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2007年12月17日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.458 Monday Edition
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■■村上龍プロデュース・村上新一郎個展のお知らせ■■
プライベートなお知らせで恐縮ですが、このたび福岡の地で初めて父・村上新一郎
の個展を開催することになりました。風景画を中心に展示します。父は83歳になり
ましたが、いまだ創作意欲は旺盛で、繊細で、人を温かい気持ちにさせる筆づかいは
健在です。ぜひ、大勢の方々に見ていただきたいと思います。会期中は、わたしも福
岡に滞在し、会場に足を運ぶ予定です。
村上龍
●村上新一郎個展●
■期間:2007年12月18日(火曜)から12月23日(日曜)
AM 11:00〜PM 7:00(最終日はPM5:30まで)
■会場:ギャラリー「おいし」1F
〒810-0001 福岡市中央区天神2-9-212(新天町南通り) tel 092-721-6013
http://tenjinsite.jp/mapnavi/kihon.php?tel=092-721-6013
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▼INDEX▼
■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第458回】
□真壁昭夫 :信州大学経済学部教授
□水牛健太郎 :評論家、会社員
□三ツ谷誠 :三菱UFJ証券 IRアドバイザリー部長
□菊地正俊 :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
□杉岡秋美 :生命保険関連会社勤務
□山崎元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
□金井伸郎 :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
□津田栄 :経済評論家
□土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部准教授
■ 『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』
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■ 先週号の『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』
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Q:840への回答ありがとうございました。もう12月も中旬で、時の流れの速
さに愕然とすることがあります。何とか仕事はこなしているのですが、あまり体調が
よくありません。みなさんもくれぐれもご自愛ください。
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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第457回目】
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====質問:村上龍============================================================
Q:841
インドネシアのバリ島で地球温暖化に関する会議が開かれています。いわゆる「環
境ビジネス」ですが、今後本当に有力な産業になっていくのでしょうか。
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※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
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■ 真壁昭夫 :信州大学経済学部教授
環境ビジネスのカテゴリーを、どこまで見るかによって見方はやや異なると思いま
すが、環境ビジネスの範疇を、自然環境の悪化に対する配慮や、既に悪化してしまっ
た自然環境の改善のための活動と考えると、基本的には拡大する産業分野と考えます。
人々の関心は移ろい易いので、環境ビジネスが、現在のようなアップトレンドを未
来永劫続けられるとは考えにくいものの、地球温暖化などの弊害が顕在化している以
上、環境問題は、それぞれの国が相応の関心を持って取り組むべき問題と認識されて
いるはずです。そうした状況を勘案すると、環境ビジネスに対するニーズは高まる可
能性が高いと思います。
一般的に、環境ビジネスが拡大するには、いくつかの要件があると指摘する専門家
もいるようです。一つは、環境問題を考える余裕があること。つまり、相対的に高い
経済成長が続き、自然破壊などの環境問題を意識するだけの余裕が必要だということ
です。今日、食べるものにも事欠くような、経済的に厳しい状況に追い込まれている
と、如何にして生命を維持するために食料を見つけるかが重要で、環境に対する配慮
どころではないでしょう。ある程度、経済的に余裕のある時期が続かないと、環境ビ
ジネスの拡大は考えにくいことになります。
二つ目は、自然破壊などによって、人々が受けるデメリットが顕在化していること
