事ってカネとヒマがあるんだと思ったが、同時に死を美化する政治家にいつまでも日本人が牛耳られている歯がゆさを痛感した。
今度公開のドキュメンタリー「TOKKO 特攻」は、同じ特攻隊ものでも、生き残った「美しかない老人たち」の証言が中心になっている。これに圧倒された。
映画を製作した二人の女性―リサ・モリモト監督は米国に住む日系2世、協力したリンダ・ホーグランドは日本に住む米国人だが、ともに日本語ペラペラ。両人とも偏狭なナショナリズムにとらわれることなく、広い視野から戦争をとらえ、特攻隊を生みだした日本軍の体質に迫っている。
きっかけは、リサの私的な体験だった。米国では“カミカゼは怖い”と教育されたが、日本に住む温厚な叔父が、実は“特攻隊の生き残り”であるとリサは知る。映画は、このイメージの矛盾を問題にすることから始まる。
彼女らは、4人の元特攻隊の老人たちを訪ね、その証言を聞いて回る。攻撃されて沈没した米軍駆逐艦の生存者らの証言ともつき合わせ、検証もしていく。ちなみに、筆者の亡父も生き残りの一人だが、映画の中で語られる「自分から(特攻隊員だったと)言う人は誰もいなかった」という部分など、一々納得できた―苦しんだんだろうなぁ。
映画は、トップから日米の貴重な資料映像がふんだんに挿入され、エンディングまで息もつかせない展開になっている。なかで特攻隊員たちを前に、大西中将?が「見事体当たりしてくれた」という天皇の「お褒め」の言葉を披露しているフィルムにゲッとなった。また、出撃の部分はアニメで再現され、機上で「帰ろう、帰ろう」と引き返すシーンには思わずふきだしてしまったが、「生きたかったよ」と老人の回想する言葉が重かった。
これは、石原映画とは逆に、戦争の「愚」を考えさせる傑作。7月21日より、東京・渋谷シネ・ラ・セットで公開される。
*追記−石原映画には、出撃する隊員たちが「靖国神社で会おう」としきりに言い合っているシーンが多い。なかには「神社のどこそこの桜の木の下で待ち合わせしよう」などと愚にもつかないことまで言わせている。これは靖国問題の批判に対する石原の国家主義イデオロギー丸出しのセリフに他ならない。このようにして石原は、次の「犬死に」する若い世代を募っている。
(『サンデー毎日』07/7/8号に加筆)
レイバーネット日本
http://www.labornetjp.org/news/2007/1183085266226staff01/