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株式日記と経済展望
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu158.htm
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『バブルへの迷走』 ポール・クルーグマン 21世紀最初の10年に
発生した「革新的」住宅ローンの破裂は大惨事以外の何ものでもない
2007年12月23日 日曜日
PAUL KRUGMAN
◆Blindly Into the Bubble
http://www.nytimes.com/2007/12/21/opinion/21krugman.html?_r=1&oref=slogin
By PAUL KRUGMAN
Published: December 21, 2007
◆バブルへの迷走
http://money6.2ch.net/test/read.cgi/eco/1198241733/
ポール・クルーグマン
1945年、日本降伏を告げる「玉音放送」において、裕仁天皇 は自らの決定を次のような有名な言葉で表した。「戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス。」今週、連邦準備理事会ベン・バーナンキ議長が住宅ローン業界の規制を若干強化するという遅すぎる決定をした。この決定 自体、馬が逃げ出してしまった後に馬小屋の鍵をかけるようなものだったわけだが、その際の釈明も、この裕仁天皇の表現に通じるものがある。
いわく、「市場の規律が乱れが散見され、慎重な融資手続きを取ろうとする動機付けに欠ける場面もあった」。ずいぶんと控えめな表現である。
事実、21世紀最初の10年の中盤に発生した「革新的」住宅ローンの破裂は大惨事以外の何ものでもない。
バーナンキ氏はおそらく、状況の深刻さをありのままに表現することがためらわれたのだろう。結局のところ、バーナンキ氏が慎重に言葉を選ばなかったとしたら、それは氏の前任であるアラン・グリーンスパン氏の非難になってしまっていたはずである。グリーンスパン氏は、市場が崩壊してしまった後ではなく、住宅ブームがまだ続いている間に貸し出しを規制しておくということをしなかった。「馬が逃げ出さないうちに馬小屋の鍵をかけておいてくれ」という声を無視したのである。
筆者は「大惨事以外の何ものでもない」という言葉を慎重に使っている。
グリーンスパン氏が新著で述べているように、住宅ローン業界の擁護者たちは、無秩序な貸し出しのリスクは「住宅所有層が拡大するというメリット」によって正当化されると説く。
しかし、住宅所有層は広がっていないのである。疑わしいサブプライム貸し出しの大部分は2004年〜2006年にかけて行われたわけであるが、住宅所有率はすでに2003年半ばのレベルにまで落ちている。今後、何百万件もの差し押さえが予想される中で、「結局、ブッシュ政権の開始時より終了時のほうが住宅所有率が低かった」ということになりそうな勢いである。
バブルの最中、住宅ローン業界は甘い言葉で何百万もの人々に分不相応な借り入れをさせ、同時に投資家をかついで「AAA 」の札が間違ってつけられたリスク資産に莫大な投資をさせた 。穏当な見積もりによると、1000万以上のアメリカの家庭が資産価値以上の負債をかかえ、投資家は4000億ドルを超える損失をこうむることになるそうである。
世界大恐慌以来有数の金融危機が明らかになる過程で、当局はどこにいたのか。彼らはイデオロギーによって盲目になっていたのだ。
「FRB、サブプライム危機拡大に肩をすくめる」というのが、当局による混乱収拾が失敗に終わったときのニューヨークタイムズの見出しであった。
これは、グリーンスパン氏が、小説『肩を すくめたアトラス』で知られる自由資本主義の擁護者アイン・ランドの弟子であったという経歴に対する控えめな当てこすりだったのだろう。
グリーンスパン氏は1963年、ランド女史のニューズレターに対するエッセイの中で、自由な行動に任せられたビジネスマンは「安全でない食料や薬、詐欺的な証券、そしてハリボテの建物を売ろうとする」という命題を「集産主義者」の神話であると切り捨てた。そして氏は「誠実な取引と高品質な商品について評判を得ることはすべてのビジネスマンの自己利益である」と述べている。