です。人々は、産業の発展によって自然破壊が進んでいると指摘されても、実際に、
その弊害を目で見たり、弊害を受ける立場になると、より環境問題に対する関心度合
いが上昇することになります。「これだけのことが起きているのだから、例えコスト
が掛かっても、環境に配慮する必要がある」との認識をすることになります。
三つ目は、環境ビジネスの技術力があることです。何らかの技術力があれば、自然
環境の破壊を食い止められたり、あるいは、自然資源利用の効率性を向上させること
が明確になります。それは、環境ビジネスにとって、とても重要なことだと思います。
例えば、水の汚染に関して、工業排水に含まれる有害物質を、イオン交換膜などの技
術で除去することが明確であれば、追加的にコストを掛けて技術力を導入することが
必要なことが分かります。
さらにもう一つのファクターは、外部不経済が発生することが明確なことです。例
えば、昔、わが国で起きた水俣病のケースでは、多額の公害補償費用の発生によって、
大きな外部不経済が発生し、企業業績が大きく低下したことがありました。そうした
状況を考えると、初期段階で、コストを掛けても汚染対策を行った方が、経済合理性
が高いと判断されます。
これらの要因を考えると、当面、こうしたファクターは我々の身の回りに存在する
と思います。例えば、温暖化によって、国土の多くが水没する国もあります。あるい
は、すでに北極圏の氷が解け出して、ある種の動植物は絶滅する懸念が高まっている
ことがあります。これらは、現在、かなり差し迫った問題と認識されていると思いま
す。それは、ゴア元米副大統領が、ノーベル賞を受賞したことでも分かります。
また、わが国のように高い技術力を持つ国は、その技術力を使って環境問題に対処
することが可能です。その技術力を他国に移転させたり、技術協力を行うことも出来
ます。それによって、収益チャンスが増えることも考えられます。企業の収益面から
みても、環境ビジネスを拡大することに大きな意味もあるでしょう。
さらに、世界的に経済活動が活発化し、相対的に高い経済成長を達成してきた結果、
環境問題を真剣に考える余裕を、多くの国が持ち始めていることも確かです。それに
伴い、公害問題などの不経済が発生したときの負担額の大きさも、十分に認識され始
めていると考えます。これらの要因を考えると、当面、環境ビジネスは拡大の過程を
辿ると予想します。
信州大学経済学部教授:真壁昭夫
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■ 水牛健太郎 :評論家、会社員
結論からいいますと、有力な産業になっていくと思います。それは、環境ビジネス
というものが一時的なものでなく、必要性から長期的に発達してきているものだから
です。
現在、環境ビジネスと呼ばれるものは多岐に渡っています。太陽エネルギーや風力、
地熱などの自然エネルギーの利用、省エネルギーのための各種技術、廃棄物処理、リ
サイクル関連、自然環境の保全・再生など。また、環境配慮型(いわゆる「地球にや
さしい」)商品というものがありますが、「環境配慮」の中身も製造法が省資源型で
ある、環境を汚さずに廃棄できるなどさまざまです。
環境ビジネスは、国際機関や各国政府のお墨付きから善意の個人にいたる多くの後
押しに支えられています。企業に対してはリサイクルなどの法的規制、監督省庁や業
界団体を通じてのCO2排出削減の目標設定などが課せられており、こうした規制な
どに答えるための各種手段が必要とされ、それがまた、環境ビジネスの大きな市場を
生み出しています。投資先企業が社会的責任を果たしているかどうかを基準とする
「社会的責任投資」の圧力もあり、企業のCSR(社会的責任)活動も盛んになって
います。CSR活動の有無が、その企業の株価にも影響するというわけです。こうし
たなか企業活動の省資源化や自然環境の保全・再生は、投資家にアピールするわかり
やすい社会的貢献として人気があります。
かつて自然環境は経済システムの外部にあるものとされていました。経済活動が自
然環境を損ねることを「外部不経済」と呼んでいたのをご記憶の方もいらっしゃると
思います。本来市場とは関係がないところで、意図しない「不経済」が生じる、とい
う意味です。
こうした認識は大きく変わり、現在では市場経済の枠内で環境を保全していこうと
する考えが主流になっています。それは、公害など自然環境の汚染の深刻さが認識さ
れたせいでもありますし、また市場経済がグローバルなものとして発展しつづける中
で、自然環境の悪化による破綻を避けようとすれば、事実上それ以外に選択肢がない
ということもあると思います。
「市場経済の枠内で環境の保全を果たしていく」ということを分かりやすく言えば、
自然環境を保全するということ自体に経済的な価値を付けていくということです。つ
まり、環境を保全すると得になる枠組を作り、後は市場を利用して効率的に保全しよ
うというわけです。この枠組に付随して誕生するのが環境ビジネスだといえるでしょ
う。
本来、自然環境は損なえば損なうほど経済的に得になる傾向があります。原油や石
炭を欲しいだけ採掘し、CO2を好きなだけ排出し、工場の土壌などは汚せるだけ汚
して放っておけば何の費用もかかりません。それを180度転換し、保全すると得に
なる仕組みを作るのは容易ではありません。
そこで大きな役割を果たしているのは、政府の規制です。自然エネルギーの開発・
利用に補助金を出したり、廃棄物による汚染にペナルティを課したり、メーカーにリ
サイクルを義務付けたりします。それにより、「環境を汚すと損をする、保全すると
