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□嘘は出来るだけ大きく−プロパガンダ術 [ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報]
http://amesei.exblog.jp/5048244/
嘘は出来るだけ大きく−プロパガンダ術
今日発売の「ニューズ・ウィーク」日本版は、「ファンド嫌いが日本をダメにする」というカヴァーストーリー。赤と黒との大見出しの下には「三角合併、M&A、敵対的買収、島国経営では大再編は生き残れない」とあります。
いや、ここまで堂々とプロパガンダを展開してくれると逆に気分が良いですが、かくいう私も、この雑誌を手に取ったときに、「これをみた一般のデラシネサラリーマンは、そうかもなあと思うだろうなあ」と思ったのも事実。
種明かしをすると、この記事は、先月から展開されている、プライヴェート・エクイティファンドのイメージ向上キャンペーンの一環なのです。
例えば、日本のあるニュース記事は次のような動きを伝えていますが、これはアメリカだけの動きではありません。
(貼り付け開始)
「米議員はプライベートエクイティへの理解が低い」=業界団体
2007年3月12日(月)13:06
[ロンドン 12日 ロイター] 12日付フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、プライベートエクイティの米業界団体のトップ、ダグラス・ローウェンスタイン氏は、米議員はプライベートエクイティへの理解が「非常に低い」との認識を示した。インタビューで述べた。
プライベートエクイティ・カウンシル(PEC)は、昨年12月に設立された。コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)[KKR.UL]、ブラックストーン[BG.UL]などがメンバーとなっている。また同氏は、プライベートエクイティを「政治的な悪役」にすることに警鐘を鳴らした。
FTによると、同氏は、米議員の「知識不足」を補うよう努力したいと表明。「政界のプライベートエクイティに対する知識の水準は極めて低い。理解も知識も不足しており、公共政策の点から問題」と述べた。
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/business/JAPAN-250685.html
(貼り付け終わり)
これ以外にも、先月からずっと、PEファンドの主要企業がコンソーシアムを組んで、プライベート・エクイティに対する「ハゲタカ」「イナゴの大群」と言う批判への反論キャンペーンが全世界規模で始まったという記事が、FTやエコノミストに出ていたのです。英国のブレア首相も、「PEファンドは企業価値の向上にプラス」と発言するなど、援護射撃に余念がない。
確かにファンドは、ファンドでも、短期投資を狙うヘッジファンドと違って、PEファンドは経営権を握って、ある程度の機関は会社を支配する。しかし、日経新聞すら認めざるを得ないように、買収合併後の株式時価総額が、それ以前の合計額より下がったケースが全体の7割」だったという。(日経・2007.3.16)全体の7割と言ったら大事である。PEファンドは、それを経営している人材は人脈ネットワークがあるので、すぐれた経営陣を呼び込むことは出来るが、緒戦はその企業ではなく、PEファンドの投資家に対するリターンを出さねばならないので、結局は事業再編はリストラが中心になる。
M&Aは、PEファンドだけではなく、手数料で稼ぐアドバイザリー側の投資銀行にとっても濡れ手に粟の商法なので、投資銀行、PEファンドは一蓮托生の関係にある。これらの業界が、広報戦略を考えなければということで、イメージ向上を狙って展開しているのが、今週の「ニューズウィーク日本版」の特集のような記事なのである。
PEファンドは、例えば、その代表者的なブラックストーン・グループを例に挙げても、投資先は100以上に昇る。言い方を変えれば、巨大コングロマリットを経営している持株会社がPEファンドなのだ。さらに語弊を恐れずにいえば、これは、20世紀初頭の独占資本主義の動きにも似ている。(ただ、今回は帝国主義という国益の部分がスッキリと抜けている)
前に書いた気がするが、買収ファンドが仕掛ける買収劇とその防衛戦というのは、企業の経営陣にしてみれば、「いきなり後ろから襲いかかられて、強姦されて、妊娠させられて結婚させられる」ような感がある行為だ。紳士的ではないと言う意味だ。 今は、MBOの様な形で和姦の様なものも増えているが、会社の従業員にとっては、あまりその違いは関係ない。ファンドの経営陣が乗り込んでくるのは同じだからだ。
