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【赤木智弘の眼光紙背】第15回:その数秒が問題だ
2008年01月10日11時00分
みなさんは、昨年の10月から、テレビやラジオによる「緊急地震速報」の一般提供が始まっていることをご存じだろうか?
緊急地震速報とは、地震発生直後に発生した初期微動(P波)を観測機で計測し、その後に起こる主要動(S波)がある一定以上の揺れであると予測された場合に、地震の発生を素早く知らせるシステムである。
いわゆる「地震予知」とは違い、実際に発生した地震の初期微動を測定するという特性から、緊急地震速報の発表から実際に地震がくるまでの間は、わずか数秒しかなく、また震源に近い地域ほど、猶予は少なくなる。
だが、わずか数秒とはいえ、公共の施設などではエレベーターの最寄り階停止や、電車の緊急停止。また、水門の閉鎖などといった、被害を最小限にとどめるための対策をとることができるし、家庭では机の下に隠れたり、ドアや窓を開けて外までの通路を確保するなど、わずかな時間でもできることはいくつかある。
いつか緊急地震速報を見聞きするときのために、
日頃からの防災シミュレーションが大切である。
このように、地震大国である日本において緊急地震速報は、我々の安全を確保するために、非常に大切な情報ではあるのはいうまでもないのだが、私は「テレビによる緊急地震速報の提供」に対して、少々懸念がある。
地元の大型電器店に行ったときのことなのだが、電器店では2011年のアナログ放送廃止に向けて、地上波デジタル(以下、地デジ)チューナー内蔵テレビを大々的に売り出していた。
そこで「地デジはアナログよりも映りがキレイ」と、アナログと地デジ、2台のテレビが並べて見比べられるようになっていた。
たしかに、地デジはキレイだったのだが、私が気になったのは、地デジ側の「遅延」である。話には聞いていたが2つ並べると、地デジ側の遅延がハッキリと分かる。
アナログでは、放送内容をそのまま電波に乗せていたのに対し、地デジは、放送局側で放送内容を送信する際に、受信機側で受け取れる形に加工(エンコード)して送信し、受信機、すなわち家庭のテレビでそのデータを映像に戻す(デコード)必要があり、この処理のために実際の放送から1〜3秒程度の遅れが発生する。特に、処理能力の劣る携帯電話でのワンセグ受信では、それ以上の遅れが発生してしまう。
もちろん、数秒の遅れなど平時の放送では大した問題にはならない。せいぜい、時報の放送ができないのと、年末特番のカウントダウンが数秒遅れる程度のことである。
しかし、これが緊急地震速報となると話は別だ。ただでさえ数秒の猶予しかない速報で、1〜3秒の遅れは致命的な結果につながる可能性がある。
すでに総務省は、2011年7月(あと3年しかない!)でのアナログ放送の停波を決定している。
しかし、これは国民の理解をほとんど求めないままに決定されおり、ここで述べた放送の遅延の他にも、実質的に国民に対する機器買い換えの強要になってしまっていることや、ユーザー無視のコピーコントロール。他にも一部地域でのアナアナ変換問題など、数多くの問題を抱えている。
緊急地震速報は我々にとって重要な情報であり、テレビは我々にとって重要な情報源である。しかし、地デジのシステム的欠陥によって、この重要な2つが最良の組み合わせではなくなってしまう。これは私たちの安全を考える上で、重大な問題ではないのだろうか。
http://news.livedoor.com/article/detail/3456920/
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