得をする」枠組を作っています。こうした政府の規制の背景には、言うまでもなく人
々の環境意識の高まりがあります。
環境意識の高い人々は消費者としても重要な役割を果たしています。多少高くても
エコマークなど「環境にやさしい」とされる商品を選ぶことにより、環境を意識する
ことが企業にとって得になるようにしています。
本来市場経済になじまない環境保全を市場経済の中に組み込むために、ゲーム理論
も使われています。ゲーム理論は、あるルールのもとで各プレイヤーがそれぞれ自分
の得になるように行動すると、全体としてどのような結果を生むか研究するものです。
これを応用して、それぞれのプレイヤーが自分の得になるように行動すると、全体と
して好ましい結果になるように制度(ゲームのルール)を設計することができます。
CO2排出権の取引というものがありますが、これはCO2を多く排出する先進国が、
排出量の少ない途上国から「CO2を排出する権利」を買うという枠組みを設定し、
結果として全体の排出量を一定量以下に抑え込むように狙ったものです。排出権の売
り買いという発想はゲーム理論を応用しています。突飛に感じるのですが、実際にか
なりうまく機能しています。
このように環境ビジネスは市場経済の中で環境保全を実現するという目的に則って
おり、大きな推進力を持っています。今後もその守備範囲やビジネスとしての規模が
広がっていくことは間違いないと思います。ただ、100%再生紙やペットボトルの
リサイクルが実際には環境保全に逆行しているという指摘もあります。環境ビジネス
の手法や実際に環境保全に役立っているのかどうかという点も含め、常に点検してい
く必要があるでしょう。
蛇足かもしれませんが、なおも残る問題を簡単に指摘しておきたいと思います。一
つは、市場経済で本当に自然環境を保全することができるのかどうかという問題です。
これは今後の取り組み次第と考えます。環境破壊の現状は深刻なもので、楽観を許し
ませんが、市場が世界を変えていく力もときに驚くべきものがあります。
もう一つ、更に根本的な問題は、そもそも人間は自然環境を保全しなければならな
いのかという点です。人類の存在自体が根本的な環境破壊要因であり、そもそも人類
の存立は自然環境と両立しない、という考え方もあると思います。簡単に結論が出る
ような問題ではありませんが、付け加えておきたいと思います。
評論家、会社員:水牛健太郎
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■ 三ツ谷誠 :三菱UFJ証券 IRアドバイザリー部長
「倫理性とビジネス」
環境ビジネスがビジネスとして成立するかどうかは、逆説的ですが、その世界に生
きる人々が倫理的であるかどうか、に依拠すると思います。
資本主義社会におけるビジネスの目的は永遠の顧客の創造であり、そのためには企
業は自らが提供するサービスの本質を常に追求し、顧客満足を勝ち得なければならな
い。利益とはそれ自体が目的ではなく、その提供する顧客満足の対価として計測され
る「指標」でしかない。
それが多分、資本主義の本質、ビジネスの本質なのだと思います。
すると企業は、顧客満足を提供するために、顧客がその人生において何を目的に、
何を喜びに生きているのか、生きていこうとするのか、を常に考えなければならない。
そして生きるということが、自然との何らかの共生を通じてしか達成できないプロセ
スである以上、自然環境をどう保全するか、健全なものとするか、は顧客がベースと
して追い求めるものとなる、ということになるでしょう。
また、生物としての人が遺伝子の要請なのかどうかは別にして、子孫の繁栄を願わ
ずにはいられない(永遠を希求せずにはいられない)存在であるならば、その意味で
も顧客である人は、借り物である地球環境の保全を常に願う存在であり、それが倫理
を構成する一つの要素となると思います。
更に人は、より良く生きるために同じ時間を生きる他者を思いやる存在でもあるで
しょう。それもまた倫理の問題です。
つまり倫理性に裏打ちされた資本主義的な人間集団を前提にすれば、環境を護るた
めの技術やコストは、当然に求められるものであり、それが顧客満足に繋がる以上、
そこには利益が存在し、ビジネスが成立する、ということでしょう。
これは漏れ聞いた程度の話ですが、例えば日本を代表する或る自動車メーカーは真
剣に、「走れば走るほど、逆に地球の大気を洗浄していくマシン」としての自動車を
究極の理想に研究・開発を進めているそうです。
トヨタのプリウスをハリウッドスターたちが強く支持するような構図で、このよう
な流れは揺るぎなく続いていくように感じます。
三菱UFJ証券 IRアドバイザリー部長:三ツ谷誠
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■ 菊地正俊 :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
環境ビジネスは既に、有力な産業になっているといえます。日本はエネルギー効率
が極めて良い国で、企業の省エネ技術も優れているため、国際競争するうえで、環境
技術は日本企業の強みになっています。2008年も洞爺湖サミットなどに向けて、
新たな環境規制や環境ビジネスが注目されるでしょう。環境ビジネスにも様々な分野
がある中で、日本が強みをもつ分野は原子力や太陽光です。
日本は米国、フランスに次ぐ世界3位の原発保有国です。原発は日本では安全性な
どで問題視されましたが、世界的に見ると成長産業といえ、中国、インド、米国など
で原発の多数の新設が計画されています。2006年に世界の主要原発メーカー間で
