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□NHKを「著作権特区」に [池田信夫 blog]
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/30e2f511cd480851495b4809fee3eb5a
NHKを「著作権特区」に
2007-05-16 / Media
NHKが、視聴者に契約を強制しようとしている。受信料支払いの義務化が「2割値下げ」とともに葬られてしまったため、なりふり構わず取り立ての強化をはかっているようだ。しかし受信契約を強制する放送法の規定は、民法の「契約自由の原則」に反するのではないかという批判は以前からある。こんなことをしても視聴者の反発を強め、徴収コストがかかるだけで、増収になるとは思えない。
他方、NHKの手本であるBBCは、YouTubeに3つのチャンネルを持って番組を提供し始めた。彼らは、以前からCreative Commons Licenseによるアーカイブの公開を進めており、今回の動きは「BBCはもはや放送局ではない」というトンプソン会長のビジョンに沿うものだ。この背景には、「肥大化」への批判や民営化の圧力が強まる中で、BBCが「準国営」の経営形態を続けるための戦略がある。
BBCやNHKのように税金に準じる形で料金をとっているメリットは、個別の番組について採算を考える必要がないことだ。したがって、一つのコンテンツをインフラを問わず多くの媒体で供給するには向いているともいえる。もともと受信料のように国民全員から徴収した料金でつくった番組は、国民全体の資産であり、国民に無償で還元するのが当然だ。著作権は、私的な情報生産のインセンティブのために設定されるものであって、公共放送のように収入が保障されている組織には必要ないのである。
ただBBCの場合にも、公開されているのはニュースや自然番組など、BBC以外の著作権者のからまないものがほとんどだ。こうした問題を打開するには、NHKを「著作権特区」にして、アーカイブをすべてウェブで公開することを義務づけ、その再利用を自由にするとともに、作家などへの著作権料は包括ライセンスで支払えるようにする特例法をつくればよい。
実は、こういう前例はすでにある。イタリア放送協会(RAI)は、「RAIクリック」というウェブベースのオンデマンドTVサービスで、過去のすべての番組を公開する方針だ。著作権の処理については、権利者団体と包括契約を結び、今のところは「試行期間」ということで、著作権料を支払わないでサービスを行なっている。これには財産権の保護がいい加減だという「イタリア的」な特殊事情もあるが、こうしたサービスで収入が上がれば、最終的には権利者にも配分される。再利用を妨害しても、1円の利益にもならない。
NHKをパイロット・ケースにして、包括ライセンスによって利益をクリエイターに還元する成功モデルができれば、現在の禁止的に煩雑なライセンスを簡素化する動きも出てくるかもしれない。NHKの膨大な映像資産が日本のコンテンツ産業の共有資産になれば、その生産性も飛躍的に上がるだろう。こうした大きな国民経済的な利益が生まれるなら、アーカイブの維持費として受信料を徴収することも受け入れれられるのではないか。
私は、NHKは民営化して自由に番組をつくることが最善だと思うが、それができないのなら、せめてBBCのように公共放送である理由を世にアピールする戦略をとるべきだ。それもしないで、ただ取り立てをきびしくしても、視聴者が離れるだけである。
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