このような動きを独占資本主義というのは、現在の企業合併によって、確実に寡占化が進んでおり、本来重要なはずの“自由競争”が失われつつあるからだ。欧州の電力再編を見てみても、地中海地域にひとつ(エンデサ・エネル)、フランス・ベルギーにひとつ(スエズ)、ドイツ・東欧にひとつ(イーオン)の様な形で地域寡占が進みつつある。日本でも、スーパー業界の再編を見ればわかるように、選択肢は確実に少なくなりつつある。これが自由競争といえるのだろうか。
だから、これは欧米ファンドが主導する形の、新しいタイプの「独占資本主義」なのだ。
<プロパガンダは、イメージ・ステレオタイプに訴え、大々的に>
そのような現代の独占金融資本ともいうべき、プライベート・エクイティのPRキャンペーンが、今週の「ニューズウィーク」。(この雑誌は、数週間前に「格差社会はいいことだ」とも論じた)
プロパガンダを成功させる鉄則がある。
「嘘は出来るだけ大きく」(内容の面でも、活字の大きなの面でも)
「イメージ、ステレオタイプに訴えろ」(日本人の中にある、ステレオタイプ−この雑誌では、「島国経営」という日本人にとって訴えかけやすいマイナスイメージをもつ言葉をを使っている)
「恥じらいもなく堂々と」(この記事が見出しに「新しいファンド資本主義」というようなニュートラルな見出しを付けていたら、誰も注目しない。プロパガンダとしては失敗である。堂々と行うことで、受け取る側に「ここまで堂々とやっているのだから、嘘の筈がない」と安心させる。9.11後のラディン犯人決めつけをやったアメリカが良い例)
この手法のうち、第2番目は、既にウォルター・リップマンが『世論』で解説している。小泉首相もこのイメージの利用を多数行っている。
最近のニューズウィークは記事内容も比較的穏当なものが多く、ブッシュ政権批判を行うなど好感が持てる記事が多かったのだが、今週号と格差社会を取り上げた週は、おそらく普段とは別の筋から取材協力費が入ったのだろうと思う。今週は当然、PEファンドの方から多額のカネが渡っているはずだ。
この特集でも、PRキャンペーンを主導している、カーライル・グループのデヴィッド・ルービンシュタイン共同会長がインタビューに答えている。しかし、カーライルこそが軍需関係に投資したり、ブッシュ父やベイカー元国務長官をアドバイザーに迎えたりして、PEファンド=政商」という負のイメージを植え付けたんだじゃなかったけか。
<イランを敵視せよという壊れたレコードのようなプロパガンダ>
先週末にイギリス軍が、イランに国境越えを理由に拿捕された事件いらい、BBCではブレアがテレビに出演し、兵士の解放を要求する演説を繰り返している。アメリカではなく、同盟国のイギリスを使って、イランを挑発するという戦略で、見事にイランが引っかかったということだろう。
この状況下で、欧米では、古代ギリシャのスパルタ軍とペルシャ軍とが闘った、テルモピレーの戦いを題材にした映画「300」が公開された。西洋文明のルーツである古代ギリシャと現代のイランのルーツであるペルシャが闘うという映画である。この映画の公式サイトによると、「テルモピレーの戦いで先陣を切った王将レオニダスと300人の勇者たちの死闘を目の当たりにしたすべてのギリシャ都市国家の市民達が、ペルシャに対して団結する」という筋だてになっている。
要するに「国際社会は、アメリカ・イギリスが中心になってこれから行うイラン侵攻を、一丸となって支持せよ」というメッセージが込められていると言うわけである。露骨なプロパガンダ映画だ。イギリス兵のイラン国境侵入事件は明らかなイランに対する挑発である。イスラエル・ロビーがまたぞろ次の戦争を準備しているというわけだ。
イスラエル・ロビーについては、最近、『ホロコースト産業』著者のノーマン・フィンケルシュタインが書いた、『イスラエル擁護論批判』(三交社)が出た。この本は、イスラエル・ロビーの側と論争するさいの「反論マニュアル」となっている一冊である。
アルルの男・ヒロシ 拝
▽関連記事
□プライベートエクイティの「イメージ」戦略 [ウォールストリート日記]
http://wallstny.exblog.jp/3526883/
2006年 05月 29日
プライベートエクイティの「イメージ」戦略
先日のウォールストリートジャーナルに、アメリカのLBOファンドが自社の広報活動で色々と頭を悩ませているという話が載っていました。投資の際にショート(空売り)を必要とするヘッジファンドが一般からのイメージが悪いのは分かりやすい話ですが、最近欧米では、確かに飛ぶ鳥を落とす勢いのLBOファンドに対する批判の声も目立ちます。
