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Re:れんだいこのカンテラ時評293 れんだいこ 2007/05/19 21:37
【田中角栄式ハト派防衛論考】
(れんだいこのショートメッセージ)
最近手に入れた「田中角栄の国会演説と各党の代表質問上下巻」(会演説調査研究会、閣文社1990.5.20日初版)所収の所信表明演説と各党代表との質疑の中から見えてくる「田中角栄式ハト派防衛論」を確認したい。今日びのタカ派式防衛論とは様相がまるで違う。このことを明らかにさせ、日本国家及び民族の自立自存に思いを馳せたい。「田中角栄式ハト派防衛論」は、現下の憲法9条改正論議が踏まえるべき今もっての基準となるべきではなかろうか。れんだいこはそう思う。
角栄の所信表明演説の最近のそれとの大きな違いは、内治外治の両面において満遍なく触れつつも、内治の方により多角的多岐精緻に言及していることである。しかも、より少なく言及されている外治のその過半が国交回復と国際友好親善と経済援助に充てられている。つまり、防衛論につき驚くべきほど寡言であるということになる。そういう事情からかどうか、四次防との絡みもあったのであろうが、各党代表は逆に「角栄の防衛論」を弱点として狙いをつけ質疑し、角栄が答弁するという構図が生まれている。これにより、奇しくも田中角栄式防衛論なるものが遺されることになったのは望外の成果と云えよう。
れんだいこは、このやり取りをれんだいこ式に整理し、「田中角栄式ハト派防衛論」として纏め、世に打ち出したいと思う。現下の国会とマス・メディアによる二頭建て牽引によるタカ派防衛論に基づく憲法改正運動に棹差してみたいと思う。最近の主流である「中曽根−小泉式タカ派防衛論」に対して、かってこの国に存在した「田中角栄式ハト派防衛論」を対置させ、後者の方が真っ当でないかと問いかけ直す機会を提供したい。
遠吠えするばかりの社共式対応で、特に日共の確かな野党論で状況に立ち向かうことは愚昧である。ああいうのは予定された反対運動であり、痛くもかゆくも無く改憲派の手の内にあり、タカ派支配に裏協力している恐れがある。
思えば、ロッキード事件で揺れた去る日、それによって利益を得たのはタカ派であった。最も激烈に反角栄闘争を仕掛け、容赦の無い政界追放運動を牽引したのは日共であった。この両者に黒い糸の繋がりを見るのは、れんだいこだけだろうか。そういう史観を持つれんだいこの、「確かな野党論」による野党分裂政策に固執する日共を見る眼は冷たい。この党はどこまで腐っているのだと云う憤然とした思いがこみ上げている。
それはともかく、ここで、「田中角栄式ハト派防衛論」を紹介する。憲法改正派に対してこれを武器にせよ、その値打ちは高い。それにしても、かような見解を保持していた角栄を極悪非道人として喧伝し洗脳し続けてきている日共の犯罪性は重い深いと云うべきだろう。日本政治の再生は、角栄の復権評価からしか有り得ない、れんだいこはそう思う。
2007.5.19日 れんだいこ拝
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【「田中角栄式ハト派防衛論概要」】
「田中角栄式ハト派防衛論」は、日米同盟を受容している。その限りで、吉田内閣最初期の「東洋のスイスたる国際的中立」の立場には立っていない。角栄は、「東洋のスイスたる国際的中立論」に対して、それは理想であるとして却下し、我々は現実論に立つと述べている。思うに、角栄の「日米同盟受容」は、米ソ冷戦構造に於ける体制選択として、米側即ち資本主義陣営に与するという立場の表明であろう。その意義を、自由主義市場体制の擁護に求めていた形跡がある。今日の歴史は統制経済主義を志向したソ連側の体制崩壊を知らせており、「日米同盟受容」の選択の賢明さを教えている。
「田中角栄式ハト派防衛論」は、その「日米同盟受容」を受けて、それが結果的に憲法前文及び第9条違反であろうとも、日米安全保障条約及びその関連諸法、自衛隊創設及びその関連諸法を受容している。これを日米安保体制と云う。この堅持については、ハト派とタカ派の相違はない。ハト派とタカ派の相違は、この次から始まる。
「田中角栄式ハト派防衛論」は、「憲法前文及び第9条違反」の日米安保や自衛隊を認めるが、「憲法前文及び第9条」を重石として、極力整合的であるべきだとする。必然的に吉田内閣以来の解釈改憲を引き継ぐことになる。これに対して、タカ派は、「憲法前文及び第9条」を否定して、極力憲法改正すべきだとする。もはや解釈改憲を限界として、小難しい話を神学論争として一蹴していくことになる。つまり、「田中角栄式ハト派防衛論」は、護憲を前提にした軍事防衛論である。タカ派防衛論は、改憲を前提にした軍事防衛論である。一見似ているが、この違いは大きい。
国防の基本方針は具体的には次のように定められる。その1は、日米安保体制に対する対応問題となる。ハト派は、米ソ冷戦構造に於ける体制選択としての資本主義陣営仲間入りという立場からのものであり、その限りにおいて盟主米国との繋がりを重視する。が、この体制下で憲法の明示する国際法の遵守、国際協調、国際平和創造に向かうというスタンスを採る。特徴的なことは、日米安保体制のくびきに置かれつつも、極力権国家として振舞おうとするところにある。
タカ派のそれは、米国を指導する国際金融資本の世界支配戦略に与し、日本を二等国家として存立せしめていくことが「国家百年の計」であるとする強度の日米安保体制深のめりスタンスを採る。ハト派の国防論を安保ただ乗り論として批判し、戦費の積極的負担に向かう。次に戦費のみならず自衛隊の派兵へと向かう。国際法は臨機応変のものとしてさほど重視せず、国際金融資本の論理と論法が正義だとして言いなりになる。そういう訳で、日本は隷従国家として振舞うことを辞さない。否、世界に先駆けての一番乗り支持を競う。
