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http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080108ddm004070121000c.html
新聞時評:新聞の役割は「現在」を切り取ること=ジャーナリスト・上杉隆
12月12日の朝刊で、久しぶりに見事な記事に出合った。日本の新聞ではめったにお目にかかれない政治報道の見本のようなものである。久しく「切り抜き」をやめていた筆者だが、改めて棚からスクラップブックを引っ張り出してきてしまったほどだ。
<「小沢さんが副総理か」「そういう感じもある」>
<8月10日 渡辺恒雄氏「大連立しかない」−−ゴルフ場で綿貫氏を説得>
<9月20日 加藤氏「for whatが大事です」/岡田氏「悪魔のささやきですね」>
◇検証・大連立構想
2ページ強にわたって掲載された<検証・大連立構想>は、見出しから引きつけられた。決して短くはない記事だが、あっという間に読み切れた。あたかも政治ドラマを読んでいるようで面白い。
この記事によって、謎に包まれたまま放置されてきた多くの読者も、大連立騒動の舞台裏を垣間見ることができ、さぞかし納得のいったことだろう。
実は筆者も同様の検証記事を「週刊文春」に寄せていた。内容には重なっている部分もあれば、そうでないところもある。正確性においては、今回の毎日の記事にはとうていかなわないだろう。
だが、ひとつだけ大きな違いがある。それは時期だ。
「週刊文春」の拙稿は、「大連立騒動」の真っただ中、つまりリアルタイムでの取材、執筆を余儀なくされ、直後の掲載に至っている。自らの仕事を誇っているわけではない。「現在」を切り取る作業は、ジャーナリズムに求められる当然の仕事にすぎない。その点、毎日の記事はあまりに「遅い」。
案の定、「開かれた新聞」委員会座談会(1月3日朝刊)でも、委員からは同様の意見が相次いだようだ。
田島泰彦委員 検証の記事はこの問題のかなり具体的で詳細なリポートで、丁寧でした。注文としては、1カ月以上たってからではなく、問題が起きた時、余韻冷めやらぬ時期に読みたかった▼吉永みち子委員 検証は読み物としては大変面白かったし、何が起きたか冷静に振り返ることができました。ただ、欲をいえば同時進行的なドキュメントもほしかったです−−という具合だ。
◇「ねじれ現象」
週刊誌の速報性を誇るつもりはない。ネットなどのメディアが発達する現在、そもそも雑誌にはそういった役割は求められていない。本来ならば、それは新聞の役割である。だが現状は、即時性を雑誌が担い、逆に検証を新聞が行っている。ジャーナリズムの「ねじれ現象」である。
せっかくの素晴らしい記事だが、慎重になるあまり時機を逸した気がしてならない。完ぺきさを求めるあまり、読者が真に求めていることを取り違えていないだろうか。現在進行中の事柄を報じるのは断じて新聞の役割だと思う。無謬(むびゅう)主義は新聞の独りよがりに過ぎない。
「現在」を切り取る勇気、それだけがこの検証記事には足りなかったのではないか。
◇
この論評は東京本社発行の紙面をもとにしました。
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■人物略歴
◇うえすぎ・たかし
1968年、福岡県生まれ。衆院議員秘書などを経てニューヨーク・タイムズ東京支局。2002年独立。著書に「小泉の勝利 メディアの敗北」「官邸崩壊」など。
毎日新聞 2008年1月8日 東京朝刊
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http://www.asyura2.com/07/senkyo45/msg/120.html
■読む政治:検証・大連立構想(その1) ねじれが契機、第1幕
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