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http://www.afpbb.com/article/economy/2329354/2464021
【12月24日 AFP】2007年初めには、住宅融資「サブプライムローン」の意味や、それが米国および世界の経済に与えうる影響を認識していた人はほとんどいなかっただろう。しかし今日では、住宅融資の破たんを発端に銀行や証券会社に波及した危機により、米国が不況に向かい、世界経済が危険にさらされるとの懸念が拡大しつつある。
サブプライムローンは米国の不動産ブームの終わりごろ、高騰する不動産から利益を得ようとした金融業者が信用度の低い借り手に資金を提供するようになり、盛んに行われるようになった。これらのローンは証券化され、世界中の投資家に販売されたが、金利が上昇して借り手の支払い額が増えた場合のリスクについて十分な説明がされることはなかった。焦げ付きが拡大すると、米国および世界の銀行は数十億ドル規模の損失を計上するようになった。金融業者は引き締め措置をとらざるを得ず、これにより消費や事業は縮小し、経済全体が脅かされることとなった。
米証券大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のエコノミストJan Hatzius氏は、世界の銀行や投資家が出した損失は概算で約4000億ドル(約45兆6000億円)に上ると指摘する。経済全体からみれば大した損失に見えないかもしれないが、損失を計上した銀行は資本比率が下がらないように貸出規模を縮小しなければならないため影響は拡大するという。結果として貸し出しは2兆ドル(約228兆円)削減される可能性があるという。「(貸し出し削減が)徐々に行われ、資金需要の減少や別部門からの貸し出し増加でいくぶん相殺されるとしても、経済活動へのマイナスの影響は相当なものになるだろう」とHatzius氏は指摘する。
住宅産業の苦境に加え、記録的なエネルギー価格の高騰やドル安により、インフレの加速や景況感の後退が懸念される。一部では景気後退を指摘する声もある。米証券大手メリルリンチ(Merrill Lynch)の北米主任エコノミスト、David Rosenberg氏は「米国は、エネルギー価格の高騰、雇用環境の停滞、不動産価格の下落、金融引き締め措置の実施が同時に押し寄せた1991年以来、初めての消費不況の危機にある」と語る。
議論の焦点は、米国経済が不況を回避できるか、また、米国の景気後退が世界経済にどのように影響を与えるかという点にある。専門家の中では、世界経済と米国経済は「デカップリング(分離)」されているとの見方もあるが、米国での景気後退はなお世界的影響を与えそうだ。ゴールドマン・サックスのグローバルエコノミスト、Peter Berezin氏は「2008年は『リカップリング(再結合)』の年だと考えている」と指摘する。「米国での住宅融資の破たんは明らかに世界の金融市場に影響を与えている。米住宅市場の衰退は世界の住宅市場にも同様の結末をもたらすのではという懸念が出始めている」
米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)のエコノミストPaul Sheard氏は「2008年は2007年より厳しい状況に直面することになるだろう。経済成長は鈍化するとみている」と語る。たとえ米国が景気後退を免れたとしても、世界経済は米国の景気鈍化の影響を受けるという。Sheard氏は「米国の影響を受け先進国の景気が鈍化すれば、これらの国々では貿易だけでなく金融や信認が悪化することによる連鎖的な影響を避けられないだろう」と指摘する一方、「日本を除くアジアや新興市場の成長は減速するものの、中国やインドの勢いを考えれば、健全な経済成長は続くだろう」と分析する。
メリルリンチのある報告では、2008年後半の米国は「穏やかな成長」が予想されているが、それには2009年中頃までに米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、FRB)が政策金利を現在の4.25%から2.0%に引き下げる必要があるという。同報告は、米国以外の国が従来ほど米国への輸出に依存しなくなるため、「歴史的に米国の消費に依存してきたことによる世界経済の不均衡は2008年を通じて解消に向かうだろう」と予測している。原油価格については、需要が下がるまでは1バレル当たり100ドルまで上昇するが、2008年第4四半期までには70ドルを下回る水準まで下がると予想している。また、ユーロや円に対するドル安傾向はしばらく続いた後に反転するとみられるが、アジアや中東、ロシアなど厳しく管理された通貨のドルに対する価値は上がり続けるだろうと予想している。
より明るい予想としては、仏銀行大手ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)ロンドン(London)支社のグローバルエコノミスト、Brian Hilliard氏が、サブプライム問題の打撃は当初の予想より大きかったものの、米国と世界の経済はすでに最悪の局面を脱したかもしれないとしている。「われわれは、世界経済はサブプライム問題の衝撃に耐えられるという楽観的な見方を崩していない。われわれは2008年の米国の経済成長率を市場の一般的な予測より高い2.6%と予想している。実体経済は比較的よいと見られるためFRBは一層の金利引き下げに消極的だというシグナルを出しているが、これは流動的だ」とHilliard氏は指摘する。(c)AFP/Rob Lever