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たかが風邪なのに・・・ 医療の力では、世の期待に答えることが未だ不可能なケース
http://www.asyura2.com/07/health13/msg/164.html
投稿者 どっちだ 日時 2007 年 6 月 09 日 17:36:51: Neh0eMBXBwlZk
 

薮医者の語源は色々あるらしいのですが、たかがカゼぐらいで大騒ぎするからヤブ、って説もあるようです。

私はヤブなので、単なるカゼにしか見えない患者さんが怖いです。拙いことに私の恐怖心は患者さんにも伝わってしまいますが、その位で丁度良いんですよ、今日この頃はね。防衛医療の一環ですもの。

特に、患者さんがマスコミ関係だった場合には、即紹介状書きます。「心筋炎の疑い」です。これを、「マスコミたらい回し」と呼びます。


----日々是よろずER診療 から無断転載----------------------------------------
http://blog.m3.com/case-report-by-ERP/20070608/1#comments

2007.06.08 21:17

たかが風邪なのに・・・

熱発、全身倦怠感・・・・、だれしも一度は経験があるのではないか?そして、結局、病院にかかろうが、かかるまいが、勝手に直ってしまった・・・・。 単なる風邪だったんだ、よかった、よかった・・・・と。

上記のような症状で、医者から「風邪」という太鼓判を押してほしくて、その「安心」が欲しくて、病院を受診する人もいるのではなかろうか?

患者さんに、無用な不安を与えてはいけないことは、十分承知している。 しかし、それでも、私は、診療の中で「風邪だから、大丈夫ですよ」というフレーズは決して使わない。

「良くなったときに初めて、自分は風邪だったんだと思いましょう。それまでは、慎重に症状の変化を見ていくことが現時点の診断よりも大事なんですよ」

というニュアンスのことをよく患者さんに伝えている。

たかが風邪で、なんでこいつはこんなことを言うんだろう?と怪訝に思われる非医療者の方もおられるかもしれない。

世の中には、こんな恐ろしい病気があるということを知ってしまえば、私の言うこともわかってもらえるかもしれない。

心筋炎(特に劇症型)という病気だ。 

子どもについては、こちらのエントリーをご参照ください。
小児地雷:心筋炎の2症例 http://blog.m3.com/case-report-by-ERP/20070326
ネット上ではこちらのサイトをご参照ください。
天使からのメッセージを届ける会 http://www.naxnet.or.jp/~takaoka1/angel/main.html


症例を提示する  心筋炎訴訟の判決文を元にして作成

33歳男性

5月1日 朝       38.5の発熱あり。39.5まで上昇。
5月2日 午前2時   K医療センターを受診。 感冒と診断。投薬開始。
5月3日 昼       40.0の発熱あり。K医療センター再診。レントゲン施行。
              感冒の処置として、輸液、解熱剤追加が行われた。
5月4日 昼       H病院受診。心窩部痛の訴えあり。輸液+胃薬の点滴。
      午後8時   H病院再診。過呼吸あり。入院を薦めれるも、K医療センター受診中だからと拒否。
5月5日 午前8時   K医療センター再々診。発熱、痙攣、呼吸困難認めたため、入院決定。
               外来でレントゲン、採血、頭部CT施行。
      午前9時   急変。心停止。
      午前10時30分   死亡。

           剖検にて、ウイルス性心筋炎と診断

某判決文に記された事実関係を元に作成した臨床経過です。若くて元気な人の平凡な身体不調にも関わらず、たったの五日で死亡されています。これが、ウイルス性心筋炎(劇症型)の怖さなのです。

ちなみに、裁判官の判断は、医療側に一切の過失なしと認定しています。つまり、医療行為としては、妥当であると裁判所は認識したのです。 適正な医療行為より病気の勢いが強かったわけです。 ご本人、ご家族の無念の気持ちは、いかばかりかと察するものはありますが、病院が責められる事案でなかったのです。ちなみに、「胸痛」は言った、言わないの争点があったようですが、裁判所は、胸痛の訴えはなかったと家族の主張を退けています。

ところが、この訴訟が提起されたとき、某新聞社は、次のような報道をしています。この報道をしていたのは、一社だけでした。どこの社かは、皆様のご想像にお任せします。


================ 某新聞から引用 =======================
「風邪と誤診し死亡」、賠償求め病院を訴える−−遺族
1999.05.20 地方版