合従連衡が進行しました。東芝が米国のウエスチングハウスを買収し、三菱重工業は
ウエスチングハウスとの提携を解消し、フランスの原子力大手のアレバと提携しまし
た。日立製作所は米国GEと原子力事業を統合しました。日本のメーカーは規模や収
益性の面で、GEやアレバに適いませんが、成長性ある原発分野に日本企業が上位企
業として残っている点は評価されます。日本は原子炉の一次部品の日本製鋼所や、原
発用の水処理のオルガノなど部品メーカーの奥行きが深いという特徴もあります。
日本は太陽電池生産大国であり、世界の太陽電池生産量の約半分を占めます。太陽
光発電の導入量も2005年にドイツに抜かれるまでは世界1位でした。日本は政策
的に太陽電池普及を推進する欧州に対して競争力を低下させつつあるという見方もあ
りますが、まだ高いシェアを維持しています。世界の太陽電池生産の上位5社のうち
4社は日本企業です。シャープは1963年に太陽電池の量産化にいち早く成功し、
太陽電池の生産量は2000年から6年連続で世界1位となりました。京セラや三洋
電機が2番手グループです。出遅れていたカネカも120億円を投じて、太陽電池の
生産能力を倍増すると報じられました。太陽電池の増産計画が相次ぐ中で、生産に必
要な結晶シリコン不足がボトルネックになっています。
世界風力エネルギー協会によると、世界の風力エネルギー総設備容量は2005年
の59091MWから2006年に74223MWへ増加しました。地域別では20
06年末の風力エネルギー総設備容量の65%を欧州が占めましたが、米国やアジア
でも増加しています。国別ではドイツが1位で20621MW、スペインが2位で1
1615MW、米国が3位で11603MWである一方、日本は1394MWと世界
シェアは2%弱に過ぎません。日本は欧米に比べて大気の乱れが大きく、設備利用率
に起因する高い発電コストが風力発電の普及の障害となっています。風車の世界シェ
アでは米国のGEとデンマークのベスタスが各々3割、2割のシェアをもちます。三
菱重工業の2005年の風車生産は261MWで、国内シェアは57%で1位ですが、
世界シェアは10位で僅か2%でした。
バイオマス(生物起源)エネルギーとは化石資源を除く、動植物に由来する有機物
で、エネルギー源として利用可能なものをいいますが、農業に弱い日本に競争力はな
く、関連企業の収益は高まっていません。一方、土壌浄化・地下水浄化、資源リサイ
クル・廃棄物処理市場は拡大しています。産業廃棄物処理専業最大手のダイセキは、
政府の環境規制の強化、民間企業の生産活動の増加、廃棄物処理工場の増設による
シェア拡大など背景に、急成長を続けています。不透明な慣行も残る産廃処理業界に
あって、同社のシェア拡大余地はまだ大きいといえます。
メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊
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■ 杉岡秋美 :生命保険関連会社勤務
日本の2006年度の温室効果ガス(CO2、メタン、窒素酸化物等)排出量は、
速報によると約13.41億トンとなり、京都議定書の基準年の1990年排出レベ
ルの12.61億トンに比べると6.4%上回っています。京都議定書で日本が約束
した、1990年度レベルの6%減という目標値には、あと12.4%を削減する必
要があります。これを、第一約束期間である2008年から2012年までに達成す
るのが当面の目標です。
排出量の内訳では、温室効果ガスのうち9割弱を占めるエネルギー起源のCO2
は、基準年から11.8%増加してしまっています。その発生源では商業・事務所
(プラス41%)と家庭部門(プラス30.4%)がワースト2で、優等生は工場等
の産業部門でマイナス5.6%を達成しています。これからやらなければならにこと
は、大雑把にいって、国民の生活レベルや生産レベルに直結したエネルギー消費量を
10〜20%減らすか、その分エネルギー効率を高めることです。不可能ではないに
せよ相当大変な目標です。行政主導で様々な行動計画が定められています。
これに向けた「環境ビジネス」といっても、エネルギー効率を高める商品や手法を
開発してそれをものとして販売するビジネスと、京都メカニズムと名付けられた、効
率化によって達成された排出量そのものを取引するビジネスとはだいぶ様相がことな
ります。
前者に関しては、日本はもの作りの伝統を生かし、世界トップレベルの省エネ技術
を発達させることで、主要産業に育てつあるように思われます。
日本の産業界の省エネには歴史があります。1970年代の2度のオイルショック
以降、1979年に省エネルギー法が成立しています。1997年の京都議定書をう
けて、1998年に省エネルギー法が改正され、工業製品に省エネ目標が設定され、
業界団体により自主行動計画が策定されました。これらは、一応罰則付きの目標値と
なりますから、目標未達成の場合は名前が公表されたり罰金が課されたりします。
こうした措置により、日本の場合「省エネルギー」という外部経済効果を法律によ
り内部化する仕組みがスムースにワークしているように思います。
例えば、空調機メーカーやビル設備メーカーなどのホームページを覗いてみれば一
目瞭然ですが、製品の一番の差別化要因は省エネ性能です。車や白物家電など消費者
に親しみのある商品でも、省エネは消費者に真っ先にアピールする特徴の一つとなっ
ています。
日本の企業は、もの作りが好きで小型化や軽量化というお家芸が省エネルギーとい
