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合理性よりも市場の思惑を重視するFRBの金融政策(KlugView)
2008/01/07(月)20:50
1月4日に発表された12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が1万8千人増と、市場予想の7万人増を大きく下回り、2003年8月以来の低い伸びとなりました。一方、失業率は、11月の4.7%から5.0%へ上昇し、2005年11月以来の5%台となっています。
米国の景気は、雇用情勢との連動性が強いことで知られています。過去を振り返ると、米国の雇用情勢が悪化すると、米国景気も(ほぼ同じタイミングで)悪化に向い、逆に米国の雇用が増加傾向を続けると、米国景気も拡大を続ける傾向にあります。12月の米雇用統計で、米国の雇用の伸びが4年ぶりの低い結果となったことから、米国の景気は、今後、悪化方向で推移する可能性が高まっているといえます。
米国を始めとする先進国の中央銀行は、景気が悪化方向で推移すると政策金利を引き下げる(利下げをする)ことで、景気を刺激する姿勢を強めます。このため金融市場では、米国景気の悪化見通しを背景に、米国の中央銀行であるFRBが利下げをするだろうとの思惑が強まっています。やや専門的な内容となってしまいますが、雇用統計が発表された1月4日の米国の債券先物市場では、今月にも政策金利を0.5%も引き下げる可能性が66%まで上昇しています。
ただ個人的には、米国の景気が悪化方向で推移しているとしても、政策金利を0.5%も引き下げるのは、あまり合理的でない気がしています。12月の雇用統計における非農業部門雇用者数の内訳をみると、製造業と建設業で雇用は大きく減少していますが、米国経済を支えるサービス業では9万人以上も雇用者数が拡大しています。また失業者数の内訳をみても、職探しを再開したことで失業者数と扱われた人数が18万人以上もおり、米国の雇用情勢が全面的に悪化しているわけではない、つまり、雇用情勢の内容は、米国の金融当局が0.5%も利下げをしなければいけないほど悪いものではないように思われます。
むしろ今の米国経済にとって、政策金利を大きく引き下げることは、景気を押し上げるメリットよりも、物価を押し上げるデメリットの方が大きいように思えます。一般に物価は、金利が低くなればなるほど上昇する傾向にあります。現に原油価格は、米国の景気悪化が指摘されているにもかかわらず、1バレル100ドルに迫る水準を維持しています。
また金利を引き下げることで、米国の通貨である米ドルが下落するリスクも高まります。米ドルが下落すると輸入物価が上昇し、米国内の物価上昇圧力を高める結果となります。
しかし米国での大幅な利下げが非合理なものであっても、おそらくFRBは次回のFOMC(政策金利を決める会合)で0.5%の利下げを実施するのでしょう。なぜなら金融市場は、FRBによる0.5%の利下げを織り込みつつあるからです。
本来、中央銀行は、金融市場の思惑に縛られず合理的な判断をすることが求められるはずですが、FRBは、昨年後半より市場の思惑に応える形で利下げを続けています。人や組織の判断プロセスは、年が変わったからと、急に変わるものではありません。おそらく今年も、米国のFRBは、合理的な判断よりも市場の思惑を重視する可能性が高い気がします。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
12月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は
どれくらいの増加を示した?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
1万8千人の増加
(2003年8月以来の低い伸び)
http://www.gci-klug.jp/klugview/08/01/07/post_175.php