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大林 優香記者 アリソン・テューダ記者
[東京 5日 ロイター] 日本の資産に投資する日本特化型ヘッジファンドの運用資産が激減している。2年続きの成績不振で海外投資家がそっぽを向き、中国やインドなど他のアジア市場に資金を移したためで、償還や破たんに追い込まれるケースや資産をつなぎとめるために日本特化型から日本を含むアジア合成型に戦略を転換したり、報酬を引き下げたりする動きも出ている。
この2年で勝ち組と負け組の差が開き、今後は投資家による選別が進むとみられている。
<08年も日本型ヘッジファンドは低迷へ>
調査会社のユーリカヘッジによると、07年に日本特化型ヘッジファンドから77億ドル(約8221億円)の資金が純流出し、年末の運用資産は前年比約3割減の240億ドル規模に縮小した。特に10─12月期に資金の引き揚げが加速し、流出額が膨らんだという。
一方、日本を除くアジアに投資するヘッジファンドには224億ドルが流入し、評価益を合わせると運用資産は年間で350億ドル拡大した。日本型とは対照的な構図だ。
背景として「米国年金のほか欧州や中東勢が日本から資金を引き揚げ、中国やインドにシフトする動きが加速した」(欧州系投資サービス会社の日本代表)と指摘する向きが多い。
解約ラッシュの結果「主要な海外投資家のポートフォリオから日本型ヘッジファンドがほとんど外された状態になっている」(英系ヘッジファンド調査会社日本法人幹部)という。
海外投資家による「日本離れ」の要因は運用成績の不振。ファンド情報サービス会社リッパーによると、約1兆7300億ドルの世界のヘッジファンド市場の動きを示すクレディ・スイス/トレモント・ヘッジファンド指数は07年に12.6%上昇し、3年連続の2ケタ上昇を記録した。
その中で、同ロングショート指数も13.7%上げた。これに対し、日本型の大半を占める日本株ロングショートの指数は06年のマイナス6.9%に続き、07年もマイナス0.1%と低迷した。
成績不振組のなかにはロンドンを拠点とするStratton Street
Capital LLPの「デジマ・ファンド」が含まれる。07年の運用成績はマイナス42%。同社関係者によるとデジマはレバレッジが高い日本株ファンドで、マーケットが大きく動けばリターンの変動も大きくなる。
金融筋によると、米系ヘッジファンドのWhitney&Coの「ジャパン・セレクト・インベスターズ・ファンド」は06年のマイナス29.7%に続き07年もマイナス7.5%と低迷した。スパークス・グループ(8739.Q: 株価, ニュース, レポート)のある日本株ロングショートのファンドもマイナス12%と不振だった。Whitneyとスパークスからはコメントを得られなかった。
リッパーのシニア・リサーチ・アナリスト、フェレンク・サンダーソン氏は、日本株ヘッジファンドは「中小型株買い・大型株売り」のロングショート戦略に集中し、似通った投資をしているために大幅な利益をあげにくいほか、中小型株の下落による打撃が大きいと分析。脆弱な国内消費や不動産ブームの不在など経済のファンダメンタルズから「日本型ヘッジファンドは08年も他の先進国型をアンダーパフォームする」と予想している。
<勝ち組と負け組の差が拡大>
日本型ヘッジファンドのマネージャーは、残高の急減で厳しい選択を迫られている。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)は日本株のファンド・オブ・ヘッジファンズ「GSストラテジック・ジャパン・パートナーズ」を昨年12月に償還した。理由や資産規模の推移について同社は言及を控えたが、複数の金融関係者は「投資家からの解約と運用損でクローズを決めた」とみている。
日本株ロングショートのヘッジファンドについては、運用資産がピーク時の1─2割に縮小しているケースも多く「日本人が立ち上げた小規模のヘッジファンドが廃業を検討している例や、外資系の中堅ヘッジファンドで運用担当者が十分な手数料を稼げないとして辞めた例もある」(英系ヘッジファンド調査会社日本法人幹部)。
また、市場では「1、2年前に日本に進出し日本株ロングショートファンドを立ち上げた欧州系大手ヘッジファンドが成績不振で撤退を検討している」(同幹部)との観測もある。
リッパーによると日本株ロングショートのファンド破たん率は06年以降に悪化し、07年には13%に達した。これは世界のヘッジファンド業界平均の9%を上回るという。
受託資産の流出を食い止めるため運用戦略を日本を含むアジアミックスに転換したり報酬を安くしたりするファンドも出てきた。リッパーのサンダーソン氏は「最近は投資家が日本を含むアジア型を好み、多くの場合日本株を『ショート』の対象としている」と指摘する。
ヘッジファンドは通常、運用額に対し年率2%の運用報酬と20%の成功報酬を吸い上げるが「最近は運用報酬が約1.5%になっている」(ロジャース・インベストメント・アドバイザーズのエドワード・ロジャースCEO)という。
本来、市況の下落局面でも利益を追求するのがヘッジファンドだが、日本型については過去2年は軟調相場に引きずられる結果となった。アルボーン・パートナーズ投資顧問の原勝哉代表取締役は「昨年も厳しい環境のなかで好成績を挙げたファンドはあり、06年と07年で勝ち組と負け組の差が開いた。今後は投資家による選別が進む」と予想する。
<日本株離れに変化の兆しも>
日本株ヘッジファンドは苦境に立たされているが、一筋の光もみえる。ヘッジファンド投資のモニタリングや選定を行うHSBCオルタナティブ・インベストメント・グループのUSリサーチヘッドのクラーク・チェン氏によると「米ヘッジファンドが少しずつ日本への投資を再開している」からだ。ヘッジファンドは相場を先取りすることが多く、同氏は日本市場について08年は「ややポジティブにみている」という。
また、1月はアジア株が日本株を上回る下げ相場を演じたことで、アセアン地域の中小型株に投資するあるヘッジファンドが「1月はファンド設定以来最も厳しい月として歴史に残る」と顧客リポートに記載するほどアジアのヘッジファンドが痛手を受けた。他のアジアとの比較で魅力が失せていた日本株を投資家が「見直す」きっかけになるかもしれない。(1ドル=106.77円で換算)
(ロイター日本語ニュース 編集 石田仁志)