う分野にぴったり適合したという事だと思います。加えて、最近の石油価格高騰も、
日本の省エネ技術の価値を高めることとなるでしょう。
このように、実際の「省エネ」製品を介在した形での「環境ビジネス」は、すでに
立ち上がった産業で、今後日本の重要な輸出産業として隆盛の兆しをみせています。
ただ、日本のようなやり方で、省エネ産業は立ち上がっていますが、エネルギー源
として化石燃料(と原子力)に依存した状況はそのままなので、再生可能エネルギー
を積極的に利用しているEUのような方向性からはかなり異なっています。今後、さ
らにCO2を削減したり、原子力を見直したりする必要がでてきたときには、別の方
策の必要性出てくるでしょう。
京都会議で京都メカニズムとして提唱された、発展途上国における排出量削減を、
排出権取引を通じて自国の削減として参入するビジネスに関しては商社などの先駆的
な実績が出始めています。まだ量は少ないですが、2012の議定書の期限までに国
内での削減量が足りなければこの取引を通じて調達することになるでしょう。
生命保険関連会社勤務:杉岡秋美
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■ 山崎元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
市場の機能の観点から経済の仕組みの中で環境について考えると、一つの問題は、
有害な廃棄物や空気・景観なども含めて、全てのものに所有権が付与されていないと
いうことです。排気ガスや廃液のような価値がネガティブなものについても責任を伴
う所有者が確定されていて、これを何らかの価格で(支払いになるでしょうから、マ
イナスの価格ということになります)移転しなければならないとすれば、汚染の程度
やその処理コスト、汚染を犠牲にした場合に得られるメリットなどを、市場の価格メ
カニズムを通じて評価し調整することができると理屈上は考えられます。
大きくは排出権が設定されてその取引が行われたり、小さくは物の処理費用を購入
者に負担させるような仕組みが出来てきたことは、環境問題の解決に市場・価格メカ
ニズムを取り入れようとしているものと考えることが出来ます。こうした状況下で
は、たとえば、排気を処理する技術や、エネルギーの効率を上げる技術などは、その
経済価値を分かりやすく評価することが可能であり、直ちにビジネスとして普及・確
立されるでしょう。
但し、全ての物に上記のような意味で所有権を設定することは簡単ではありませ
ん。所有権を義務を伴うものにするには、たとえば発展途上国で焼き畑農業を行う農
民に大気汚染の責任を問う仕組みが必要ですし、われわれの生活の周辺でも、ゴミの
不法投棄の禁止を有効に機能させるためには法律の制定や取り締まりを行うコストが
必要です。
また、そもそもどのような行為がどの程度環境を破壊し、広い範囲の人々にとって
デメリットをもたらしているのかという因果関係について確定することも簡単ではあ
りません。結論があっても、これを広い範囲の人に理解・納得させることが容易では
ありませんし、多くの場合、研究結果が複数あったり、そもそも研究自体が困難で
あったりもします。市場メカニズムが最適な状態を導くためには、取引に関する正し
い情報と知識が普及していなければなりませんが、環境に関連する分野では、この前
提が満たされている場合の方が稀でしょう。たとえばタバコの害については随分研究
されていますが、内容や程度の異なる説が多数あり、たばこを一本吸うことの他人と
環境に与えるダメージの経済的な評価はまだ確定していません。
また、二酸化炭素の排出権などもそうですが、権利の取引を行うとしても、情報の
伝達、さらには契約や取引の実行にもコストが必要です。コストゼロで関係する当事
者が均衡状態に達することはできません。
以上のように考えると、環境問題を「経済化」してビジネスの対象にすることが難
しいようにも感じますが、やや長い時間について考えると、悲観する必要はないよう
に思えます。それは、環境の被害が拡大し耐え難いものになればなるほど、環境問題
に対する人々のニーズが高まり、結局環境対策に対する経済的な価値が高まるからで
す。
たとえば環境問題で槍玉にあがることが多い中国でも、2006年3月に全国人民
代表会議で発表された第11期5カ年計画では省エネに関する目標が設定され、翌年
には省エネルギーに関する法律が改正強化され、資源を浪費する工場は爆破・解体と
いうことも行われるようになっています。中国発の環境問題はまだ急にはなくならな
いでしょうが、こうした変化に伴って、省エネルギーや環境に関する技術に経済価値
が発生することは明らかです。また、昨今の原油価格の上昇も、省エネルギーへの努
力を促進し、環境問題に対してはプラスに働く面があります。もちろん、中国の国民
の生活水準が上がるにつれて、彼らの環境に対する要求水準も上がってくるでしょう。
負の価値の財に有効な所有権が設定されていないケースが多々あることは事実です
が、環境に関する被害が拡大すればするほど、経済的には環境対策の価値が高まり、
環境関連ビジネスのマーケットが拡大します。あくまでもビジネスの観点からです
が、現在、環境問題に関する国際的な実効性のある合意が上手く行かない状況は、将
来の環境ビジネスのマーケットを拡大していると言えるでしょう。かつて、石油危機
をきっかけに、日本の省エネルギー技術が進歩したような現象が、将来にあって、環
境対策を巡って世界中で起こることが経済的なロジックからは期待できると思いま
す。ご質問に対する回答は、環境対策ビジネスは、必然的に有望な産業となるだろ
