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□有権者を惑わす「世論調査」の罪つくり [リベラルタイム]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070803-01-1201.html
2007年8月3日
有権者を惑わす「世論調査」の罪つくり
今回の参院選でもマスコミに踊った衝撃的な見出し。
しかし、選挙報道は信用してよいものなのか。その「裏側」とは…
それを新聞の広告や電車の中吊り広告で見た人は驚いたに違いない。週刊新潮(新潮社)七月五日号の特集には、こんな見出しが躍っていた。
「5勝24敗! 1人区惨敗 『自民党調査』の衝撃」
確かに衝撃である。本誌発売時点では明らかになっている参院選の帰すうを決めるのは全国二十九の一人区であるといわれてきた。一人区は農村部が多く、かつては自民党の金城湯池。民主党の小沢一郎代表がその牙城を崩そうと、せっせと農協
(全国農業協同組合連合会)等を回ってきたのはそのためである。
それが「自民五勝」の有り様では、自民党は参院で与党が過半数確保するのに必要な「五十議席超」はおろか、四十議席も割り込み、惨敗は確実……というわけである。
確かに自民党本部が定期的に行っている世論調査の数字を入手したようだが、ところが記事をよくよく読むと、実際には二十九ある一人区のうち「当選確実と太鼓判を押せる候補が五人しかいなかった」というもの。それ以外は当落不明なグレーゾーンというのが正確なところだ。
もちろん、選挙の一カ月前の報道である。実際の選挙結果が結果的に当たる可能性もあるし、外れる場合もある。このため誤報とはいえないだろう。だが、やはり読者を引き付けるために相当、無理をした見出しといわざるを得ないのではなかろうか。
必ずしも当たらない
週刊誌だけではない。
最近、新聞は従来以上に世論調査報道に力を入れている。全国紙の政治部記者はいう。
「社説でどう高邁なことを書こうと、その影響力はテレビのワイドショーの司会者やコメンテーターにかなわない。そんな中で、世論調査の『数字』は極めてわかりやすい武器になる。最近は民放も調査を行っているが、新聞には長年の蓄積もあり、得意分野にしていこうという傾向がある」
実際、年金記録漏れ問題で安倍晋三首相が大慌てし始めたのは五月末の毎日新聞と日本経済新聞の世論調査で、安倍内閣の支持率が急落してからだった。「数字」という厳然とした事実が政治を動かしているのは確かだ。
朝日新聞等は、「有権者意識のトレンドを探る」を目的に、毎週調査を行っているほどだ。そして新聞各社は今回も、投開票日の一週間前の週末に選挙区ごとの大規模な調査を行い、情勢分析を大々的に報じた。
しかし、この調査も「必ずしも当たらない」という点を指摘しておかなくてはならない。
例えば、自民党が四十四議席しか取れずに惨敗し、時の橋本龍太郎首相が退陣した一九九八年の参院選だ。
この時、一週間前の新聞各社の調査では自民党は堅調で五十議席以上確保するのではという予測が大半だった。ところがふたを開ければ、リクルート事件や消費税導入等で自民党が逆風にさらされた八九年参院選の三十六議席に次ぐ大惨敗となった。
曲がり角の「世論調査」
ある新聞の選挙報道担当者は、こういっている。
「九八年参院選の時は、各社の世論調査後、減税をどうするか、橋本氏の発言が大きくぶれたことが、調査後の『世論の大変化』の要因だといわれた。でも、なぜ調査が外れたか、各社ともきちんと検証はできていないのではないか」
一方、長く選挙に携わってきた自民党の選挙対策委員会幹部はこういう。
「最近は無党派が増える一方だ。無党派層がどこに投票するか判断するのは、投票日の三、四日前。その時、世の中がどうなっているかで決まる」
それを承知で、「世論調査報道は政界への影響力があり、読者にもよく読まれる」のを理由に、新聞各社は世論調査報道に力を入れているのだろう。
新聞各社がもっと頭を痛めていることがある。
かつて世論調査は住民票から対象者を抽出し、事前にはがきを出して訪問し、調査対象者と対面して聞く――という方法を取っていた。だが、最近は電話調査が主流である。自宅に訪問されるのを嫌がる人が増え、回答拒否が多くなってきたこと、電話の方が経費が安上がりにすむこと等が理由とされている。
電話調査は、コンピュータで無作為に選んだ加入電話番号に電話して聞くという方法だ。対象者は年代や性別が偏らないように、バランスの取れた数を確保するという。だが、現在は特に二十歳代は加入電話は持たず、携帯電話のみという人がほとんどだ。
今後、その傾向はますます強まるだろう。果たしてそうした世代の意向を確実に調査に反映できるか。新聞各社の課題になっているという。
「出口調査」に疑惑
選挙報道で、もう一つ「罪つくり」といわれているのは、テレビ、新聞がこぞって行っている投票日当日の出口調査である。この数年は、日本放送協会(NHK)も含めて、テレビ各社は投票の締め切りが過ぎた瞬間、出口調査結果をにぎにぎしく報道し、開票が始まる前から最終結果を予測してしまう。
しかし、投票所の前で投票を終えた人に「誰に投票したか」を聞く、この出口調査もきちんと調査手法が確立されているわけでなく、実際の結果との誤差は大きいことも知っておく必要があるだろう。
例えば二〇〇三年十一月の衆院選。自民党が「小泉純一郎首相・安倍晋三幹事長」という布陣で臨んだ選挙だ。
午後八時過ぎ、テレビが報じた出口調査結果は、「自民党二百二十議席、民主党百九十三議席」等自民大敗を予測するものだった。ところが実際の結果は「自民党二百三十七議席、民主党百七十七議席」。予測とはかなりのかい離があった。
「罪つくり」というのは、予測が外れたからだけではない。いったん「大敗」を予測されながら、実際にはもっと多かった場合、自民党は安堵し、何となく自民党が勝利したような空気になってしまうことである。
〇三年衆院選も冷静に見れば自民党の伸び悩みだ。しかし、小泉氏や安倍氏らの責任を問う声が自民党内でまったく出なかったのは、この「出口調査ショック」が、かえって緩衝材になった点は否めない。
さらに出口調査には大きな問題がある。本来あってはならないことだが、途中集計が開票前から、担当記者らを通じて、それぞれの党に漏れている疑いがあることだ。
前述した一九九八年参院選では、開票前の夕方から当時健在だった竹下登元首相の自宅に旧竹下派幹部が集まり、橋本氏の退陣と後継に小渕恵三氏を推すことを早々と決めてしまった。「退陣やむなし」と判断した根拠は、出口調査しかあり得ないのではないだろうか。政治を動かす材料にも使われるということである。
リベラルタイム9月号特集「日本に蔓延る『嘘』の研究」
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