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http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aOScDwhdOMhs&refer=jp_japan
武藤日銀副総裁:景気は当面減速、情勢判断を一段の下方修正か(4)
1月10日(ブルームバーグ):日本銀行の武藤敏郎副総裁は10日午前、札幌市で講演し、「わが国経済は足元、住宅投資の落ち込みなどから減速しており、先行きは当面減速が続く」と述べた。日銀は昨年12月の金融経済月報で、景気は「減速しているとみられる」として情勢判断を下方修正。その際、「基調としては緩やかに拡大している」という表現を残したが、武藤副総裁は講演でこうした表現を使わず、事実上、一段の下方修正を行った格好だ。
武藤副総裁は「わが国経済はもともと緩やかなペースで拡大していたところに、原材料価格の高騰、住宅投資の急減、世界経済の不透明感の高まりといったマイナスの要素が加わり、減速しているとみられる。このため、現在、生産・所得・支出の好循環のメカニズムは一時的に弱まっているが、これでメカニズムが途切れるとは考えていない」と指摘。先行きについては「当面減速が続くものの、その後は緩やかな拡大を続けるとみている」と述べた。
BNPパリバ証券の丸山義正エコノミストは「執行部の一人である武藤副総裁が景気減速の継続を素直に認めたことは、利上げが選択肢に当面入らないことを日銀が公表したのに限りなく近く、非常に重要なターニングポイントと言える」と指摘。「2008年中は利上げが行われない」と予想している。
中間評価も下方修正へ
日銀は12月に景気判断を「住宅投資の落ち込みなどから減速しているとみられる」として、前月までの「緩やかに拡大している」から下方修正した。景気判断の下方修正は2004年11月以来約3年ぶり。今月21、22日の金融政策決定会合では、さらに景気判断を下方修正する可能性が出てきた。
日銀はまた、同日の金融政策決定会合で、昨年10月に示した経済・物価情勢の展望(展望リポート)の中間評価を行うが、「2007年度のGDP(国内総生産)成長率が日銀の標準シナリオ(昨年10月時点の大勢見通しで1.8%)から下振れたとの判断が正式に示される」(日興シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト)とみられている。
武藤副総裁は金融政策運営については、「日本経済は当面、減速するとみられる一方で、消費者物価は石油製品や食料品の値上がりなどから当面、上昇幅が拡大していくと見込まれる。金融政策運営においては、こうした動きが先行きの経済や物価にどのように影響するかを予測する必要がある」と述べた。
金融政策は慎重に判断
武藤副総裁は具体的には、@減速が一時的なもので景気は拡大軌道に復すると考えてよいか、あるいは減速が予想以上に長引くことはないか、A物価上昇が経済に悪影響を与えて先行きの経済や物価を下振れさせることはないか、 B逆に、物価上昇が家計の物価についての見方や企業の価格設定行動に影響を与え、先行きの物価を上振れさせることになるかどうかを「丹念に分析しながら、先行きの経済・物価の見通しに織り込んで判断していくことになる」と述べた。
武藤副総裁はその上で、「仮にこのような点検を行った結果、日本経済が物価安定の下で持続的な拡大を続けると判断されるのであれば、現在、極めて緩和的な状況にある金利水準を徐々に調整していく方向にある」と指摘。「低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、企業や金融機関などの行き過ぎた活動を通じて、中長期的にみて、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクがある」と語った。
武藤副総裁はただ、具体的な政策変更については「経済・物価情勢を、虚心に、フォワードルッキング(先見的)に評価した上で、慎重に判断していきたい」と語った。
住宅投資の回復は不確実
武藤副総裁は企業部門については、「昨年12月の短観調査で、企業の業況感はやや慎重化した」と指摘。「業況感の慎重化が企業の支出活動にどのような影響を与えるかについては十分点検していく必要」があることを挙げ、「企業活動は堅調な状況を続けていると評価できる」と述べた。
家計部門については「足もと各種の調査による消費者マインドが下振れている。賃金が伸び悩む一方で、ガソリン・灯油・食料品などの生活必需品の価格が上昇していることなどが影響しているものと思われる。こうしたマインドの悪化の影響を含めて、個人消費の動向については、引き続きよくみていく必要がある」と語った。
住宅投資については「改正建築基準法の施行後、建築確認の手続きに遅れが生じていることから急減しているが、先行きは、手続き面の遅れが解消に向かうに従って、次第に回復すると考えられる。ただし、首都圏を中心に物件価格の上昇などからマンション販売に弱さがみられており、回復のペースや水準については、不確実な面がある」と述べた。
コアCPIは一段と上昇へ
生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比上昇率については「昨年10月に0.1%とプラスに転じ、11月は0.4%に拡大した。目先、石油製品や食料品の価格が上昇する中で、さらにプラス幅が拡大するとみられる」と指摘。
武藤副総裁はその上で「わが国の景気は現在減速しているとみられる。そうした下で、需給ギャップのプラス方向への動きは当面足踏みすると思われる。ただ、やや長い目でみれば、景気の拡大基調が続く中で、需給ギャップもプラス方向に向かうとみられ、それを背景に物価のプラス基調が続くと考えている」と述べた。
武藤副総裁は世界経済については、「昨年夏場以降、米国のサブプライムローン問題をきっかけに国際金融市場の動揺が続いており、米国を中心に世界経済の不確実性が高まっている」と指摘。「世界経済は地域的な広がりを持ちながら高成長を続けるというのが標準的な見方だが、米国経済や国際金融資本市場の調整が深まる中で、ダウンサイドリスクが増していると考えられる」と述べた。
インフレのリスクにも注意必要
武藤副総裁は米国経済について「現在、景気の減速感が幾分強まりつつある。住宅投資は大幅な減少を続けており、住宅販売の減少と在庫の積み上がり傾向が一段と鮮明になっている。また、サーベイ調査などによると、銀行は住宅向けだけでなく、商業用不動産や一般企業・消費者向けの与信基準もタイト化させている」と指摘。
その上で、先行きについて「住宅市場の調整が進むに連れて、潜在成長率近傍の成長パスに次第に戻っていくとみられる」としながらも、「この先の住宅市場の調整の帰すうや金融資本市場の動向によっては、資産効果や信用収縮、マインドの悪化などを通じて、個人消費、設備投資が下振れ、米国景気が一段と減速する可能性も考えておく必要がある」と語った。
武藤副総裁は一方で、世界経済について「インフレ方向のリスクにも注意が必要だ」と指摘。「経済のダウンサイドリスク、物価のアップサイドリスクの双方に対処していかなければならないという意味で、各国の金融政策は難しい局面にある」と語った。