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ドル崩壊はなし・・・あるのはただ下落のみ---【暴落しない巨大債務国通貨ドル】-----第一生命経済研究所
ドル機軸通貨の崩壊とかドルの暴落説がささやかれていますが、第一生命経済研究所のレポートではドルの暴落はなく、あるのはただ価値の下落のみであるという興味深い主張がだされています。
米国の経済実態を検証し、米国が事実上、金融国家(国家全体が銀行と同じ)として機能しており、累積債務国であるにも係わらず所得収支が黒字になっている実態を解き明かしています。
また、世界的にみて各国の対外純資産・純債務はゼロサム・ゲームであり、米国の純債務が減っている裏側で他国の純資産も減り、日本の純資産は2000〜2006年までに▲26%も減額しており日本の対外純資産(国富)が米国に吸取られている可能性を示唆しています。
レポートの内容は非常に穏やかな表現ですが、ひとことで言えば世界中からカネを集め、そのカネを海外で運用(ファンドなどを使って米国以外の国から富を収奪)し、出資者に払った残り(利ざや)や為替レートの調整(為替差損)により対外債務を穴埋めしているというものです。したがって資金繰りに破綻がなければ、どんなに債務が積み上がろうとも破綻しない状況にあると言うものです。
これは例えて言うとまるで「銀行」のようなものです。
銀行はどんなに借金(預金)が積み上がろうがそれによって破綻したりしません。銀行は資金繰りが続く限りどんなに赤字を垂れ流そうとも破綻しないしません。この点をよく理解しておこないとまたしても「騙され、損をする」と言う結果になりかねないので、申し添えます。
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出典 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma_index.html
2007/10/31
「暴落しない巨大債務国通貨"ドル"〜世界最大の累積債務国なのに所得収支は黒字?〜」
米国は世界最大の対外純債務残高であるにもかかわらず、そう簡単にドル暴落は起こらない。不思議なことに、米国のフローの経常収支が赤字でも、それがストックとして対外純債務残高に積み上がった段階で減っている。さらに巨大債務を抱えているのに所得収支は黒字である。海外部門のバランスシートの資産収益率が高いことが、米国の対外債務を発散させない条件になっている。米国のグローバル化はドルを暴落しない通貨に変えている。
○ドルの強さの背景
ドルは不思議な通貨である。ドルを発行する米国は、世界最大の経常赤字国にして、世界最大の対外純債務国である。「経常赤字の持続性*」ないし「対外債務の持続性」を疑問視する立場からみれば、とっくの昔にドルは暴落しておかしくない。それなのに、現段階では緩やかな減価で止まっている。長期時系列データを確認すると、確かにドル価値は2002年1月末に上昇基調がピークアウトして、それ以降は年率▲5.7%という穏やかなペースで減価し続けている(図表1)
※債務持続性の問題は、米国の対外債務拡大が継続すると、長期的にみて債務返済がどこかで行き詰まり、ドルの大幅な通貨調整を余儀なくさせるという議論である。
最近も、サブプライム問題によって米国の資金フローにひとつの異変が起こった。米国の財務省統計で2007年8月に米国に資金流入してきた証券投資がマイナスに転じたことだ(図表2)。米国から投資資金が流出するのは、ロシア危機が起こった1998年以来の珍事である。しかし、こうしたショッキングな変化にもかかわらず、米国から資金流出が持続的に起こるとはみられていない。早晩、逃避した資金は米国に還流してくるという見方が大勢である。本稿では、こうした米国の対外債務が発散していかない理由とドルの行方について、やや構造的な視点から考えてみたい。
(図表1) 名目実効ドルの長期時系列推移 (図表2) 米国への中長期証券投資収支
