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http://www7a.biglobe.ne.jp/~byakko/miru_0702_boueicho.htm
「防衛記者会のコンセプトは何?」
「えっ?」
「コンセプトが分からないと書けない」
11月30日、柏木白光さんは東京新宿区にある防衛庁にいた。私(東京新聞記者・半田滋)の依頼を受け、一枚の看板を書くためだ。
いざ作業に入る直前になり、白光さんが求めたのは、看板に書く文字、すなわち「防衛記者会」のコンセプトを示せという難問だった。私はしばらく考え、こう答えた。
「防衛記者会は報道各社が集まった集合体です。そういう意味では『人』が大事です。しかし、われわれジャーナリストは新聞やテレビを通じて真実を伝える責務を負っている。その意味ではコンセプトは『まこと』です」
「それは誠のこと?それとも真実の真のこと?」
「真実の真、そして真理の真です。戦争をしてはいけいない。人は殺し合っては行けないというのは真理だと思う。それを伝えるのがわれわれの責務です」
「だけど戦前のマスコミは戦争をあおったじゃないの」
「確かに。しかし、戦前、戦中を反省して今のマスコミがある」
「それなら真実とはいうのは、時代時代で変わるものなの?50年後、100年後の後輩から、あなたたちが間違っていたといわれるかも知れない」
「いわれるかも知れません。しかし、戦争をしてはいけない。人間はみんな幸せに生きたいと願っている。これは地球上に住む人類の普遍の原理です。宇宙の真理だと思う。変わることはない」
「戦前に戦争に反対したマスコミ人はいるの?」
「います。主義主張を曲げず、会社をやめた人や、捕らえられた人もいた」
「分かった」
白光さんは、立ち上がった。
× × × × ×
防衛記者会は防衛庁A棟10階にある。加盟しているのは21社45人。防衛庁は自衛隊24万人を管理し、日本の安全保障を担当する官庁だ。記者会は防衛庁が誕生する前年の昭和28年に発足し、以来50余年にわたって防衛庁・自衛隊に関する情報を第一線から伝えている。奇しくもこの日は、防衛庁の省昇格法案が衆院を通過、いろいろな意味で“戦後”が動いた一日であった。
10階にある記者会見場。記者や広報担当者約20人が息を殺して、白光さんを見つめていた。交代で墨を磨り、和気あいあいと記念写真を撮っていた時とはまるで違うピンとして空気が張りつめる。
視線の先の白光さんは和服姿で草履を脱ぎ、白足袋で仁王立ちしている。紫色の毛氈に乗せられた新聞紙を縦に二つ折にした大きさの看板と向き合い、およそ5分。横書きで一気に筆を滑らせる。「防衛記」までなめらかに書かれた。「者」に移る。一瞬の間を置いた白光さんは、「者」の下の「日」を「○」で表現した。「会」まで進んだのち、筆を振り上げ、勢いよく「○」の真ん中に点を打った。
拍手が沸く。長い息ごらえのような緊張が解ける。白光さんの表情が緩んだ。看板横に署名したあと、「表に雅印を押してもいい?」と子供がおねだりするように聞いた。「師である父親から看板は作品ではないから表に雅印を押してはいけないと言われていたけど、押してもいい?」。だれが反対するだろう。防衛記者会の文字の右下に赤く「白光」と押された。
みんなが看板を見つめる。「防衛記」と「会」は隷書、「者」は隷書と篆書の中間の文字という。だから、「者」の文字に一番の特徴がある。よくみると最初に告げたコンセプトである「人」という文字がある。それにしても「者」の「日」が、なぜ、○に点なのか。
「○は、あなたが真理があると言った地球であり、宇宙を表現している。真ん中の点は真実を見つめるあなたたちの目です」
快心の作をいただいた。(2007年1月)
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