例えばGoldmanの投資ファンド部門がイギリスで「乗っ取り屋」の批判を浴びてしまった話は以前に書いた通りですし、ここ1、2年はアメリカでも、公開企業を買収し、特に事業の立て直しをするわけでもなく、Recapなどのいわば「ファイナンシャルエンジニアリング」を利用してお金を吐き出させた上に、即転売(M&A)や再上場(IPO)をするという手法は、さすがに一般投資家や金融メディアからの批判の対象になっています。
このような批判はドイツや韓国といったより保守的な国では更に強いそうで、これらの国ではPEファンドは政治家などから「いなご(突然やって来て全てを食い荒らして去っていく存在)」と呼ばれたりしているそうです。これは日本で政治家が外資系ファンドを「ハゲタカ」と呼ぶのと似たような感じかもしれませんが、確かに企業を短期間で売買したり、大量の従業員を解雇したり、負債を負わせてその資金を自分達に配当金で吐き出させたりと言うことだけを聞くと、悪いイメージがつきまとうのも仕方が無いのかもしれません。
ともかくこの問題について、最大手LBOファンド、Blackstone GroupのプレジデントであるTony James氏も、「プライベートエクイティにはイメージの問題がある」と認めているそうで、その対策としてこの記事にあったPEファンドの広報活動は非常に興味深いものです。
例えばBlackstoneでは、積極的に金融ジャーナリストをフォーシーズンズホテルやロンドンの豪奢なオフィスでの朝食会に招いて、自社の活動についてPRを行っているそうで、これなどは投資銀行などが行うアナリストミーティングなどとも共通するものを感じます。それだけ一般からのプライベートエクイティへの注目度が高まったということを意味するのかもしれません。
また、大手LBOファンドTexas Pacific Group (TPG)のアジア部門であるNewbridge Capitalは、韓国で20億円以上を慈善団体に寄付したり、日本や中国では地元の会社にも儲けさせるために、市場に参入した際にあえて地元企業との合弁を設立したりしているそうです。
極めつけは、この話は以前にHBSの友人から聞いたことがある気がしますが、Carlyle Groupの創業者であるDavid Rubenstein氏などは、HBSやMITでプライベートエクイティが企業の競争力アップや雇用の創出に大きく貢献していると積極的に公演したり、更には投資アイデアを考えて、それがCarlyleに採用された学生には、$500,000(約5,500万円)相当の謝礼を払うなどと言うことまでやっているそうです。
以前に常にメディアの批判に晒されるアクティビストファンドの経営者が、広く自分達の活動を「弁護」する手紙を公表したという話を書きましたが、こうして見ていると、欧米の金融業界で「エリート中のエリート」とされる大手のLBOファンドでも、色々な苦労があるようです。
日本では、まず「正当な対価を払って企業を買収する」と言うところから、相手がフィナンシャルバイヤーであるというだけで、心理的抵抗感があると聞きます。そして買収した後も、PEファンドが当然行うような事業のリストラが非常に困難だったりと言うこともあるそうで、欧米に比べて更に苦労が多い気がします。ただそれだけに、うまく案件を得ることが出来れば欧米よりも大きなリターンが期待できるのかもしれません。
ちなみに、PEファンドに対する「辛い」評価は、ウォールストリートからの評価とは大きく異なります。むしろPEファンドが短期間での取引で大きなリターンを上げたりすると、むしろ羨望のまなざしを向けることになり、だからこそ投資銀行が自らバイアウト事業に進出したりしているわけです。
また投資銀行にとっては、積極的なM&A、デットファイナンシング、IPOなどを繰り返すLBOファンドは、投資銀行部や資本市場部にとっては多くのフィーを払ってくれる非常に重要なクライアントですし、またヘッジファンドも、株式部や債券部といったマーケットサイドにとって、コミッションを落としてくれる重要な顧客ということになります。よってPEファンドやヘッジファンドと一緒になっていろいろな取引のアイデアを考案し、その実行まで手助けすることになります。
また、生命保険会社や年金基金などの機関投資家から見ても、受益者のためにも高いリターンを出し続けているプライベートエクイティは、オルタナティブ投資の一つとして是非投資したい先であることは間違いないのではと思います。
(写真は右側がRubenstein氏、http://media.collegepublisher.com/media/paper343/stills/17enlp75.jpgより)
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