その2は、自衛隊及びに軍事防衛費対する対応問題となる。自衛隊をどの程度まで育成発展させるのか、自衛隊の防衛区域はどの辺りまでかを問う。ハト派は、主権国家としての自衛の為に必要とする最小限度としての防衛力の漸進的整備を目指し、今後の経済運営に支障となることのない限りに於いてという制限を設ける。軍事防衛予算の「GNP1%枠」と「専守防衛枠」で歯止めをかける。タカ派は、その「GNP1%枠」と「専守防衛枠」を取り外し、国際責任論を唱えて国際金融資本の世界支配戦略の指図のままに世界各地の紛争への積極関与を目指す。現在、自衛隊の戦地派遣に続いて前線戦闘が画策されようとしている。
その他3・米軍基地に対する対応問題、整理統合と負担問題、4・武器開発及び輸出禁止問題、5・非核三原則及び原子力開発問題、6・日米合同演習問題等々があり、それらいずれにおいても、ハト派の抑制に対してタカ派の積極という構図にあり、目下はタカ派の方針へと振り子が動いている。総じて、ハト派の目指すのは国際協調国家であり、タカ派の目指すのはネオ・シオニズム配下の好戦国家という違いになる。
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【1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける「田中角栄式ハト派防衛論発言集」】
最近世界的に緊張緩和の動きが見られるとはいえ、我が国が今子供平和と安全を維持していくには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力を整備していくことが必要であります。このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定しましたのもこのためであります。(中略)
戦後四半世紀にわたり我が国は、平和憲法のもとに一貫して平和国家としてのあり方を堅持し、国際社会との協調協和の中で発展の道を求めてまいりました。私は、外に於いてはあらゆる国との平和維持に努力し、内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くすことを政治の目標としてまいります。世界の国々からは一層信頼され、国民の一人ひとりがこの国に生を受けたことを喜びとする国を作り上げていくため、全力を傾けてまいります。あくまでも現実に立脚し、勇気をもって事に当たれば、理想の実現は可能であります。私は、政治責任を明らかにして決断と実行の政治を遂行する決意であります。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説)。
日本の防衛費が大きいかどうかという問題を例に挙げて申し上げます。防衛と云うものは、よその国の防衛なのではないのであります。自分を含めた国民全体の生命と財産をどう守るかというのであります。まず、その防衛体制が妥当であるかどうかという問題を考えるには、世界の国と比較することも一つの案であります。(中略)
このように、各国はそれぞれ時刻の防衛の為に相当の努力を払っておることを知らねばなりません。その意味から考えてみましても、わが国においても、この程度の負担をするのは止むを得ないことだと思うのでございます。非武装中立論を前提にして国防論や防衛論をする方々との間には意見の相違があることは止むを得ませんが、しかし、国防や防衛という問題をそのような観念論によって律することはできないのであります。(中略)日米安全保障条約を廃棄しなければならないというような端的な議論には与しないのでございます。(中略)自らの見識に於いて、自らの責任において、どうして自らを守るかという事については、数字に立って、現実を直視して、後代のためにも誤りの無いように努力すべきであると思います。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の日本社会党成田委員長質疑に対する答弁)
それから第三は、経済大国日本が軍事大国にならないかという問題でございますが、経済大国になりますと政治大国になるということは、これはもう当然でございます。日本が経済大国である。即ち、日本の輸出入の動向によって世界の情勢に影響を与えるということでありますから、好むと好まざるとにかかわらず政治的な影響を持つことは避けがたいのでございます。
しかし、軍事大国にはならない。これは憲法が明定をしておるのでございます。国際紛争に対して日本は武力をもって解決できない、こういう大前提があるのでございまして、憲法を守ろうということを言う人は、特にこの事実を理解すべきでございます。でありますから、日本の防衛力がどのような状態になろうとも、侵略的なものとか軍事的な大国と云うものには絶対に無縁のものである。日本を守るという全く防衛一筋のものであるということを理解すべきでございます。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の自由民主党桜内義雄質疑に対する答弁)
アジアの平和構想を確立するため、日米安保を解消し、非軍事的な日米友好条約を結んではどうかとう御発言でございますが、毎々申し上げておりますとおり、日米安全保障条約は、日本の安全と独立を確保するために必要なものとして、これを廃棄するとか変更するとかという考えは全く持っておりません。(中略)
