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温首相演説に見る日中関係の変化
岡田 克敏
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070413/10148
国会演説の翌4月13日、関西に移動し、大学生の前で語る温家宝首相(ロイター) 温家宝・中国首相が4月12日、国会で演説した。「日本政府と日本の指導者は、何回も歴史問題について態度を表明し、侵略を公に認め、そして被害国に対して深い反省とおわびを表明した」という事実に触れ、「これを中国政府と人民は積極的に評価している」と表明した。
さらに、「中国の改革開放と近代化建設は、日本政府と国民からに支持と支援を受けた。中国人民はいつまでも忘れない」と謝意を表した。
(カギカッコ内、日本経済新聞4月12日夕刊、温首相国会演説の要旨から)
小泉政権時代とは様変わりである。中国側の対日方針の転換は定着した印象が強い。昨年の安部晋三氏の首相就任を契機として、日中の対立は急速に解消に向かったかに見える。しかし、もともと両国との間には深刻な対立を招くほどの利害の衝突はなく、対立が互いの利益にならないことは広く認識されていたと思われる。対立がそもそも不自然だった。
対立の構図は、日本のいわゆる左派勢力の一部が、南京大虐殺や従軍慰安婦問題などの歴史問題を蒸し返して、日本側の「借り」を誇張気味に暴露し、それが中韓両政府に利用された、との見方が有力である。中韓両政府は日本との対立を政権の安定という国内事情に利用したというわけである。
左派勢力が蒸し返す歴史問題や「自虐史観」(いわゆる右派による呼称)、それに呼応した中韓の反応は、日本国内に大きな反作用をもたらした。
太平洋戦争(右派は大東亜戦争と呼ぶ)は侵略戦争ではなく、自存自衛のため、あるいはアジア諸国を開放するための戦争だ、と見るような一面的な見解が目立つようになったのだ。同様の史観に基づく小林よしのり氏の戦争漫画は若者に大量に売れた。また対米戦争をしていなかったなら日本は植民地になっていたとような主張(たとえば上坂冬子氏)までも現れ、右派系雑誌も販売数を伸ばした。藤原正彦氏の『国家の品格』という“時代錯誤調”の本がベストセラーになったのもこの流れに乗ったためとの見方がある。
一部のメディアは「主義主張の対立」を食いものにして生きている。対立が激化するほど潤う構造がある。販売数増が見込めるのであれば、対立を煽ることもいとわないのが彼らの属性だ。
すなわち、いわゆる左派勢力が古傷を掘り返し→それに中韓が国内事情から乗っかり→その結果、左派は外国の利益を擁護する勢力と見られるようになり→それが国内のナショナリズム刺激した。その流れに乗って一部メディアがナショナリズムを煽り、右派勢力が拡大したという解釈が可能だ。
要するに、左派勢力の“策動”が「日本の右傾化」にもっとも貢献したという皮肉な結果になった。どのような勢力であれ、対立関係にある外国と結託している、と見られれば、ナショナリズムを強く刺激する。中国は自らの行動が日本の右傾化を招いたと気づき、それが歴史問題を引っ込めた理由のひとつになったのだと思う。隣国のナショナリズムの高揚を歓迎する国はあまりない。
結局のところ、右派によって戦前の歴史観が誇張や歪曲を受けた形で、国民の一部に広まった。国内の左右の対立も一部ではより先鋭化した観がある。それがこの騒動の残したものである。将来、国内を2分するような大きな対立につながらないことを願う。
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