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ホントに「暫定税率維持」でいいの? 自治体首長・議員さんへの疑問 2008/01/25
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道路特定財源をめぐる議論で、地方6団体は、政府と歩調を合わせています。22日朝の中国新聞には、全国知事会長と鳩山・民主党幹事長の激論が載っていました。道路特定財源維持を血相を変えて訴える知事会長の麻生・福岡県知事に、鳩山さんが「勉強不足ではないか」と怒っていました。
また、東京新聞は24日のWEB版で、「道路特定財源の暫定税率(1リットル25円)がなくなったら除雪作業ができなくなる」などの、地方自治体の声を載せています。
「自民党政権」のまま、「暫定税率」がなくなったら大変だ、という気持ちは分かります。「民主党政権が実現していれば、民主党政権から、一般財源を増やしてもらえるが、今のままでは、道路財源が足りなくなり、それで一般行政サービスに穴があく」。大まかに言えば、そういうことでしょう。
そのような「事務的な懸念」は繰り返しますが、私も公務員ですから一定程度、共有します。しかし、「政府案」支持だけに見えてしまう地方の首長や議員に対して、その私でさえも「物足りなさ」を感じています。
■疑問1:自らの「地域主権論」に逆行するのでは?
そもそも、全国知事会を初め地方6団体は、「地方が自由に使えるお金を増やせ」といっています。2004年度予算で地方交付税をカットした小泉純一郎さんに対して、厳しく抗議しました。また、知事会は、地方交付税は本来、「地方固有の財源」と筋論を主張し、「地方共有税」への改称を提唱しています。
・平成19年度地方交付税に関する主張(PDF文書、全国知事会ホームページ)
現状の「交付税」は、いかにも国が配る「国によるばらまき」、と誤解する人がほとんどです。実は、そうではなく、地方が社会的に連帯して助け合うイメージです。また、知事会は、法人2税を国税化することに対しても、反対しています。
・地方法人二税の国税化による税収格差の是正策に反対する緊急声明(PDF文書、全国知事会ホームページ)
これらの主張は、正当な声です。乱暴に言えば、「国から、札束でほっぺたを叩かれる体制」からの脱却。これが筋ですし、私も大賛成です。しかし、それを実現するには、今後、自治体は国に対して住民の支持をバックに闘わねばならない時間が続きます。厳しい闘いが続くことが予想されます。しかし、私は支持します。
ですが、ここで国に加勢してしまったら、あとあと「闘いの大義」が薄れかねません。自治体としては、「政府案支持ばかりを言っているようなイメージ」を国民に与えるのは避けた方がいいと思います。
■疑問2:「道路依存」体制は限界では?
第2に、気になるのが、地方の首長は結局、「道路特別会計にこれからも大量の金を突っ込んでいかないといけない」ということを前提にしていることです。政府案が成立すれば、10年間は暫定税率が維持されます。官僚の性質を考えれば、10年間は改革は行われない危険性が高まるといえます。
むろん、生活道路が必要な地域はあります。しかし、それも、たとえば本当にこんなに太い道はいるのか?と疑問のところもあります。また、大きな道であれば、大手のゼネコンばかりが儲けてしまわないか? そもそも地域にお金が落ちないのではないか? こんな疑問も浮んできます。
私の友人で元大蔵官僚の民主党幹部に内情を聞くと、「本当に必要な予算は道路整備特別会計の3分の1、残りの3分の2は何に使われているかわかったものではない」ということなのです。そして、そもそも「道路依存体制」ないし「車依存」体制も、もう地方でも限界が来ています。
高齢の方には、くどいようですが、免許を返上していただくことが必要な場合も出てきます。室内での事務作業などには支障がなくても、やはり動体視力などは落ちてくるのは避けられないことです。広島のローカル新聞にも、大学生の孫が、「広島県北部に住むおじいちゃんが運転をやめてくれない。危ないのに」と相談している切実な記事が載っていました。
私も広島県北部に勤務したことがあるから分かりますが、交通は大変不便です。小泉政府の規制緩和の結果、JR可部線が部分廃止され、バスも不便になってしまいました。
地元の市町も必死の努力をしていますが、なかなか対策が追いついていないのが現状です。福山市など、南部の都市部でも公共交通は十分ではなく、私の祖母の家計費のかなりの部分はタクシー代です。「移動の権利」の保障は極論すれば「最大の福祉」といっても差し支えありません。
地方に行けば行くほど、なるほど、クルマを使わざるを得ない構造があります。私は、大学生までは東京23区で「江戸っ子」として育ち、広島県南部の都市部、そして、大雪も降る北海道並の人口密度の県北部の山村部と、一応、「すべてのタイプ」の地域で暮らしてきたので、それは手に取るようにわかります。
しかし、それでも、「クルマが王様」という現状の交通の仕組みでは、どうしようもないのです。地域の実情に合わせ、システムを改革していかないと持続不可能であると思います。
大阪の堺市は、市民と一体となって、公共交通の機能強化に力を入れています。
・鉄軌道推進室(堺市)
阪堺電車を「公有民営」にして、老朽化する設備を更新し、新線と相互乗り入れする計画を固めたそうです。既存の制度を活用しながら、こういうことをしている自治体もあるのです。堺市は大都市部ですが、しかし阪堺電車は赤字に苦しんできました。だから、赤字路線を抱える地方にも一定の示唆はあると思います。
■疑問3:地方住民のニーズを本当に政治家が反映しているのか?