我が国は、政治信条、社会体制のいかんにかかわらず、全ての国との友好的関係を維持してまいりますが、そのことが即等距離・中立の外交とはなり得ないのでございます。あくまでも自主外交でありますが、構造的に見ても、量的にみても、我が国の平和外交は自由主義陣営の一員として、これと密接な関係の上に立って進めることが、より効率的であると考えておるのでございます。(中略)
なお、なぜこれほどの軍備増強をするか、日本に対する脅威の実体とは何かとか、自衛力の限界を示せ、兵器国産化は産軍複合体の危険がある、兵器輸出禁止法をつくったらどうか、こういういろいろな御指摘をいただきましたが、我が国国防の基本方針は専守防衛を旨とするものであり、四次防は、アジアの緊張を高めるような軍拡や軍備増強の計画では全く無いということは先ほど申し上げたとおりでございます。(中略)
しかしながら、我が国の防衛力は、一次防以来の各防衛力整備計画によって逐次充実されており、今後どこまで伸びるかと云う問題に答える必要はあると思いますので、凡その整備目標を検討するよう防衛庁に指示をしてうるわけでございます。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.30日の公明党竹入義勝質疑に対する答弁)
それから、きのうの桜内議員に対する答弁につきまして、私の真意に対するご質問がございましたが、私は速記録をみまして、十分私の真意を伝えていないような点もございますので、ここに革めて考え方を申しのべます。
世界に類例の無い我が国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは、申すまでも無いことでございます。その前提には変わりはないのでありますが、無防備中立の考え方と、最小限必要な自衛力をも持つという私どもの考え方とは合わないのであります。この際、明確にいたしておきます。(中略)独立国である以上、独立を保持し、その国民の生命財産を確保してまいるためには防衛力を持たなければならないということは、論の無いところでございます。理想的には、国連を中心とした集団安全保障体制が確立することが望ましいことでございます。しかし、現実の状態を見ますと、この機構は完備せられておりません。スエズが閉ざれても、これを開放する力もありませんし、御承知のアラブとイスラエルが毎日報復爆撃をやっておっても、これをとめることのできないような状態においては、最小限自分で自分を守るだけのことはしないければならぬのであります。
そういう意味で、最小限度の防衛力を保持するということはとうぜんのことでございますが、しかし、もう一つの理想的な姿としては、自分だけで守るか、複数以上の集団安全保障の道をとるかということでございますが、これは東側、西側を問わず、自分だけで守ろうという国はないのであります。みんな複数以上で集団安全保障をとっております。日本だけがその例外になろうということは、それはできません。そういう意味で、国民の生命と財産を守らなければならない、しかし、国民負担は最小限度で理想的な防衛体制でなければならないというと、どうしても日米安全保障条約が必要になることは、過去四半世紀近い歴史に明らかなところでございます。(中略)
それから、専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱら我が国土及びその周辺に於いて防衛を行うということでございまして、これは我が国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えると云うことは全くありません。なお戦略守勢も、軍事的な用語としては、この専守防衛と同様の意味のものであります。積極的な意味を持つかのように誤解されない−専守防衛と同様の意味を持つものでございます。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の民社党春日一幸質疑に対する答弁)
先ほど述べましたとおり、世界に類例の無い我が国憲法の平和主義を堅持してまいりますことは申すまでも無いことでございます。こういうことでございますので、ご了承を賜りたいと存じます。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の日本社会党堀昌雄質疑に対する答弁)
安保条約を廃棄せよ、沖縄の毒ガスを点検せよ、四次防を撤回せよ、四次防を国会にはかれという問題でございますが、安保条約の目的は、間々申し上げておりますとおり、我が国の安全を確保することにありまして、政府としては、これを堅持してまいるつもりでございます。同様の理由により、四次防を撤回する考えもございませんし、四次防は重大な問題でありますので、国会においてはもとより、広く国民各界各層において議論していただきたい、こう考えるのでございます。しかも、防衛問題に対する国会の審議機関としては、各党にもお願いを申し上げておりますが、安全保障に関する常任委員会のごときものを設けていただいて、十分国会でご審議いただくのが正しいと考えておりますし、政府もそうお願いをしておるのでございます。
(1972.10.28日の第70回臨時国会に於ける所信表明演説に対する10.31日の日本共産党不破哲三に対する答弁)
田中角栄式ハト派防衛論考
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/kakuei/boeiron.htm
2007.5.19日 れんだいこ拝
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