う、ということで良かろうかと思います。
但し、我々の認識の正確さや技術にはその時々で限界があり、環境のダメージが不
可逆的で回復不能なものになったり、将来回復が可能であっても非常にコスト高なも
のになる可能性はあります。各種の国際的な規制や目標設定、また排出権取引のよう
な市場メカニズム導入の努力といった対策をなるべく早くから実施していくことが、
我々にとっての環境問題のリスク縮小に役立つことは間違いありません。
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元
<http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/>
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■ 金井伸郎 :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
「環境ビジネス」の市場規模については、様々な捉え方があるようです。現状の市場
規模についても、経済産業省が約48兆円(2001年時点についての試算)、環境
省が約30兆円(同2000年)、日本機械工業連合会が約22兆円(同1997
年)と試算するなど、かなりの幅が見られます。ただし、産業の成長性という観点か
らは、経済産業省が2010年における市場規模を約67兆円と予測するなど、各団
体が40−60%の拡大を見込むなど、共通して高い成長性のある有望なビジネスと
捉えているようです。
日機連の分類によると、環境ビジネスは大きく「公害防止・水利用」「廃棄物処理
・リサイクル」「環境修復・環境創造」「環境調和型エネルギー」「その他」に分類
されています。これらの内、「公害防止・水利用」と「廃棄物処理・リサイクル」が
併せて約9割を占める一方、最近注目を集める「環境調和型エネルギー」などは急速
な成長が見込まれるものの、2010年時点の市場規模予測でも約2000億円程
度、構成比でも1%未満に留まります。
一部には日本の産業の国際競争力の新たな核となる産業として期待する向きもあり
ますが、海外へ移転が可能となる技術や製品につながる機器あるいはプラントに直接
関連する市場規模は2010年時点の予測で3兆7千億円程度、「環境ビジネス」の
市場全体34兆円の11%弱となります。「環境ビジネス」は産業全体としての市場
規模はそれなりに大きなものとなりますが、大部分をサービス、現地施工などの分野
が占めるのが実状です。
一方、「環境ビジネス」を経済学的に特徴付ける上では、「外部性」という概念が
参照されます。これは、環境ビジネスが提供する財・サービスが利用(=消費)され
ることによって、環境保全・環境改善という共通の便益が広く社会全体で共有され
る、という認識を捉えたものです。
ここでの外部性=環境保全・環境改善のような「正の外部性」を持つような財・サ
ービスの消費については、これを一般の経済合理性に基づく市場原理に任せると、消
費が過少となる性向があるとされます。ここでいう「過少」とは、外部性を含めた社
会全体への便益を考慮した場合における最適な資源配分を下回る、という意味です。
このような「外部性」の概念は、公共事業の正当性を主張する根拠の一つであり、
義務教育や道路建設も同様の理由によって公共の事業として行われているといえます。
公共事業の対象に取り上げられた分野を見ていきますと、公共事業特有の非効率性に
よるものか、依然として財・サービスの供給(=消費)が過少に留まっている一方、
公共支出の面では過大となる傾向が指摘される分野が少なくありません。
様々な環境対策が私たちの生活の質を維持する上で(生存を維持する上で、と考え
る向きもあるでしょう。)重要であることはおそらく間違いないのでしょう。同時に
「環境ビジネス」として拡大していく産業分野については、(1)そもそも「外部
性」という一般の経済合理性の枠外に依拠する産業であること、(2)廃棄物処理や
環境修復・環境創造など公共事業の対象とされる分野が多いこと、(3)「環境」と
いう言葉を冠した事業に対して批判的な意見を表明しにくいこと、などから経済非効
率性や特定の権益が入り込まないように注意していく必要があると思われます。事業
内容の開示とともに、その事業成果についての客観的な評価の仕組みを整備する必要
があると考えます。
一方、二酸化炭素の排出など負の外部性(外部不経済性)の問題に対する排出権取
引の導入などを通じた「内部化」の手法についても、その効果と有効性を考えて見ま
しょう。例えば、こうした排出権の概念を導入することで、既存設備の更新/維持に
ついての判断も、既存設備と新規設備についての一般的な経済合理性の観点からの評
価である(1)生産性、(2)減価償却負担からの比較に加えて、(3)二酸化炭素
の排出などの環境負荷、といった評価を行わせることで、既存設備の更新を促進する
ことで結果的に環境負荷の少ない最新設備への更新を促すことが大きな効果となると
考えられます。
こうした「内部化」による二酸化炭素の排出量の削減などの実質的な効果について
も、必ずしも、期待されるような二酸化炭素の排出量削減などに直接貢献する技術開
発など、「環境ビジネス」の特定の分野を通じてのものだけではないことには注意が
必要でしょう。
外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎
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■ 津田栄 :経済評論家