病院で「単なる風邪」と診断されたために適切な治療を受けられず、急性心不全で死亡したとして、K市内の男性会社員(当時33歳)の遺族らがXX日までに、 H市内の病院を相手取り、計約1億1000万円の損害賠償を求め、U地裁に提訴した。訴えによると、男性は199X年X月XX日に高熱を出し、K医療センターとH市内の病院に行って胸痛を訴えたが、いずれも「風邪」と診断された。しかし、男性は回復せず、同XX日、心筋炎による急性心不全で死亡。誤診により治療を怠った−−と主張している。遺族は昨年X月、同センターを管理するK市に対しても、同様の訴訟を起こしている。H市内の病院は「担当者がいないので、コメントできない」と話している。

======================================================

何も知らない人が、これを読んだらどう思いますか? 病院が悪いように印象付けれられませんか?

これが、報道の偏向性なのです。おそらく、病院を悪く言いたいという意図をもっているのでしょう。

しかも、この新聞社は、無責任なことに、これを報道しておきながら、訴訟結果の報道は行っていません。報道しっぱなしであったのです・・・。

 これを書いた時点では、まだ家族の言い分という主張もまだ通るとして、真実は誤診ではなかったです。しかし、その真実を新聞社はスルーしたのです。。
こういう報道姿勢を、決して私は許すことが出来ません。

今回は、心筋炎という病気の怖さとマスコミの偏向報道の一例を皆様方に知ってほしくて書きました。まとめます。

本日の教訓

風邪症状の最悪のシナリオの一つして、心筋炎の存在を想定しよう。
マスコミの報道は、常に報道されていないものは何かを考える癖をつけよう。うのみが一番いけない。


コメント

心筋炎本当に怖い病気ですね。頻脈くらいしかヒントになる臨床所見がなさそうですが、まったく非得意的だし、熱でも頻脈になるしで困ってしまいます。(解熱剤を使っても頻脈が残るようなら注意したほうがよいのか。。。)

あたったことはないですがいつかあたると思いながら備えていたいと思います。それにしも怖い。
救急外来に二回目の受診には気をつけようと思います。

風邪という触れ込みなのに、咽頭痛・鼻水・咳などがあまりそろわない場合には気をつけようと思っています。
直接経験ではないですが、これらそろわなかった若い患者さんで髄膜炎菌による死亡・急性白血病の見逃しを友人が経験しています。

教育的な症例を先輩から教われることは修行中の医師にとって何よりの財産です。いつもありがとうございます。

******************
コメントありがとうございます。
白血病、私も経験あります。
髄膜炎菌、疑い例は経験あります。
いずれも翌日死亡しました。・・

ああ、おそろしい。。。。

by なんちゃって救急医
written by しへい / 2007.06.09 00:01


確かに怖いですよね。風邪の症状。先日、脳外科の先生が当直をしていた時の話を聞きました。30代女性が発熱、頭痛を主訴に来院しました。日中に近医で風邪と診断され治療を受けたが、症状が良くならないとの事で深夜に来院されました。項部硬直なし、もちろん意識障害、四肢麻痺ありません。CT,MRI異状なし。が、髄液検査で細胞数が異常に増加しており、髄膜炎と診断されました。もし、私が診ていたら、点滴で脱水補正をして「後は家でゆっくり休んでね」と返してしまうと思います。「脳外科の先生は発熱と頭痛のみで、髄液検査をするのですか?」と質問をしたところ、「脳外科医が髄膜炎を見逃したら格好悪いからな」って笑ってました。この話を聞いてしまった私は次回の当直の時から風邪症状を訴える患者に髄液検査をすべきかどうかで悩みそうです(笑)。ちなみに私は脳外科病院の麻酔科医です。

***********************
眠らせ屋先生
症例提示ありがとうございます。たしかに悩みそうですね。理学所見よりも頭痛の程度が病歴からどう取れるかが、ルンバーるまで行くかどうかの決断の分かれ目かと・・・
また、勇んで検査をしたものの、はずれ・・・・そして低髄液性頭痛の合併症だけが残った・・・・
こんなクレームも、数回耳にしました。
大多数のウイルス性髄膜炎は、一日ぐらいはwait出来ることが多いので、合併症のことも十分すぎるぐらい説明してルンバーるに望んでもいいのではないかと個人的に考えています。

by なんちゃって救急医
written by 眠らせ屋 / 2007.06.09 08:51


心筋炎ではありませんが、だいぶ昔のお話。
正常産後一ヶ月の女性、ちょっとしんどい、便秘勝ちということでまずお産した産科受診。下剤だけもらって様子見。(かぜ症状なし)

