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2007年12月29日 (土)
民意からかけ離れたNHK会長人事(1)
政府に歓迎され、総務省にベストと称賛されたNHK会長選び
NHK経営委員会は12月25日に開かれた会合で、賛成10名、反対2名の議決で次期NHK会長にアサヒビール相談役の福地茂雄氏を選出した。今回の会長人事は途中で2名の委員が古森経営委員長の強引な委員会運営に抗議の記者会見を行うなど、これまでとは様変わりの経過をたどった。
問題は「様変わり」の中身である。それを探る判断材料になるのは、福地氏で決着した今回のNHK会長人事を誰が歓迎し、誰が疑問を呈しているかである。次の節で紹介するように、福地氏の名前が表面化した段階から、多くの全国紙、地方紙は古森氏の主導で進められた選考に強い疑問を投げかけた。これと対照的に、福地氏に会長が決定したのを受けて、総務省関係者は次のように反応したと報道された。
「総務省内には、ほっとした空気が広がった。総務相経験者は『来年任期が切れる日銀総裁の人事よりよっぽど国民にとって関心事だ。』ある幹部は『考えられる中でベストの結果。混乱して年越ししても、何もよいことはない。2票は仕方ないにしても、10対2で決まったのもよかった。』」(『朝日新聞』2007年12月26日)
また、町田官房長官は12月26日午前の記者会見で次のように述べたと報道されている。
「残念ながら今の執行部は国民の期待に応える実績を上げてこなかったのではないか。思い切った政策転換をしてもらうことが大切だ。今回の判断は評価していい。」(YOMIURI ONLINE 2007年12月26日、12時41分)
それにしてもNHKをはじめとする公共メディアは時の政治と緊張関係を保ち、権力の行使を監視する番人としての使命を負っている。その公共放送のトップを選ぶ人事の顛末を監視される側の政府、行政当局に称賛されるという奇妙な構図ーーーこれこそ、今回のNHK会長人事の本質を如実に物語っている。まさに「問うに落ちず、語るに落ちる」である。
多数の全国紙、地方紙が危惧・批判を表明
(1)両論併記の社説
では、マスコミは今回のNHK会長人事の顛末をどのように評価したか。それを確かめるために、ひとまず全国紙、地方紙の社説を調べてみた。地方紙のすべてを確かめたわけではないが、私が調べた限りでは今回の会長人事の経過、結果を上記の町田官房長官や総務省関係者のように称賛した社説は皆無だった。
その中には、福地氏への期待と懸念を両論併記する論調もあった。『読売新聞』の12月26日付の社説はその典型例である。
「会長の外部起用自体は悪くない。過去には池田〔芳蔵〕氏のほかにも、新聞社や官僚OBも会長に就いている。報道の現場を知らないことを懸念する向きもあるが、技術畑の橋本会長に対しても同じような見方があった。」
「しかし、経営委員会と執行部のトップがともに効率ばかりを追求すれば、良質で公正な番組づくりに制約が加わることになりかねない。NHKは国民の受信料で運営されている公共放送だ。それを常に念頭に置いて経営にあたる必要がある。」
(2)財界に偏重した選考に批判を向けた社説
しかし、社説の中で顕著なのは、古森氏の主導で進められた今回のNHK会長の人選が経済界に偏重した点を厳しく批判した社説が多数見受けられたという点である。その中からいくつかの例を摘記しておく。
「NHK会長 自主自律の人を透明に
報道機関であるNHKの会長に財界代表はふさわしくない。政治との距離が近すぎる人による強引な選考も視聴者の期待に反する。放送の自主自律を貫ける人を透明な手続きで選ぶべきである。・・・・・・・・
福地氏の適否はともかく、古森委員長主導の新会長選びは財界人中心で経営の視点を偏重している。古森氏はNHK会長も企業経営者も、求められる資質は同じであるかのような発言をしているが、会長は決して会社の経営者ではない。・・・・・・・
経営面に偏った舵(かじ)取りは新生プランを空文化し、放送文化を圧殺してしまうだろう。」(『中日新聞』2007年12月22日)
「NHK会長 疑問にどう答える
“福地NHK”が進む方向を今の時点で見通すのは難しいとしても、経営委員長と会長の2人とも財界出身でバランスが取れるか、心配になる。NHKはそうでなくても政治からの圧力にさらされている。報道機関として筋を通すために、言論界や報道界、文化人から選ぶ方法もあったのではないか。」(『信濃毎日新聞』2007年12月26日)
「NHK新会長 改革は視聴者の目線で
唐突であり、12人の委員のうち2人が『人選のプロセスが不透明』と会見を開いたほどだった。しかもふたを開けてみたら『お友達』とやゆする声が出るほど近い関係の人である。これで、NHK本体と、それを監視する経営委との緊張関係が十分保たれるのだろうか。
・・・・・・ジャーナリズムとほとんど無縁の人であるのも気掛かりだ。NHKはこれまでも政治との距離が議論を呼んできた。だからこそ、いくら政治からの風圧を受けようと、それに屈することなく現場を守る骨太の気慨がトップには求められる。これまで主に営業の畑を歩いてきた財界人に、それが期待できるだろうか。」(『中国新聞』2007年12月27日)
「NHK会長 視聴者忘れた混乱では
二委員によると、〔古森〕委員長は自分の推薦する候補を委員会で紹介する考えを示し、『そこで否定されると本人のメンツがつぶれる』と語ったという。事実なら『自分の推薦候補を黙って承認せよ』と迫ったに等しい。・・・・・・
NHKは報道機関である。政治家との距離を疑問視されてはいても、政治介入は断じて許されない。加えて、経済効率や経営力学だけで公共放送を運営できるとは思えない。」(『北海道新聞』2007年12月23日)
「NHK新会長 経営委員会の見識を疑う
私たちはこれまで社説で、『NHK会長は何よりも高いジャーナリズム精神の持ち主でなくてはならない』と述べ、財界人では務まらない、と主張してきた。・・・・・・福地氏は放送界にもジャーナリズムにも無縁だ。報道機関のトップとして適任とは思えない。」(『朝日新聞』2007年12月26日)
「NHK新会長 政治的中立性の確保が正念場だ
古森氏は安部晋三前首相に近く、政権の意向を体現する形で執行部と対峙(たいじ)してきた。経営委の権限も放送法改正で強化された。その肝いりで起用された福地氏が政治的圧力をはねつけられるのか。執行部と監督機関のトップに気心の知れた財界人同士が座るのもいびつに映る。」(『愛媛新聞』2007年12月27日)
「公共放送の使命を肝に
最高意思決定機関であり経営監視役である経営委員会と執行機関、双方のトップが友人関係では、適度な緊張関係を保てまい。古森氏が安倍晋三・前首相の意向で送りこまれたことを重ねれば、NHKと政治との関係にも不安が一層募る。
企業経営の実績はあっても放送にもジャーナリズムにも無縁な福地氏が会長に適任とは思えない。決定に賛同した経営委員は、公共放送を企業人に任せることに疑問がなかったのだろうか。」(『東京新聞』2007年12月27日)
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