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混濁、そして、迷妄からの脱出へ [たけ(tk)さんへ]
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投稿者 如往 日時 2007 年 6 月 12 日 04:47:40: yYpAQC0AqSUqI
 


 たけ(tk)さん、こんにちは。
 今のところ、たけ(tk)さんの思索綴りである【《たけ(tk)の思い込み》 http://wiki.fdiary.net/moikomi/】の中の《混濁》と《思い込み》の概念を把捉できない状態が続いているのですが、たけ(tk)さんが個人的に所有しているノート上のことでもあり、粗忽な質問をすることは憚れると想い込み今日に至っています。そこで、たけ(tk)さんが本意とするところとは大分逸れたものになるかも知れないとの少なからざる懸念を懐きつつ、《混濁》と《思い込み》に関する私流の概括的な理解について少し述べてみたいと考えます。


 吉本隆明は小林よしのりの“戦争論”や福田和也の“国家論”等の言説をポスト戦後派に特有な実体性を欠いた根拠なき“迷妄”の産物であると切って捨てていますが、私は概ねその見解を支持しています。
 そもそも戦前・戦中を生きたのでないことでは同等の私を含む小林よしのりや福田和也等の世代が太平洋戦争や当時の政体を解剖すべき当事者能力を有するかどうかは少なからず疑問を禁じ得ませんが、そうした存在論的考察の視座を欠いた、あるいはこのことに関しては自己相対化のプロセスの根拠を欠く戦後世代の人間が戦争の本質論にまで言及する所作を吉本隆明は“迷妄”に起因するものだと評したのです。けれども、少しばかり前の同じくポスト戦後世代の人間として、何故彼等が迷妄であらざるを得ないのか、すなわち混濁[turbid]よりもむしろ迷妄[fallacy]を是とするのか、その心象風景を解剖することは将来に亙る国民の問題意識や当事者意識の喚起や形成における手続論上の重要な意味を成すと思っています。

 “迷妄”とは「物事の道理に暗く、実体のないものを真実のように思い込むこと」(広辞苑)とあります。人は時に《混濁》の不安的な情態に耐え切れず、何らかの《思い込み》をすることによって安寧を得ようとし、安寧が得られた結果としてその価値を拡大化させ、ますますそれに依拠しようとし、総体的に“迷妄”が増幅していくことになるのではないでしょうか。また人は意識するとしないとに拘わらず、《混濁》の状態にあり、それを自覚する人間であればあるほど《混濁》ではあらぬ、すなわち澄明な情態を希求し、斯かる場合の《思い込み》はそこに至るための信仰の衣を纏った通過儀礼であったりするのかも知れません。
 何れにしても一般的には、人は《混濁》の情態よりは仮令“迷妄”であっても“思い込めるもの”がある情況の方を望むのではないでしょうか。つまり、人は“迷妄”と引き換えに安寧を得るのであり、それは同時に知的営為の限界性を露呈させることにもなるのではないかと想われるのです。一方、“迷妄”を脱するとは安寧を求めることは無関係に“迷妄”の否定、すなわちでき得る限り《思い込み》を回避しつつ物事の道理を明らかにしてくことに外ならず、また同語反復的になりますが《思い込み》の回避とは自己を相対化することと同義ではないかと考えています。

 経営学の基本でもあり教科書的な物言いをするならば、既存のコンテクストに拠らないで論考しようとする場合には、「仮説―検証」のプロセスを蔑ろにはできませんし、先ずは仮説の明証性確保のためにもparameterの抽出が重要なポイントなるでしょう。それが近頃ではたけ(tk)さんによる《思い描き》に関する考察のテーマにも重なっているのではないかと見ていますが、果たしてどうでしょうか。でも、どんな収まりになるのか楽しみにしています。もちろん、超亀レスを歓迎いたします。

 また、会いましょう。

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