その日の夜、呼吸困難感で当院救急外来受診。胸水貯留、心不全疑いで緊急入院が決まったとたんに心停止。当直医が必死で蘇生措置を行いました。何とか蘇生して入院したものの、重症の心不全で入院3ヶ月でお亡くなりになりました。(私は入院中にお乳の状態を見てくれといわれただけなので、詳しい状況がわかりませんが大体こんな感じ)

病理解剖をやったんだったかなあ。確か心エコー上は特発性心筋症(拡張型心筋症類似)というような結果だったと思います。
きわめて珍しい例ですが、産後に拡張型心筋症のような症状を急性発症することはあると文献で読みました。病理的にはウイルス性心筋炎に類似しているが、感染兆候が何もないところが違うらしいです。

************
症例例示ありがとうございます。
これは、産褥後心筋症ではないですか!
私は、大学病院時代、31歳女性を担当したことがあります。
LVADが入り、心移植待機リストAにまで乗りました。

残念ながら脳出血の合併症をおこし、リストから脱落し、ほどなくお亡くなりになりましたが。

by なんちゃって救急医
written by 山口(産婦人科) / 2007.06.09 09:48


----小児地雷:心筋炎の2例-----------------------------------------------------
http://blog.m3.com/case-report-by-ERP/20070326/1#comments


2007.03.26 21:27

小児地雷:心筋炎の2例

本日は、小児心筋炎という病気について述べてみたいと思います。頻度こそそう多くないものの、ありふれた主訴の中から、突然命を脅かす病気として、本人、ご家族そして医療者の前に突然現れるので、小児地雷としては、代表格ではないかと思っています。


第34回日本救急医学会総会
小児救急疾患のピットフォール
北九州市立八幡病院 小児救急センター 市川光太郎先生の講演スライドより引用


小児救急疾患の特徴
A:軽症者が多いものの、その中に、非典型的症状を呈する重症者が紛れ込んでいる。
B:自己表現が乏しく、主訴が不明確で、診断プロセスが困難なことも少なくない。
C:病勢の進行が早く、重症化の予知が困難である。
D:先天性疾患の存在や養育環境の影響が傷病の発生に影響していることも少なくない。

小児心筋炎の症例を2つほど

市川先生の講演の中で提示された症例

5歳 男児
夜に腹痛、訴えるも特に重症感はなく観察。翌朝も少しグズグズ言ったが、幼稚園に登園。登園後、嘔吐あったため、早退。午後、近医受診。嘔吐ひどいため早めの診察。点滴開始時、痙攣そのまま心肺停止となる。救急隊による除細動が一度施され、心拍再開後、当センターへ。人工心肺装置(PCPS)を挿入直前に再度心停止。心拍再開せず、死亡される。

自分のかつて勤務していた病院での症例。

9歳 男児
発熱があったため、近医受診。感冒との診断で投薬加療中であった。発熱してから3日目の夜、熱はなかなか引かなかったため、父親が添い寝をして一晩様子をみていた。翌早朝、こどもが息をしていないことに父親が気がつき、救急要請。当院搬入時、心肺停止状態。心拍再開せず死亡される。病理診断による確診はないが、臨床的に心筋炎と判断した。


どちらも、急に大切な子供さんを失われた親御さんのことを考えると胸が痛みます。では、この子供たちを救うきっかけはどこかにあったでしょうか? まさに市川先生が講演の中でのべられた特徴A,B,Cが、不幸にもすべて揃ってしまった症例であったと考えます。残念ながら、心筋炎という病気を今の医療が克服しきっているとはいえないと思います。まさに、医療の限界を、医療者のみならず多くの人に知っていただかざるを得ないと思います。

これらの症例を皆さんはどうお感じなりますか? 初めの診療の段階で、心筋炎と診断できなかったことが、はたして誤診でしょうか?

これらを誤診だと断罪される方が世に多ければ多いほど、安全な医療を行える力をもつ医師たちがこれからもどんどん少なくなっていくと私は思います。自分たちの力では、世の期待に答えることができないと思うからだと思います。少なくとも私自身はそう感じています。

マスコミ報道を見る限り、私たちの不可避な医療判断を、ミスという心無い言葉で断罪していることが多いように感じます。マスコミ報道には、常にバイアスがかかりますから、一般的な世の方々がそうでないことを心から願っています。
この記事は参考になりましたか?(推薦数にカウントされます) 


