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http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-29853620080120
[東京 20日 ロイター] 衆参両院の与野党勢力が逆転する「ねじれ国会」で、市場関係者が最も注目する福井俊彦日銀総裁の後継人事が、3月の任期満了を前に動き始めた。参院での野党多数を背景に、この問題で事実上の拒否権を握る民主党内では、本命とされる元財務次官の武藤敏郎・日銀副総裁に財政・金融の分離原則の観点から難色を示す声が強い。
一方で、官僚出身者を排除する基準を設けないことも確認しており、水面下では財務官経験者などの名前も挙がる。同時に任期切れとなる2人の副総裁を含めた正副総裁人事をセットと捉え、最低1人は学者や財界など民間からの起用を求める可能性がある。
<民主は官僚出身排除せず、水面下で財務官経験者などの名前も>
政府は2月中旬までに日銀総裁人事に関する方針を示す予定だが、カギを握る参院第1党の民主党では、岡田克也副代表が最有力候補と目される武藤敏郎日銀副総裁の昇格に公然と難色を示すなど同副総裁の就任に賛同する声は少ない。
民主党内には、財務次官経験者の武藤氏が日銀総裁になれば、財政の責任者が金融をコントロールする旧日銀法時代に逆戻りするとの懸念があり、岡田氏は17日の講演で「財務当局の実務の最高責任者を務めた人が、金融の最高責任者になることに対する違和感を持っている」と武藤氏の総裁就任は財金分離の原則に反するとの見解を示した。
ただ、米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題を背景に金融市場が混乱し、世界・日本経済の先行きに不透明感が強まる中で、金融面の専門的な経験と知識が不可欠との見方が民主党内で高まっている。
民主党で国会同意人事を検討する小委員会の委員長を務める仙谷由人衆議院議員は12月のロイターのインタビューで、国際金融面での協調・見識・人脈を選出基準に挙げたが、「要件を満たす人材は限られる」(民主党筋)のが現実だ。
このため、財務省OBを完全に排除するのも得策ではないとの思惑もあると見られ、官僚出身という理由だけで拒否する硬直的な基準は作らないことなどを確認。水面下では、黒田東彦・アジア開発銀行総裁など財務官経験者の名前も挙がっている。
<政府・与党内は武藤氏の声、民主は副総裁含めたバランスも重視>
政府・与党では日銀総裁の具体的な要件について、自民党の谷垣禎一政調会長が17日のロイターとのインタビューで「金融政策についての何らかの経験が必要条件。加えて、マーケットが政策の意味をよく理解しないと、つまりメッセージが間違ってしまうとうまく動かない」と述べ、金融分野での経験と説明能力の重要性を挙げた。
とりわけ世界経済の不確実性が高まり不安心理が台頭している今、中央銀行総裁トップとしての「カリスマ性」も重要だと指摘した。
額賀福志郎財務相は18日、一般論とした上で、金融政策についての見識、国際金融への対応、日銀組織のマネージメント能力の3条件を示した。
こうした基準に照らし、政府・与党内では武藤氏を最有力候補として検討を進める公算が現状では大きいとみられるが、民主党の意向にも配慮し、財務官経験者のほか、混乱の予想される今後の世界経済を考えた場合、福井総裁に劣らない経験と見識を持つとされる山口泰・元日銀副総裁など日銀OB、民間などを含めて幅広く人選が行われる可能性がある。
他方、サブプライム問題の深刻化を受け、中川秀直・元自民党幹事長が18日の上尾市内での講演で、「(日銀の)金利正常化路線は正しくなかった」とし、次期総裁について「今までの路線を続けるかどうかだ」と金融緩和路線への転換に踏み切れることを選考基準にすべきとした。
武藤氏が現在の利上げを基本線にした金融政策の考え方を転換しなければ、候補に推さないとも受け取れる発言で、福田康夫首相と同じ派閥の清和会で大きな影響力を持っている中川氏の発言だけに、与党内の候補選定にさざなみが立ち始めた。
さらに金利正常化を基本とする民主党内からは、中川氏の発言に対して「問題外」(同)との反論が出るなど、日銀総裁人事をめぐる混迷は打開の道が見出せない状況。
もっとも、民主党では、同時に任期満了を迎える2人の副総裁を含め、正副総裁人事をセットで捉えることが重要との指摘もあり、最終的に正副総裁のバランスで要件に合致するかを判断する可能性がある。その際、日銀の独立性を高めるためにも、最低1人は学者や財界など民間からの起用を求めるとみられる。
<総裁不在回避の認識は共有>
民主党の小沢一郎代表は昨年11月のロイターとのインタビューで「日銀総裁がいないという状況はよろしくない」と述べ、福井総裁の任期切れまでの内定に理解を示していた。今のところ、与野党とも総裁不在の事態は避けるとの認識は共有されているもようだ。
政府・与党は、政府案を野党に示す時期について「2月上旬、遅くとも中旬」(町村官房長官)を念頭に置いており、向こう3−4週間で候補者が野党側に提示される方向。
ただ、与野党間での新しい同意人事のルールは正式には固まっておらず「まだ個人名を挙げて検討はしていない」(18日の町村信孝官房長官会見)という。
谷垣・自民政調会長も「政局的なこともあり、必ずしもまだ十分に(民主党と)話しができている状況ではない」とし、政府案を固めて提示するまでに時間の余裕はなく「(作業を)急がないといけない」と述べている。
(ロイター日本語ニュース 記事執筆:吉川 裕子、伊藤 純夫 編集:田巻 一彦)
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