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(回答先: なぜインターネットはナショナリズムを強化するのか [池田信夫 blog] 投稿者 white 日時 2007 年 4 月 13 日 00:04:32)
□2ちゃんねるに見る「古い日本人」の自画像 [池田信夫の一刀両断]
http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/pcjapan29.html
池田信夫の一刀両断 第29回(PC Japan 2007年1月号)
2ちゃんねるに見る「古い日本人」の自画像
日本最大の匿名掲示板「2ちゃんねる」(http://www.2ch.net/)の管理人である西村博之氏に対して,サーバやドメインを含む資産の仮差し押さえと第三者破産を求める申し立てが,東京地方裁判所に行われた。請求を行ったのは,2ちゃんねるで名誉を毀損されたとして,掲示板に書き込んだ人物についての情報開示を求めた東京都内の男性会社員。西村氏は訴訟には一度も出廷せず敗訴したが,裁判所の決定を無視しているため,1日5万円の制裁金を課せられ,その総額は500万円を超えているという。
実際に差し押さえや破産が行われるかどうかは,このコラムを書いている段階では分からない。また仮に差し押さえが認められたとしても,サーバなど西村氏の資産は海外に移転されており,ドメインの登録先もアメリカなので,実際に差し押さえるのはかなり難しいというのが法律家の見方である。
●日本のインターネットに蔓延する匿名の悪影響
2ちゃんねるは,西村氏が個人で運営する特異な掲示板である。その実態はよく分からないが,60台のサーバで1日2億ページビュー以上のアクセスを処理していると言われている。最大の特徴は,普通の掲示板ではハンドルネームでやり取りが行われるのに対して,2ちゃんねるでは「名無し」という匿名で書き込みができ,自分で自分にコメントする「自作自演」もできることだ。このため,発言内容にまったく責任が問われないので,個人攻撃,民族差別,犯罪予告などの温床となってきた。
たびたび警察の捜査も入り,現在では完全匿名ではなく,発言者のIPアドレスが暗号化して記録され,刑事事件になるものについては警察に通報される。加害者の分からない名誉毀損事件については西村氏を被告とする民事訴訟も行われ,ほとんどの事件で被告が敗訴しているが,西村氏は判決を無視し,損害賠償を支払っていない。
今回の事件について,2ちゃんねるでは「祭り」になって盛り上がっているが,外の世界の反応は冷たい。その内容は「表現の自由を守れ」などと言えるようなレベルではないからだ。「電車男」のような新しいジャンルの作品を生み出したこともあるし,専門的な「板」ではまじめに議論が行われていることもあるが,書き込みの圧倒的多数は匿名に隠れた悪口だ。
こうした匿名の書き込みによる悪影響は日本のインターネット全体に広がり,百科事典サイトの「ウィキペディア日本語版」(http://ja.wikipedia.org/)なども中傷の温床になっている。ブログも,アメリカでは8割が実名(あるいは実名が同定可能)であるのに対して,日本では9割が匿名だ。
特に問題なのは,法律を無視している西村氏の対応だ。インターネットの自治の原則を守るには,法律を守ることが最低限のルールである。それを無視しているとインターネットが「無法地帯」だという非難に根拠を与え,規制が強化される原因にもなりかねない。ライブドアやWinnyには擁護論が高まったが,2ちゃんねるが閉鎖されても同情する人はほとんどいないだろう。
●2ちゃんねるに見る日本人像
ただ2ちゃんねるは,表向きの建て前を脱ぎ捨てた「裸の日本人」を見るうえでは絶好の材料ともいえる。日本でこれほど匿名志向が強い原因は,2ちゃんねるのシステム上の特徴もさることながら,個人が組織から自立していないため,実名で発言すると会社ににらまれるとか,友人に嫌われるなど,体面を気にしているのだろう。匿名の世界では「ムラ社会」の抑圧から解放されるため,普段のストレスを偽悪的な発言で解消するわけだ。
電子掲示板システムというのは世界中にたくさんあるが,ほとんどはハンドルネームが固定されているので,2ちゃんねるのような「言いっぱなし」は起こらない。フレーム(非難合戦)もよく起こるが,たいていは自己主張が強すぎることによる個人攻撃の応酬だ。
これに対して,2ちゃんねるの特徴は「主語の欠如」である。発言内容と発言者が結びつかないので,「私はこう思う」という意見はほとんどなく,「**はドキュンだ」とか「**逝ってよし」といった他人の悪口が圧倒的に多い。よくも悪くも自己主張が弱く,「死ぬ死ぬ詐欺」騒ぎのように膨大な数の同じような発言が繰り返されることも多い。経済板では「構造改革よりリフレだ」という意見ばかりで論争が成立しない。
もう1つの特徴は,民族差別や右翼的な発言が多いことだ。アメリカやヨーロッパでは,インターネットは「対抗文化」の末裔なので,ブログの最大のテーマは「反ブッシュ」だが,2ちゃんねるではそういう意見は「サヨ」として軽蔑され,靖国神社参拝に賛成したり韓国人をあからさまに差別したりする「ネット右翼」が多い。
これは2ちゃんねらーが思想的に保守的であることを示すものではなく,戦後ずっと学校教育の建て前となってきた左翼的な反戦平和主義に反抗しているだけだろう。逆に労働問題では,「ホワイトカラー・エグゼンプション」に賛成する経営者を叩く「祭り」が起こるなど,左翼的な意見が多い。これは2ちゃんねらーにフリーターやニートなど「格差社会」で排除される側の若者が多いことをうかがわせる。
こう見てくると,2ちゃんねるから浮かび上がってくるのは,個が自立していないため「流れ」や「勢い」に弱く,他人に付和雷同しやすい,意外に古い日本人である。しかも掲示板でのワルっぽい発言とは裏腹に,彼らの職は不安定で,その日常はつつましいのだろう。
日本のウェブサイト全体が未成熟な時期に2ちゃんねるが表現の幅を広げたことは評価してもよいが,匿名ブログが数百万になった今日ではその役割は終わった。アクセスもピーク時の半分に落ちている。いま必要なのは,格差社会への不満をこんなところで晴らすのではなく,日本社会を変える建設的な方法を考えることだ。2ちゃんねる,逝ってよし。
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