○米国の経常赤字はストックベースで減っている。
債務持続性の問題は、経常赤字の累積→対外債務の発散→ドル暴落という順序で考えられている。しかし、この順序どおりの出来事が進んでいる訳ではない。
まず、「経常赤字の累積→対外債務の発散」という流れから確認してみると、米国の経常赤字の値を、毎年累積していっても、実績の対外純債務残高とは一致しない。
むしろ、2001年以降は対外純債務残高はほとんど増えていない(図表3)。
具体的なデータを確認すると、米国が対外純債務国に転落した年の前年(1985年)から直近まで、この約22年間で累積経常赤字▲5.7兆ドルのうち実に▲55%が消失している。2006年末の対外純債務残高が▲2.5兆ドルという規模は、不思議なくらいに少ないのである。
(図表3)累積赤字と対外純債務残高 (図表4)米国の対外純資産の状況
では、なぜ米国の累積経常赤字が対外債務として積み上がっていく中で、その半分以上が減ってしまっているのか。 その理由を説明するために、前段階として、対外純債務残高が、海外部門のバランスシート上にある対外資産と対外負債(=海外資産)をネットアウトした数字として表せることを確認しておこう(図表4)
ここでは対外負債が増えると同時に、対外資産が増えていることがわかる。
確かに、経常赤字は累積的に増えているのであるが、一方で対外資産の価値も増えている。
対外資産が増えるから、ネットアウトした対外純債務が減る。
わかりやすく例示すれば、米国の対外資産の中には、海外株式が含まれていて、その時価が大きく上昇することで差し引きとして表される対外純債務が減っていく(図表5)。
実際、2000〜2007年にかけて対外純債務が減額された要因を分解して考えると、その約4割は米国の海外保有株式が増えた要因であった。ほかにも、社債・国債の時価増、直接投資の評価上昇、そして海外通貨の評価増という要因の寄与が挙げられる。
米国の海外部門のバランスシートについて特徴的なのは、資産と負債の両方が同時に大きく成長していることである。
グロスの対外資産残高を名目GDP比でみると、2006年は104%と、2000年時点の64%からみても大きく増えている。
米国の金融・企業部門は、活発にグローバルに展開・投資していくことでバランスシートを膨らませ、その時価上昇が米国の対外純資産を増やす方向に働く。
対する日本は、対外純資産こそ大きいが、対外資産残高の規模が名目GDP比で11%に過ぎず、米国とはケタ違いである。
EU圏でも、対外資産の名目GDP比が147%と米国以上に高く、国際化が進んでいる。最近は、欧米の対外純資産は新興国の経済成長を追い風として受けやすく、世界が経済成長していればその恩恵が対外純資産を増やしやすくなっている。
一方、世界中でみて各国の対外純資産・純債務はゼロサム・ゲームであることも忘れてはなるまい。
米国の純債務が減っている裏側で他国の純資産も減っている日本に注目すると、2000〜2006年までに▲26%減額している(図表6)。
日本の対外純資産は、米国の対外純債務と表裏一体の関係で減っている可能性がある。
(図表6)日本の対外純資産残高 (図表7)日米の所得収支黒字の推移
○直接投資の収益性は抜群
もうひとつ、米国の対外収支には不思議な現象がある。
米国は▲2.5兆ドルという世界最大の純債務残高であるにもかかわらず、所得収支が黒字であることだ。
所得収支は、純資産から生じる財産所得と非居住者の雇用者報酬で構成される。
米国の所得収支の黒字は、巨大な借金を抱えているのに、財産所得で暮らしている家庭をイメージすれば、その異常さがわかるはずだ。
世界最大の対外純債権国である日本の所得収支と比べてみると、日本は2006年中の所得収支黒字が116億ドルを誇っている一方、米国の所得収支黒字37億ドルは日本の約1/3に相当する(図表7)。
米国の対外資産の収益率を、資産・負債を所得受取・所得支払を割って求めてみると、対外資産は13.8兆ドル、対外債務は16.3兆ドルであるので、2006年の対外資産の収益率は4.7%と、対外債務の利回り3.8%と計算できる(図表8)。