コメント


先生のおっしゃることよく判ります。

ウイルス性の心筋炎は私は当たったことがありませんが、
あたりたくない疾患のひとつです。
まず的確に診断できる自信がありませんし、タイミング遅れで診断がついても市川先生の例のように的確に治療できる施設まで持たないことが多いです。成人ですが、寝たきりになる後遺症を残した患者さんを見ました。

もし、これを医療ミスと言われると、救急医療はやってられないと思います。(先生の意見に激しく同意)
written by ichiyama / 2007.03.28 05:11


ichiyama様

同意のコメントをありがとうございます。救命のための努力を続けることと、限界性を訴えること、この相反する2つの事柄を世に訴え続けていく必要があるのではないかと考えています。
written by なんちゃって救急医 / 2007.03.28 06:50


心筋炎は2例みたことがあります。
1例は10歳の男の子で、劇症肝炎のふれこみで転送されてきました。肝酵素がべらぼうにあがっているわりには黄疸がひどくなく、ほんとに肝炎か?ということになって、CPK をみたら跳ね上がっていました。
心臓もなけなしに動いているだけで、CCUでPCPS をまわしましたが、亡くなられました。当時ICUのベテランの先生から、PCPSをまわした心筋炎は助かったためしがないといわれました。
発見されても、急激な経過をたどる症例は、助からないほうが多いような気がします。

もう一例は、なんと助かった症例を経験しました。
4歳の女の子。
なんとなく元気がないと言う事で、近医受診。徐脈ということで紹介受診。なんと脈拍30でした。
あわててエコーすると、軽度心のう液貯留、心筋の動きが一部悪いところがあり、伝導障害型の心筋炎ということで、CCUに入院しました。
この子は主な症状が伝導障害で、心拍出はカテコールアミンの併用でなんとか保てたので、ひたすら炎症がおさまるのをまって、回復期にはよくわからない不整脈が連発しましたが、これも血圧が保てていたのでひたすら経過観察でのりきりました。
このような症例は、助かる運命だったんだ、としかいいようがありません。医者はただ指をくわえて嵐が過ぎるのをみていただけですので。

心筋炎はほんとうに難しい病気だと思いますし、
医者はこれに対しては、ほんとに無力だなあと思います。
それをせめられても、いかんともしようがないです。
written by pyonkichi / 2007.03.29 12:27


pyonkichi 様

貴重なご経験をありがとうございました。
自分が受け持ちで、救命できなかった患者さんのことを思い出しました。劇症型心筋炎で40代の女性でした。ようやくようやく授かったたった一人のお子さんはまだ5歳くらいでした。PCPSを装着しましたが、乗り切れませんでした。
患者さんの実母に泣いて頼まれました。「助けてやってくれ。私が変わってやりたい」と。その患者さんも週末の入院時は、肝炎のアセスメントでした。
written by なんちゃって救急医 / 2007.03.29 14:27


産後一ヶ月の特発性心筋症を経験したことがあります(って実際主治医だったのは内科ですが)。他院で正常分娩後、一ヶ月ほどして呼吸困難感を主訴に当院救急外来受診。そこでいきなり心肺停止!当直医が一生懸命蘇生してその場はしのぎましたが、心筋の動きがほとんど停止(30%弱しか動いてないくらいだった)していたので、その後ずっと入院して3ヶ月くらいしか保ちませんでした。
これって今でも原因不明なんでしょうか。経験した当時は原因不明と言うことでしたが。(自分でPubMedとか探す根性がない)
written by 山口(産婦人科) / 2007.03.31 15:09


山口(産婦人科様)

貴重なご経験をありがとうございました。たしかに、産褥後心筋症という病態カテゴリーは存在しているようです。当方も、かつて、そういう方の受け持ちをした経験があります。残念ながらその方も亡くなりました。
written by なんちゃって救急医 / 2007.03.31 17:42

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コメント
 
1. 2015年10月06日 14:04:21 : p2aQmubjL6

キチガイママまとめ保管庫


予防接種をした数日後に3歳の息子の容態が急変。救急車を呼び処置をして貰った後、かかりつけの小児科に行ったら…

2015年10月06日11:00
http://www.kitimama-matome.net/archives/46486808.html


_____

札幌医療事故問題研究会
http://www.ijiken.org/qa.html

【医療事故Q&A】


◆医療事故について          ◆訴訟までにかかる費用

◆医療事故ではないかと思ったら    ◆医療過誤の時効について

◆医師から説明を受けるとき      ◆医療被害者にならないために

◆訴訟を起こす前に          ◆よい弁護士の選び方

◆相談から訴訟提起までの流れ     ◆医療問題に関する用語集

(略)


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