15日にバリ会議はバリ・ロードマップを採択して閉幕しました。アメリカの反対
で難航しましたが、数値目標をはずした結果、何とか妥協してまとまりました。日本
は、来年の北海道洞爺湖サミットを控え、ここでの交渉決裂を回避するため、アメリ
カ側に立って消極的な姿勢をとっていたといわれています。環境先進国を目指す国と
しては、何ともちぐはぐな対応をとっているように感じます。その結果として、日本
の高い技術力を持つ環境関連企業が不利に扱われないのか気になるところです。
今回は、先進国だけでなく、新興国、途上国も温暖化ガスの削減努力を承認した全
員参加型のロードマップである点で、京都議定書をより一歩踏み込んだことになり、
2009年末までを交渉期限として各国の数値目標設定でもめる恐れは高いのです
が、アメリカは今後環境重視に舵を切って欧州と主導権を争い、環境ビジネスを推進
する可能性があり、中国も環境シフトへの動きを見せるなど、各国の環境への取り組
みが更に進むとみていいのではと思います。
そうした観点から、悪化していく環境をいかに食い止め、改善していくかというニ
ーズが生まれ、大きくなっていくことが見えてきていますので、環境ビジネスは今後
広がり、有力産業になっていくと捉えていいのではないでしょうか。もちろん、各国
が数値目標で合意できず、環境に対する関心が後退すれば、需要が見込まれず、有力
産業にならないかもしれません。特に、新興国や途上国は、環境改善の数値目標によ
るコスト上昇が経済成長を抑制するのを警戒し、抵抗が強いからです。
それでも環境悪化による気候変動は今後も激しくなり、災害による被害が拡大し
て、その損失のほうが大きくなることが予想され、成長が少し犠牲になっても環境を
良くすることがメリットになると理解できたとき、新興国、途上国としても環境改善
のために温暖化ガス削減に協力することになると思います。その意味で数値目標を先
延ばしにしましたが、環境への関心は一段と高まることになり、各国の意思がまとま
ると思います。また水質汚濁や乾燥化・砂漠化などにより農産物生産が減少したり、
健康被害が広がったりする事態が出てくれば、さらに環境問題は、切実な問題として
意識されることになるのではないでしょうか。
ところで、ビジネスは、ひずみがあり、経済的ニーズがあって、それを埋めると利
益が得られるところに生まれてくると思っています。今回も、環境悪化による気候変
動で災害が生じて社会的、経済的なひずみが生まれ、それを解決しようという経済的
ニーズがでてきましたから、環境ビジネスの芽は着実に大きくなってきているはずで
す。今後、その必要性が高まってくれば、利益を生み出すビジネスとなり、競争が生
まれて市場が大きくなり、産業として有力なものになっていくはずです。
また、環境問題は、一国の問題では解決しません。たとえば黄砂や酸性雨などのよ
うに、日本が環境規制を敷いても、中国が規制しなければ、中国による環境悪化は日
本に及びます。そして、企業や個人に規制をかけても、どこかが守らなければ、環境
改善にはつながりません。つまり、各国は、地球と全人類に対する責任として国内の
企業や個人に規制をかけ、彼らがそれを守るように認識させることが求められます。
そういう状況になれば、環境ビジネスはさらに大きくなっていくのではないでしょう
か。
一方、今回のバリ会議で新興国、途上国が争点にしていることは、環境資金に関す
る資金支援や技術移転、環境投資などですが、先ほどのように地球規模の問題として
考えるならば、そしてそれがひいてはそうした国々の経済の発展とともに先進国の利
益になると考えるならば、いずれそうした動きが進むと考えられ、そのことからも環
境ビジネスは求められ、拡大していくのではないかと思います。
最後に、日本の温暖化ガス排出量は、先の京都議定書で12年までに基準年199
0年比6%減を目標としていましたが、06年度に6.4%増とむしろ厳しい状況と
なっています。そして14日にまとめられた新経済成長戦略の基本骨格で、世界最高
水準にある省エネ技術を成長のエンジンとする「成長力」を一つのキーワードに設定
しています。そうであれば、日本政府は、省エネ技術の優秀性を証明するとともに京
都議定書を遵守し、環境先進国を世界に知らせるために、国内隅々までの省エネ普及
の政策を強力に打ち出し、覚悟を持って推進するべきでしょう。それが、環境ビジネ
スの主導権を取ることにつながるのではないでしょうか。
経済評論家:津田栄
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■ 土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部准教授
「環境ビジネス」は、世界的に地球温暖化の問題が重視され続ける限り、今後も有力
な産業になるといえると考えます。「環境ビジネス」といっても、色々な側面がある
ので、他の「○○ビジネス」と異なり(例えば「資産運用ビジネス」といっても実際
は金融業の一部であるという縦割り的な類ではなく)、様々な業種に横断的なビジネ
スといえるでしょう。つまり、「環境業」という産業が存在するというより、電気機
械器具製造業や電気・ガス業といった、実際に地球温暖化防止につながる技術をもっ
てビジネスをするハード面の業種もあれば、運輸業や卸売・小売業といった、地球温
暖化防止につながる人的取り組みを促す形でビジネスをするソフト面の業種もあり、
それらを総称して「環境ビジネス」を成すものと考えられます。以下では、日本のケ
ースのみ触れますが、世界的にみても同様のことが言えます。