この利回り格差があるがゆえに、米国は対外債務が対外資産よりも大きいにもかかわらず、ネットの所得収支が黒字に転化する。
米国資産の収益率の中身をみてみると、直接投資の収益率が10.9%(2006年)と目立って高い(図表9)。
つまり、グローバルに展開した米系企業の収益率の高さが、ドルの強さとも言える。米国の直接投資残高の構成は、欧州が約半分(2006年53%)、アジア18%、ラテンアメリカ17%というのが主な構成になる。欧州に進出した米系企業の収益率の高さが、ドルの収益性を高めている格好である。
なお、比較のために日本の直接投資の収益率を調べると、2006年は7.6%と米国よりも低くなっている。
ここに、日米債権大国の格差が垣間見れる。
(図表8)米国資本と海外資本の資産収益率 (図表9)米国の対外資産収益率の内訳
○ドルは暴落せず、じりじり下落を続ける。
ところで、本稿では、ドル暴落が起こらない構造を分析した訳であるが、その一方で最近のドル安進行は止まるところを知らない。
これは、9月18日にFRBが▲0.50%の利下げに踏み切ったことよって、その副作用が表れているとも理解できる。
今後、もうひとつの追加利下げの副作用であるインフレが加速すると、景気情勢にはスタグフレーションの色彩が強まり、ドル価値は一段と減価していく可能性がある。
ドルのねばり強さとドル安の並存をどう整理すればよいのか。
筆者は、米国の資産収益性の高さがドル暴落の歯止めになっていると考えるが、そのことが緩やかなドル安を否定するものではない。
米国の対外資産の収益力は、ドル下落の引力に対して、それが一気に進まない基礎条件になっているに過ぎない。
今後、ドルの価値がどのように推移していきそうかを考える上では、世界経済の中での米国経済の位置づけに注目していく必要があるだろう。
(図表10)IMFの経済見通し<米国・世界> (図表11)IMFの経済見通し<アジアなど>
最近、米国経済に減速懸念が台頭していく一方、世界経済はアジアなど新興国の牽引力で拡大基調を継続するというデカップリング(非連動性)論が盛んである。
デカップリングの背景は、新興国の内需拡大が強まって、米国向け輸出に依存した経済体質から脱却しつつあると説明されている。
IMF(国際通貨基金)の経済見通しなどをみても、米国経済と世界経済の成長率のコントラストがはっきりと表れている(図表10、11)。
今後、新興国の経済が自律的に成長ペースを強めていくことは、世界経済の成長力と共生している欧米のグローバル企業の収益率を高めて、一定のドル需要を底上げするだろう。
しかし、その一方でそうした企業が、資本投下のウエイトを自国内から新興国へとシフトさせていく可能性がある。
その資金移動は、新興国通貨を切り上げる圧力になる。
また、グローバル化した企業が、新興国での取引の決済通貨としてドルを使い続ける一方で、別の流れとして、ドル一辺倒だった国際決済通貨のポートフォリオを次第にユーロなどにシフトさせていく可能性もある。
いずれのシナリオも、米国の成長率が低下していくことで、ドル価値が緩やかに低下していく趨勢を説明する考え方である。
因みに、円の通貨価値について振り返ると、グローバルな経済成長の中では、ステイタスを低下させることになろう。
現在も、ドル安がじりじりと進行しているのに、円高圧力に意外なほどに起こっていない。
最近の日本企業の海外展開は、直接投資の資産収益率を引き上げる効果を持っていると考えられるが、その影響はドル円レートにはあまり反映していないようだ。
これは、底流にある資本移動が日本から海外に向かっているせいだと理解できる。
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(コメント)
表現は穏やかですが、この論文の意味しているところは深い。
日本の財政赤字は結局どこに行ったのか?そんな疑問さえ出てきますが・・・・・・・
原文を覗いてグラフ、図表の意味するところを考えて見る事をお勧めします。