このように見てくると、連邦準備理事であるエドワード・M・グラムリッチ氏が主張したような、詐欺的貸し出し慣行に対する警告をグリーンスパン氏が無視したのもうなづける。
グリーンスパン氏の世界では、消費者に有毒なおもちゃや汚染されたシーフードを売ろうとする行為が起こりえないのと同様、略奪的融資というものもありえないのである。
しかし、グリーンスパン氏のみが民衆の保護よりイデオロギー を優先させたわけではない。サブプライム貸出の狂乱がまさに始まろうとしていた2003年6月の記者会見で、銀行に対する規制を軽減すべきという方針が表明されたときのことを思い出して見るといい。このとき、金融監督を担当する5つの政府機関の代表のうち4人が、銀行規制が書かれた紙の束を前に植木バサミを持ち出した。5人目の代表者である金融監督局のジェームズ・ギルランはチェーンソーを振りかざした。
そこには規制緩和のロビー活動を行っていた金融業の業界団体の代表者たちも出席していた。筆者が報道から知る限りでは、そこには消費者利益の代表者は出席していなかった。
この米国通貨監督局によるパフォーマンスの2ヵ月後、植木バサミをかざしていた当局の一つが、消費者を略奪的融資から保護する州規制からの免除を国法銀行に認めるという動きに出た。もし、例えばニューヨーク州が自らの住民を住民を守りたいと思ったとしても・・・大変恐縮ですが、それは認められません。
もちろん、すべてが狂ってしまった今、金融業に絡んでいる人々は自由な市場が完璧であるという信仰を考え直してはいる。グリーンスパン氏は政府による救済措置に賛成するようになった。「資金は潤沢に用意できる」と氏は言う。納税者の金のことだ。「そして我々は、この歪みからくる問題を解決するために、必要に応じて、より大規模にこれをおわなければならない」。
ローン危機に保守的なイデオロギーが関わっていたことを考慮すると、民主党がこの危機を2008年の選挙の争点にすることに積極的でないのは不可解である。そうするべきなのである。そうすることによって、彼らの敵が持っている経済的信条の誤りは、図式的に提示できるのである。
◆なるほど、そういう仕掛けでしたか−サブプライムローン 11月29日 厭債害債
http://ensaigaisai.at.webry.info/200711/article_19.html
前々からおかしいと思っていたことが多少確認された形となりました。ブルンバーグからの孫引きですが、格付け会社のひとつFitch(フィッチ)社が出したレポートによると、昨年実行された住宅ローンのうち実行後6ヶ月以内にデフォルトとなったものから45件のローンを抽出して調べたところ、三分の二(つまり30件ほど)は借主が居住の意思について嘘をついていた(つまり住むつもりもないのに家を買いローンを借りた)、ということです。(中略)
そもそも多少住宅価格が下がったからといって急激にデフォルト率が上がるって言うのがおかしいと思いませんか?はじめから下がったらデフォルトするつもりだったとしか思えません。Case−Shiller住宅指数がマイナスに転じ始めてからまだ1年も経っていない。はじめから住宅の値上がりを前提に投機を行い、うまくいけば値上がり益(元値がでかいから利益もでかい、しかも金は借りられる)を得て、失敗すれば金を払わないでデフォルト。その場合も家を手放せば債務から開放される(ノンリコース)。そういう仕組みで、投機的な住宅投資が数多く行われていた可能性が強いと感じます。その過程で多くの架空の(実需を伴わない)ローン契約が作成された可能性があります。
ワタクシはもともとサブプライムとよばれる層に対するローンのうち相当の部分が「作成契約」ではなかったかと疑っています。そういうことを行うインセンティブが米国のサブプライムローンと証券化の仕組みの中に組み込まれているのです。今回のサブプライム騒動は「広い層の人々に住宅が与えられるようになるくらいすばらしく成功した米国経済がちょっと行き過ぎてバブルが生じた」という見方が通説でしょうが、そういうボトムアップアプローチではなく投資家の視点からトップダウンで見てみると、違った風景が見えてきます。
