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http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20080121ddm003070073000c.html
ガソリン値下げは大衆迎合か=専門編集委員・山田孝男
「ガソリン値下げはテーマ設定が小さ過ぎる」と官房長官は言う。地球温暖化防止が叫ばれる中、「ガソリン税を下げました、もっとガソリン使いましょう、でいいのか」と外相も不満だ。民主党の攻勢を「選挙目当て、大衆迎合」と侮る気分が伝わってくるが、情勢認識としては甘いのではないか。先週、自民、民主両党の大会をのぞいた私の印象である。
どちらの党大会もニュースで見れば同じように見えるが、実際に行ってみると、規模も雰囲気もまるで違う。
17日、品川に近い「グランドプリンスホテル新高輪」で開かれた自民党の方は、人があふれていた。10分前に会場に着いた私は記者席にたどりつけぬまま最後部で取材した。
金属探知機ゲートが5基。生オーケストラが陣取り、津軽三味線のアトラクションあり、さすが政権党のにぎわいである。2時間のセレモニーを通じてガソリンのガの字も出なかった。
その前日、国際会議場「パシフィコ横浜」で開かれた民主党の方は空席が目立った。特に午前中の討論はガラガラで、小沢一郎はいない。午後のセレモニーでは財務委員長が「カネがない」とあいさつする率直さで野党の悲哀もにじんだが、要所要所でメディア向けに「ガソリン値下げ」を発信し続け、世論形成で先手を取った。
揮発油税などの税率を本来の2倍(暫定税率)に設定した特別措置法が3月末で切れる。延長しなければ、ガソリンは1リットルあたり25円下がる。与野党逆転で値下げへ。この戦略の仕掛け人はもちろん小沢。知恵袋が党最高顧問・税制調査会長の藤井裕久(75)である。
藤井は大蔵官僚出身の古参議員で、細川・羽田内閣の蔵相を務めた。石油危機によるマイナス成長で税収が落ち込んだ1974年、田中内閣の官房長官秘書官として、いま話題の暫定税率の導入にかかわった。
小沢戦略のミソは、ガソリン値下げを「34年にもわたる暫定税率」や「道路特定財源(自動車道路関係諸税を道路の維持整備費に回す仕組み)見直し」という、根本の議論に結びつけるところにある。小泉純一郎のお株を奪う手法で、暫定税率10年延長をあっさり決めた与党税制大綱(昨年12月)の惰性を際立たせようという作戦だ。
「何が何でも道路をつくれと言うのは結局、首長とその選挙を支える建設業者。地方でも一般の人たちは『5年先の道路よりガソリン値下げ』でしょう。自民党は民意を吸い上げられなくなってきてるんじゃないかという気がします」
と語るのは前鳥取県知事・片山善博(慶応大教授)。福田内閣は改革政権なのか、停滞政権なのか。世間に広がる疑問と小沢戦略が反応し、微妙に揺れている段階ではないか。
17日の定例記者会見でガソリン値下げに反論を試みた官房長官は、税収減、地方財政に悪影響、地球温暖化に逆行−−と並べ立てたが、各省の言い分を横につなぎ合わせただけの散漫な印象で、民主党の剣先を砕くまでの集中を欠く。
自民党は世間の空気が読めない。実は民主党も読めない。小沢だけ自信満々だ。ただ、小沢には孤独の影があり、民主党という組織にどっしりと根を下ろしている感じがない。
16日の記者会見は、国会の新テロ法案採決欠席を正当化する牽強(けんきょう)付会の言い訳が話題だった。戦略だけでなく、小沢のさまざまな逸話が煮詰まってゆく年になりそうだ。(敬称略)=毎週月曜日掲載
毎日新聞 2008年1月21日 東京朝刊
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