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NHKの新会長に福地茂雄・アサヒビール相談役が決定した。この人事は、事実上古森重隆経営委員長の強い意向によって押し切られた。古森氏は安倍晋三前首相が送り込んだ人物だけに、新会長が政治色を発揮するかどうか、今後のNHKの行方が心配である。
正直言えば、海老沢元会長の時代には、NHKの番組を見る気がしなかった。たとえば、イラクでクラスター爆弾の不発弾にさわって手を失う子供が大勢いるというニュースを報じた時、爆弾にわざわざ鮮やかな色を塗って投下した張本人は誰か、一切触れていなかった。こんなものはジャーナリズムではなかった。
橋本現会長の時代に入って、ようやく本来のNHKの面目を取り戻しつつある。新聞協会賞も受賞した「NHKスペシャル ワーキングプア」を見た時、私は受信料を払っていて本当によかったと思った。NHKにしか作れない番組があるのだ。それは我々が受信料を払っているから可能になる。
古森、福地ラインは経営の観点からNHKの改革を進めたいと報じられている。ちょっと待ったといいたい。NHKの職員は民放よりもはるかに安い給料で働いている。NHKの使命は経費を節約してちゃちな番組を作ることではない。商業主義の民放では作れないような報道を行うことこそ、公共的使命である。
市場主義の歪みを抉るような報道番組を経済界出身の会長の下で自由に作れるだろうか。我々視聴者が声を上げなければならない。(東京新聞12月31日)
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