まず世界的な低金利状況で運用難のお金がジャブジャブしていたという状況がありました。投資家からなにか有利な運用はないか、という相談を受けた投資銀行が、それまでも恒常的に国債をアウトパフォームしてきたモーゲージ市場に注目します。しかし通常のモーゲージではかなり効率化が進みすぎて余計にフィーを取れる余地が少ない。そこで高金利モーゲージというカテゴリーとして、信用リスクの高い原資産を組み込むことを思いつきます。証券化手法はすでに進んでいましたから、それを使えばサブプライムもトリプルAにすることが出来る。となれば「原資産」を作る必要があります。あくまでも想像ですが、少なくともサブプライムローンの一部は貸し手の側が積極的だった。それは原資産を作れば組成して投資家に販売できることが明確だったからです。そして今回のニュースに現れたように極端な例ではもともと存在しない需要をベースにサブプライムローンが作られてしまった(「作成契約」)のではないか思いました。それだけの強い需要があったことは私たちも感じていました。
値上がりしているうちはとにかく全員がハッピーです。ローンを借りて住んだ人、ローンを借りて投機したひとはいうまでもありません。ローンオリジネーターはビジネスが伸びているうちはどんどんフィーが入ってくる。組成側も投資家からどんどんフィーが入ってくる。投資家はそこそこ高い利回りを得られる。この中においては架空のローン契約すら、いや架空のものを作り出すことでみんなに便益をもたらすわけです。この状況で投資銀行からもっと作れといわれたオリジネーターが架空契約をしなかったという保証はないでしょう。
私がアメリカに住み始めてテレビを見たとき最初ちょっと面白いと思ったコマーシャルがあります。ある銀行の住宅ローンのTVコマーシャルです。ムーディーな音楽をバックにネグリジェを着た奥さんが別の部屋にいる夫にドア越しに熱い愛の言葉をたくさんささやいている。で、ドアが開けられると、中では夫が目を血走らせて住宅ローン申し込みの書類を作るのに悪戦苦闘している。いかに書類作成が大変であり、そしてこの銀行はそういうのをもう少し簡単に出来ますよっていうことを訴えるコマーシャルでした。本来アメリカの住宅ローンを申し込むというのは結構大変な仕事だったようです。ところがこれをサブプライム層に貸し出そうとすると当然No−Docとかそういういい加減な審査にならざるを得ない。これを反対側からみれば、貸し出し業者が書類を調えて適当な人間にサインさせさえすれば(そもそも審査しないんですから)ローンが成り立ってしまう。その適当な人間が必ずしも適法な社会保障番号を持っていたりする必要すらないでしょう。(その番号すらいい加減でありえます。なにせはじめからデフォルトする予定ですから)。
このレポートの結論はもちろんフィッチも認めているとおり「限られたサンプル」によるものであり、一般化するにはもう少し慎重な検討を要すると思われますが、同じレポートでは想定されたデフォルト率を越えた部分の少なくとも4分の1は債務者の詐欺または酷い貸し出し実務によるものと述べているようです。そしてこの結論はこの後の「債務者を救済すべきか」という米国内議論に大きな影響を与えかねないでしょう。
これと合わせて考えたいのは、昨今の米国経済を取り巻く状況です。感謝祭後の売り上げはそこそこ良かったみたいですし、そもそもまだ失業率も低く賃金も高い。ドル安で輸出業も潤っている。「作成契約」が結構多かったとすれば困るのはせいぜい不動産業者ぐらいでしょう。そもそもCase−Shiller指数のレベルは1999年末から80%も上です。殆どの人がまだまだ潤っている。今後落ちるとしても、本来投機やセカンドモーゲージないしホームエクイティーで浪費でもしてない限り、そして金利がそこそこ下がってくれれば、それほど困らないでしょう。もともと家を持つようなレベルの所得がなかった人々に対し、夢を見させただけであり、彼らは家を出てまたもとの暮らしに戻ればいいだけで、消費にそれほど影響が出るとは思いません。そして、もしこのレポートにあるように架空のローンを使って行った損の出にくい投機が失敗しただけだとすれば、アメリカの実態経済にはそれほど被害はないはず。一方で損失はやはり広くアメリカの一部金融を含むとはいえそれ以外の世界がかぶらされてしまったのでしょう。