そもそも、地方住民のニーズを本当に、政治家が反映しているのかも疑問です。地方議会選挙の投票率は非常に低いところも多い。都市部でも4割程度のところもある。一方、農村部では投票率は高いが、必ずしも「政策本位」で選ばれたわけではない。
失礼ながら、議員は「一部のえらい人」の代理人と化していて、庶民にとって、敷居が極めて高いのです。議員たちに庶民のニーズは伝わっているかどうか、極めて疑わしいといわざるを得ません。都市部でも農村部でも、議員たちの既得権益の擁護のために、道路建設の必要性が言われているのでは?との疑いを、現状では招きかねません。
住民と政治家や行政が情報を、きちんと共有すべきです。住民のニーズを政治家が共有する一方、政治家や行政が持っている情報をきちんと住民にも共有し、それを基に議論を進める。その作業をせずに、国と一緒になって、民主党攻撃をしているような感があります。
伝え聞くところでは、小沢一郎さんは、岩手県の税収が各都道府県の中でも、もっとも大きな割合で減ることを役人から聞かされた時、それでも「暫定税率延長反対でかまわない」といわれたそうです。この点に関しては、小沢さんは立派なものです。
ひょっとしたら、利権のほかに、「自民党からにらまれたら、岩国市のように干されるのではないか」という恐怖感があるのかもしれない。しかし、そんなことでよいのでしょうか? 地方同士がきっちり連帯して、不当なものは不当と声を上げることこそ大事でしょう。
■積極的な提案を
私は、何でもかんでも、その時その時の世論に迎合すればよいとは思わない。きちんと情報を共有して議論を深めていく必要がある、と思います。しかし、少なくとも「格差を拡大し、環境にも悪い政府案」をそのまま10年間続けることは、選択肢としてあり得ないと思います。地方はいまこそ、「改革」の旗を掲げるべきだと思います。
たとえば、私が麻生・知事会長なら以下の提案をします。
○「特定財源」は縮小。地方「共有税」や、消費税の地方への割り当てなど、地方が自由に使えるお金は増やす。
○地域レベルでの環境税を導入する。
○地域に合った、環境に優しい交通システムをつくる。
○建設業者が、たとえば地域の特性を生かした食品や福祉などに転業する場合、これを支援する(会社レベルでも、創業当時とはまったく違うものを作っている会社はトヨタを始め、たくさんあります)。
○だから、地方自治体に任せてくれ。
そして、
○1年だけ政府の責任で穴を埋めさせる。昔は何十兆円と補正予算で出していたのだから、数兆円程度の穴であれば、当座埋めるのは可能でしょう。
○その上で、財政や環境、交通など長期ビジョンを議論する。
と提案することでもよい。
いろいろ考え方はありますが、いままで「改革」を求めてきた自治体が、「政府案支持」ではあまりに能がなさすぎます。ネオコン・ネオリベラルの小泉さんに対しては闘っても、「古いリベラル」に見える福田さんには安心してしまう、では済まされません。総理大臣が誰でも、大丈夫なように、「札束でほっぺたをたたかれる」ことのないように、財政制度改革を求め、闘い続けねばなりません。
もちろん、「政府案支持」なら、当面の予算対応、事務処理などは切り抜けられるでしょう。しかし、将来「闘わねばならない」ときに闘えなくなります。はっきりいってしまえば、「古い体制を結局、維持したかったのか?」と思われてしまいます。今回のことは「馬脚を現した」と思われるだけではないか? このままでは、何を言っても、「既得権益維持」のためと思われてしまいます。その結果、地方へのバッシングが進み、住民が苦しむことになります。
将来、地方の住民は、「格差を拡大し、環境も悪化させた」腐った自民党体制を、土壇場で支えた自治体の首長や議員たちを恨みに思うのではないでしょうか?
繰り返します。「政府案支持」では「地方が自由に使える金」は増えません。先進国に学んだ環境対策もできません。それに加えて、残るのは「庶民の家計への負担」です。
こんなことで、住民に顔向けできますか? いまのままでは疑問です。どうか知事さん市町村長さん、議員さん、「目先」にとらわれ、歴史に汚点を残さないでください。
(さとうしゅういち)
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