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小室直樹 さん 資本主義国になれないニッポン 後編
2005年02月18日
今週も前週に引き続き、政治学者・経済学者の小室直樹さんが登場します。前回は、マックス・ウェーバーの思想の入り口をご紹介していただき、現在の日本社会の問題を考える上で、ウェーバーの資本主義理論はいまだに有効である、というお話でした。今回は、経済学からは少し離れて、社会学者・小室直樹としてのお話をお聞きしようと思います。
小室さんの社会学者として日本を論じたものの中で、よく知られているのは「アノミー論」です。特に1980年代、79年に導入された国公立大学の共通一次試験以降(※注=現在の大学入試センター試験)、ますます国内教育の荒廃が進み、日本のアノミー的症状を悪化させる、と言い続けて来ました。アノミーとは、フランスの社会学者デュルケームがギリシア語の「アノミア」から作った社会学用語で,行為を規制する共通価値や道徳的規準を失った混乱状態、すなわち無連帯状態のことを指しています。小室さんは、その社会学の概念をいくつかの著作で論じ、教育が荒廃した日本では、ついに親子間で親殺し・子殺しが多発するという警告を発していました。果たして、90年代に入り、連日のように親子間での殺人事件が頻発し、現在までも続いています。そんな中、ここ数年、小室さんは、社会学者としての発言を控えているような気がするのですが?
「私の予言が当たり、日本の状況があまりにも悪くなりすぎて、何も言う気が起きんのですよ(苦笑)」
日本のアノミーは、ますますひどくなっていますか?
「深刻な状況であることは少しも変わりませんが、今は、一見、鳴りを潜めているように見えますね。ただし、兆候は出ています。現在、不登校児、ひきこもりと呼ばれるものは、アノミーそのものです。今後、ますます、ひどくなっていくでしょう」
どうすれば解決することができるのでしょうか?
「日本のアノミーの大きな要因は、教育制度に根ざしています。日本の教育制度は官僚制度と密接に関係していますが、ともに、中国の科挙の制度を手本としているんですね。中国の科挙制度は、簡単に説明すると、高級官僚をペーパーテストで募集する仕組み。制度が確立していくにつれ、教育とペーパーテストで特権階級を形成する、階層構成原理となったのです。科挙制度には良い面もあり、ペーパーテストによって公正に評価登用されるので、もともとの身分に関係なく誰にでも官僚への道が公平にひらかれる社会が実現できる。しかし、いったん完成してしまうと、本来持っている弊害が必然的に生じてきます」
「受験者が増えて試験の競争が激化すれば、受験のための予備校ができ、さらに予備校に入るための受験競争が生まれ、競争は若年層へとどんどん裾野を広げていく。これは、日本の現状をみても明らかでしょう。幼稚園にも“お受験”があるわけです。その結果、志や知性より受験技術によって官僚になることができ、志も良識もない官僚が大量生産されるようになる。科挙制度を廃止する直前の中国は、文字通り“宦官にも劣る官僚”しか生まれなくなり、それまで1300年続いた科挙制度を廃止するに至ったんです。日本は、中国が1905年に廃止した科挙制度を、明治維新以来100年以上、中国に入れ替わりえんえんと採用しており、挙句の果てに、現実適応能力をまったく持たない現在の官僚を生み出し、日本の舵取りを任しています」
「マックス・ウェーバーは、資本主義下における官僚制は、法律に従って機能する『依法官僚制』でなければならないとしました。しかし、前回で指摘した通り、資本主義の精神がなく資本主義国家ではない日本の官僚制は、絶対主義時代のヨーロッパにおいて見られた『家産官僚制』といえるもの。家産官僚とは、“国家のものは王のもの、王のものは私(=官僚)のもの”と考えてしまい、どの省庁にも及んだ、賄賂と給料の区別がつかない、公費の私的流用といった一連の不祥事は、日本の官僚制度が、みかけは依法官僚制であるが、本質は家産官僚制であることを示しているわけです。日本の官僚は、“国家の財産は納税者のもの”である、という基本的なことがわかっていないのです」
「アノミーの問題の恐ろしいところは、次々に波及していくことです。教育制度を変えることが有力な解決手段であることは間違いない。今、日本の文部行政は完全に迷走していますが、まず、科挙制度に依拠した現状のシステムを根本的に変えることからはじめなければなりません。本当の教育とは一体何なのかと」
http://miyaneta.exblog.jp/2055706/