当事者たちが意図したかどうかは別として、結局損失を世界中にばら撒いたわけです。しかしこれを非難するのはたやすいのですが、こういう仕組みすら作れないようなわが国では、金融立国など遠い夢であろうというのがワタクシの実感です。金融で儲けるということは誰かに損を押し付けたり誰かが本来受け取るべき利益を掠めるという面が多少なりともあるのですから。
(私のコメント)
私は不動産業者であり、バブルの発生から崩壊に至るまでの体験者であり、だからバブルについては様々な考えを述べてきました。アメリカの住宅ローンのことなども9月11日の株式日記でも書きましたが、アメリカの住宅ローンはセカンドハウスも住宅ロ−ンが利用できて金利も経費で落とす事ができるということです。
アメリカも近年までは不動産バブル真っ盛りだったから、小資産家達はセカンドハウスを住宅ローンを利用して投資を行なったのではないかと思う。住宅ローン会社も金がだぶついていたから実際には住まないにもかかわらず自宅ないしはセカンドハウスという書類を作成してローンを利用したのだろう。
アメリカのローンはノンリコースローンだから、値上がりすれば儲かるし担保枠も増える。しかし住宅が値下がりすれば担保の住宅を放棄すればそれで済んでしまう。日本のように住宅ローンの返済が焦げ付けば住宅が処分されるのはもとより、本人と連帯保証人までの資産や所得にまで手が付けられて返済を求められる。だから首を括るしかなくなってしまう。
アメリカのサブプライムローンは低所得者向けローンとテレビなどでは言われていますが、実際には住宅投機に使われていたのが多いのではないかと思う。テレビのニュースでも「売家」の看板が並んでいる光景をよく見かけますが、ほとんどが投機目的で買われた住宅が一斉に売りに出されているのだ。
だから低所得者がサブプライムローンを利用して住宅を購入して、返済できなくて家を明け渡す件数は意外と少ないのではないかと思う。それだけなら今までもS&Lなどのような事もあったから、単なる不動産バブルの崩壊で済んでいたのでしょうが、最近は住宅ローンの証券化が進んで、いろいろなファンドに組み込まれてしまった。
だからファンドが解約されて債権を回収しようにも担保物件は数百から数千に権利が分割されて、権利証も無いから担保処分が出来ない。実際には不動産の証券化ビジネスは詐欺的商品であり欠陥商品であったのだろう。担保の不動産が値上がりして収入をもたらしているうちは何の問題も無いが、値下がりして焦げ付いたら担保は回収の目処がつかない。
だからゴールドマンサックスや慎重な投資会社はサブプライムローンがらみの投資ではいち早く手を抜いて火傷は少なかったようだ。しかし多くの大手の金融機関は不動産バブルの崩壊の影響をもろにかぶって、金融機関同士のコール市場はマヒ状態に陥ってしまっている。
ポール・クルーグマン氏の記事にもあるように、貸す方にも借りる方にもモラルハザードがおきてしまったのだろう。無秩序な貸し出し競争が起きたのは日本もアメリカも共通している。グリーンスパンはもっと早く金融の引き締めをやるべきだったのだろう。馬はすでに馬小屋から逃げ出してしまったのだ。
ポール・クルーグマンの記事によればサブプライムローンは実際には低所得者ではなく、小金持ち達による住宅投資であったようだ。規制の緩和がこのような投資を可能にしたのですが、それがアメリカの景気をひっぱって来たのも事実だ。しかし90年代から根拠無き熱狂と呼ばれ不動産バブルもその頃から続いてきたのであり、9・11のテロ騒動で金融の引き締めのタイミングに狂いが生じたのだ。
しかしバブルの崩壊もどの程度のものかも知れず、まだ始まったばかりなのだ。住宅投資ブームも長いこと続いてきたから調整にはかなり長い間かかるのではないかと思う。アメリカは景気が良かったから中南米を初めとして世界から移民が押し寄せてきて人口も3億人を越えた。だから住宅投資ブームが起きたのですが、景気が落ち込めば仕事も減って移民たちも国に戻るかもしれない。
アメリカにとっては規制の緩和は一つのイデオロギーでもあるのですが、サブプライム問題はそこから生じた歪みであり、新自由主義経済も一つの転換点を向かえたようだ。自由が行きすぎれば詐欺師たちが暴れまわってその犠牲者たちを増やしていく。その犠牲者を救済するためには国が関与せざるを得ず、救済には税金が使われる事になるだろう。つまり小さな政府は間違っているのだ。