「環境ビジネス」の中でも、省エネルギー技術のビジネスについては、我が国の企業
を中心とした取り組みは、世界的に見ても高水準にあると言え、国際的に優位性があ
る分野といえます。我が国では、1973年度から2003年度までの30年間で、
GDP当たりのエネルギー効率を約37%も向上させることに成功した実績がありま
す。この背景には、動機として必ずしも地球温暖化防止というわけではなく石油ショ
ック以降の石油依存の抑制が主だったにせよ、結果的にはエネルギー消費を抑制する
技術を培ってきました。この省エネルギー技術を使ったビジネスは、今後も地球温暖
化防止に役立つ技術として、世界的な需要が多く見込まれるものです。仮に地球温暖
化防止に興味がない国や企業があったとしても、この技術によって同じエネルギー資
源からより多くのエネルギーを得ることができるため、その技術へのニーズは存在し
ます。その点からしても、我が国で培われた省エネルギー技術は、国際的なビジネス
として引き続き拡大してゆくと思われます。
京都議定書における温室効果ガス排出量の目標達成に関連して、我が国では、産業
部門の排出量抑制は進んでいるものの、民生部門と運輸部門の抑制ができていないこ
とが問題視されています。この観点から見て、今後の環境ビジネスの展開として、民
生部門と運輸部門での取り組みと結びついたビジネスがフロンティアと見ることがで
きるでしょう。確かに、電気をこまめに消すとか容器等のリサイクルを多用するとか
地道な努力も必要ですが、極言すれば焼け石に水でしょう。別の言い方をすれば、民
生部門での温室効果ガス抑制を前掲のようなボランティア的取り組み(ビジネスベー
スに乗らない)だけでは、力不足といえるでしょう。むしろ、ビジネスベースに乗る
取り組みを積極的に導入することで、民生部門でも有効に温暖化ガス排出量を削減で
きると考えます。
とはいえ、現時点で、有効な取り組みと思われるものでも、まだうまくビジネスベ
ースに乗ったとはいえない段階のものが多いようです。例えば、エコキュート(自然
冷媒ヒートポンプ式電気給湯器)やエコジョーズ(潜熱回収型給湯器)が普及する
と、家庭部門での温室効果ガスの削減が相当進むとみられ、電力会社等はこれを既に
ビジネス化しています。ただ、これらの価格はまだ高いために普及が緩やかにしか進
んでおらず、普及促進のために国からの補助金も相当程度投入されています。その意
味で、国からの補助金から脱却できてこそ、民間のビジネスとして成り立つと言える
ので、まだ完全にビジネスベースに乗ったとはいえない段階です。現に、私が一委員
として議論に加わっている財政制度等審議会歳出合理化部会及び財政構造改革部会合
同部会の、2006年10月27日の会合(議事録は
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/gijiroku/zaiseic/zaiseic181027.htm)
で、エコキュートやエコジョーズに対する補助金を扱う特別会計での歳出削減に関し
て議論した際、民間のビジネスとして成り立ちつつあるなら補助金は削減してもよい
のではないかとの主張に対し、まだ補助金がなければ普及しない状況だから廃止すべ
きでない、との意見が出されました。
「ビジネス」というからには、できるだけ政府の補助や規制のない形で営まれること
が望まれます。地球温暖化対策を、NPOなどで非営利的に進めるものだけにとどま
らず、営利目的と整合的になるように取り組むことが重要です。その観点から見て
も、「環境ビジネス」の今後の発展が望まれます。
慶應義塾大学経済学部准教授:土居丈朗
<http://www.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/>
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■■編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■
Q:841への回答ありがとうございました。ふと気づくと、2007年も終わろ
うとしています。今年は春以来、体調不良に悩まされました。血液や各部のMRIな
ど、医学的な検査では異常はなく、数値や画像診断は「健康」でした。ただし、東洋
医学では、健康と病気の中間に、亜健康と未病というカテゴリーがあるのだそうです。
はっきりしているのはもう40代までのような無理ができなくなったということです。
無理をしないで淡々と、日々やるべきことをこなしていこうと思っています。
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Q:842
原油価格の高騰が止まりません。おもな理由は、原油需要の増大、イラク戦争やイ
ラン情勢、そしてテロなどの心理的供給不安、それに投機だと言われているようです。
今後、原油価格の高騰が止まるためには、どのような要因が必要なのでしょうか。
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村上龍
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JMM [Japan Mail Media] No.458 Monday Edition
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】 <http://ryumurakami.jmm.co.jp/>
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