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「赤軍記者グロースマン 独ソ戦取材ノート1941−45」(アントニー・ビーヴァー/〔著〕 リューバ・ヴィノグラードヴァ/編 川上洸/訳:白水社刊)は、赤軍従軍記者グロースマンの取材ノートを引用し、臨場感あふれる読み物となっている。ただ、違和感を感じたのは第24章「トレブリーンカ」である。ここでは、その他の章(断片的な取材ノートをうまくまとめて引用している)とは異なり、「トレブリーンカの地獄」というニューレンベルク裁判でも引用された「ズナーミャ」誌に掲載されたグロースマンの記事がほぼそのまま挿入されているように見える(そのように理解した)。そこには、トレブリーンカの「ガス室」で10カ月で300万人が殺されたと推定するくだりがある(437頁〜438頁)。この記事は、グロースマンの実際の見聞ではなく、生存者や地元ポーランド農民にインタビューした結果生まれたものらしい(418頁)。私は、この第24章以外の取材ノートに基づく各章がこの書物の愁眉だと思っている。その流れの中でこの第24章を読み進めていく間も、これだけ誠実感あふれる取材ノートの作者が書いた記事なのだから、夢疑う余地なく当然読んでいく。そこで、「ガス室」のくだりである。この阿修羅掲示板では、「ガス室」はなかったというのが定説となりつつあると理解している。果たして、グロースマンは誰かのたわ言を真に受けて、その記事を書いたのであろか。あるいは、確証があって書いたのであろうか。知りたいところである。
ともあれ、この第24章については、「独ソ戦取材ノート」というこの書物の体裁とそれに沿う他の章の内容とから見て、違和感を感じて私は読んだ。しかし、今、Amazonの「おすすめコメント」(署名がないので、多分、出版社側が書いたのか)を読んでみると、「本書でもっとも胸を打つのは、記者として世界で初めてトレブリーンカ絶滅収容所を取材した記録だ。」となっている。読み手によって、ここまで180度変わるのか、と思った。私としては、「トレブリーンカの地獄」という記事についても、それに対応する「取材ノート」がもしあったならば、そちらの方こそ(または、そちらの方も)、この第24章でむしろ読みたかったと思っている。