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(回答先: 『マック店長は非管理職』 東京地裁判 決残業代支払い命令(東京新聞) 投稿者 gataro 日時 2008 年 1 月 28 日 19:39:17)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008012802083059.html
【社会】
【関連】『同僚らも大きな声を』 マクドナルド店長訴訟 健康、家族犠牲に
2008年1月28日 夕刊
(写真省略)
判決を受け、記者会見する高野広志さん=28日午前11時21分、東京・霞が関の厚労省で
「同僚の店長や名ばかりの管理職も大きな声を出してほしい」。埼玉県熊谷市内にあるマクドナルド店長の高野広志さん(46)が残業代の支払いなどを求めた裁判で、勝訴した高野さんは二十八日、東京地裁の判決後の記者会見でかみしめるように語った。残業が月百時間を超え、二カ月間休めなかったこともあるという高野さん。もう命は削れないと、在職しながら会社を訴えた主張は、ほぼ全面的に認められた。「同じ境遇の人たちにいい影響があることを期待したい」と高野さんは力を込めた。
「僕たちが死んでもお葬式にも参列できないね」。息子からそう言われた高野さんは何も言い返せなかった。
午前四時半に自宅を出て、六時すぎには店に入る。七時に開店した後は、アルバイト店員に指示しながら自ら調理や接客。売り上げ確認などの店長業務をこなし、帰宅は午前零時すぎになる。三、四時間の睡眠で朝を迎える−。そんな生活が続いていた。
仕事中にぎっくり腰になり、労災認定されても交代のスタッフがおらず翌日から出勤。家族旅行もスタッフのやりくりがつかず、直前でキャンセルした。家族関係は悪化し心身ともにボロボロだった。「離婚されても仕方がないかな」と真剣に考えるようになっていた。
外資系外食産業のリーディングカンパニーと書かれた求人広告にひかれ、希望を抱いて入社したのが一九八七年。笑顔の接客をうたい文句とし、メニューには「スマイル0円」を掲げる。しかし、笑顔の裏にはこんな過酷な現実があった。
訴訟の陳述で、高野さんの妻は「夫は『マクドナルドという会社は今も好きだ』と言う。好きな会社であればこそ、安心して働けるようにしなければ、と思う」と夫の気持ちを代弁。高野さんも訴えた。「人間らしく、家族と一緒に過ごせるような働き方を実現したい」。訴訟に駆り立てた原動力は、この一言に集約されていた。
「2年長かった」会見で高野さん
判決を受け、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見に臨んだ高野広志さんは「二年間は長かった。裁判所が認めてくれたのだから、同僚の店長たちも『僕はこれだけのことをやっている』と声を上げてほしい」と呼びかけた。
現職の店長が昨秋、くも膜下出血で突然死したことを明らかにした高野さんは「判決がもっと早く出ていれば…」と声を詰まらせた。
妻の邦子さん(46)は「今は裁判を起こして本当によかったと思う。一番大事なことは命があること。皆さんも働くことの意味を考え直してほしい」と涙ながらに訴えた。
弁護団は「ファストフード店、飲食業界だけでなく、同様に全国展開している店舗の店長に与える影響は大きい」と判決の意義を強調。高野さんも「マクドナルドはファストフードのリーディングカンパニー。判決を真摯(しんし)に受け止め、遂行することで働く人たちにいい影響が出れば」と期待を込めた。
拡大解釈に歯止め
<解説>
マクドナルドの店長が残業代の支払いを求めた訴訟の二十八日の東京地裁判決は、店長は労働基準法で残業代支払い義務が生じない「管理監督者」には当たらないとの判断を明確に示した。
判決は、管理監督者を「経営者と一体的な立場にある者」と認定。店長は(1)企業全体の経営方針の決定過程に関与していない(2)権限は店内に限られている−ことなどから、肩書は店長であっても実質的に管理職ではないとした。
同種の訴訟で外食産業の店長側が勝訴した判例は複数あり、今回、特別に新たな司法判断が示されたわけではない。しかし、マクドナルドという大手チェーンの象徴的企業への判決という点で、今後の労使問題のあり方を方向付ける意味を持つことになるだろう。
訴訟が進む中で、政府は管理職相当を対象に残業代の支払い義務をなくすホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の規制除外制度)の導入を目指した。しかし、いくら働いても給料が上がらないワーキングプアが社会問題化、世論の反発を受けるかたちで法案の提出を見送った。
一方、経営側の日本経団連(会長・御手洗冨士夫キヤノン会長)は昨年度、政府・与党に対して「(同法の)管理監督者に限らず、裁量性の高い一定の要件を満たす労働者」について規制の撤廃を要求。労組側は「管理職」の範囲が拡大解釈されるのではないかと懸念している。
今回の判決が、管理職の範囲をあらためて明示したことで、経営側の拡大解釈論に一定の歯止めをかけることが予想される。社会格差を減らす労使関係のあり方について再考させる契機となるだろう。 (社会部・寺岡秀樹)