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http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0707/200707_028.html
アルコール依存症は複雑な疾患だが,明らかに遺伝性のパターンが見られる。これは,アルコール依存を招く何らかの生物学的基盤が複数の遺伝子によって伝えられていることを示している。例えばアルコール依存症患者とその子どもには,脳の活動に特有のパターンが見られる。こうした生理学的形質は,アルコールに対する反応に影響を及ぼす遺伝子変異を特定するのに役立つ。
アルコール依存症とその関連疾患に影響を及ぼす遺伝子を見つけることによって,病気がどのように発症するのかが詳しくわかる。よりよい治療法への道が開かれ,リスクの高い人が自分の健康と行動に関して,正しい選択をすることが可能になるだろう。
一般に日本人や中国人など東アジア系の人はお酒を飲むと赤くなる傾向がある。赤くなった人の血液を調べると,アセトアルデヒドの濃度が高いことがわかった。アセトアルデヒドはアルコールの分解産物で,皮膚のほてりや動悸,脱力といった不快感を引き起こす。
1980年代,この現象はアルコールの代謝に関係するアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がもとになっていることがわかり,この酵素の遺伝子ALDH1が突き止められた。ALDHはアセトアルデヒドを分解する酵素だが,赤くなる人のALDH1遺伝子にはわずかな変異があり,酵素による分解作用が遅くなっていた。
この変異を持つ人はアルコール依存症になる可能性も低く,最も低い例では変異のない人に比べてリスクが1/6にとどまった。ALDH1遺伝子の変異はアルコール依存症の発症を抑えるように働く変異の一例だ。
その後,どの遺伝子がアルコール依存症に関連しているのか,徹底的に探そうという機運が高まり,1989年に「アルコール依存症の遺伝学的側面に関する共同研究(COGA)」が始まった。私たち2人も参加している。
こうした研究を通じて,いくつかの関連遺伝子が見つかった。それぞれの寄与はアルコール代謝や脳の活動など,生理機能のさまざまな側面に影響する。アルコール依存と同時に,うつ病など他の疾患にも関連している遺伝子変異の例もある。アルコール依存症についてより深く知れば,関連疾患の発症に関連する因子を詳しく分析するのにも役立つはずだ。
アルコール依存に至る道筋は多様であり,その背景にはさまざまな生理学的経路がある。未発見の関連遺伝子がまだほかにあるのは間違いない。
著者
John I. Nurnberger, Jr./Laura Jean Bierut
2人は精神遺伝学者で,さまざまな物質依存のほか,うつ病や双極性障害などの精神疾患に関する遺伝的影響について共同研究している。ナーンバーガーはインディアナ大学医学部の精神医学教授で,精神医学研究所所長。ビエルトはセントルイスにあるワシントン大学の精神医学准教授。ともに「アルコール依存症の遺伝学的側面に関する共同研究(COGA)」に加わっており,COGAを立ち上げた首席研究者の故ベグライター(Henri Begleiter)と副首席研究者のライヒ(Theodore Reich)に感謝の言葉を述べている。「彼らのリーダーシップのおかげでCOGAが軌道に乗り,さらに発展した。お二方の独創性に富む貢献に深く感謝する」。
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