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「経済コラムマガジン07/12/3(507号)
「金余り」と商品相場
長短金利と商品相場
米国を中心とした「金余り」こそが、サブプライム問題などのバブルを起こしたと先週まで筆者は指摘してきた。ここ数年の一次産品価格の急激な上昇もこの「金余り」を背景にした、投機マネーの商品市場への流入が原因と考える。先週号はその端的な例として原油価格の推移に触れた。
ただ「金余り」というものを具体的に示す数値はない。また一次産品といっても、何の数値を取上げることが適切なのか判断が難しい。また推移ということになれば、連続して入手可能な数字が好ましい。さらに為替変動の影響を排除する必要がある。もちろんこれらを全て満足させるデータというものはないが、なんとか数字を工夫して「金余り」と商品相場の関係について述べてみる。
「金余り」の様子を見るものとして、短期金利では米国のFF金利と長期金利では米国債10年物の利回りを取上げる。商品相場の推移を見るものとしてはロイター・ジェフリーズCRB指数を使う。ただCRB指数は何回か商品構成が修正されており(直近では2005年に修正されている)、連続性の点では多少難があることを承知で使った。商品相場の指数は他にロイター指数があるが、これにはエネルギーと貴金属が含まれていない。またロイター指数は英ポンド建てなので為替変動の影響がある。
さらに参考のためにNY原油先物価格(バーレル当り)と米国の住宅着工件数(万件、07年6月、9月、直近は年率換算)を併せて掲載する。
長短金利と商品相場(暦年ベース、CRB先物とNY原油は年平均)
FF金利 10年国債 CRB先物 NY原油 住宅着工
96年 5.25 ー 247.94 22.03 148
97年 5.50 ー 241.90 20.61 147
98年 4.75 4.65 212.92 14.40 162
99年 5.50 6.43 194.78 19.30 167
00年 6.50 5.10 220.15 30.25 157
01年 1.75 5.02 205.97 25.95 160
02年 1.25 3.81 211.22 26.15 171
03年 1.00 4.25 241.88 30.89 185
04年 2.25 4.22 275.33 41.47 196
05年 4.25 4.38 310.12 56.70 207
06年 5.25 4.70 328.85 66.25 180
07年6月 5.25 5.02 314.32 67.53 147
07年9月 4.75 4.59 323.89 79.63 120
直 近 4.50 4.47 354.29 98.18 123
・市場の反乱
前段で足掛け12年の米国の経済数値の推移を示した。これらの経済数値は、人々の経済活動の営みの結果といえる。ただしFF金利だけは米国連邦準備制度理事会(FRB)が政策として決定するものである。FF金利は政府と金融当局の意思を示す数字といえる。
ところが今日、政府と金融当局の思惑通りには経済が動かなくなった。これが経済の混乱を引き起していると言える。例えばサブプライム問題もこのような状況から生まれたものと筆者は認識している。
最初にこの12年の間に起った大きな出来事と政策金利(FF金利)の関係について簡単に述べる。まず01年9月11日の同時多発テロの発生である。これによって米国経済はどん底まで落込んだ。これに対してFRBは6%台だったFF金利を1%台まで一気に引下げた。
次は03年3月19日の米軍のイラク攻撃である。当時はまだ同時多発テロによる経済の低迷の余波が続いており、金融当局は金融緩和政策を継続した。FF金利は歴史的に低い1.00%まで引下げられた。
そして筆者が三番目に取上げたいのが日本の政府・日銀による常軌を逸した大規模な円売り・米ドル介入である。為替介入の開始は03年1月であった。特に03年の末から04年の3月までの間に、35兆円もの信じられないほど大規模な為替介入が実施された。
ところが上記の表から米国の金融当局は04年に入って金融引締政策に転換を行っている。これはCRB先物指数を見ても分るように、03年から急激に原油などの一次産品の価格が急激に上昇を始めたからである。また米国経済も底打ちし、利上げの条件が揃ったと判断したのであろう。ところがちょうどそのタイミングに、米国の金利政策を打消すような大規模な為替介入を日本は行っているのである。このことについては来週も取上げる。
米国のFRBは03年から06年まで実に長い期間を掛けて利上げを実施している。FF金利は1.00%から5.25%まで引上げられた。ところが一向にCRB先物指数は下がらないのである。原油価格も毎年上昇を続けている。これについても来週号で触れる。
また利上げに拘わらず、住宅着工件数は05年まで伸び続けた。ところがこの住宅建設も06年からはさすがに陰りが出てきた。やはり継続した利上げが効を奏したと考えられる。
しかしサブプライム問題が深刻化し、今年の9月、金融当局は一転利下げ政策に転換した。この利下げは一定の効果があり、株価も一時的に上昇に転じた。しかし筆者は、バブルが崩壊した以上、住宅建設だけは回復しないと見ている。
そして金融当局を悩ませているのが、一次産品価格の動きである。9月の利下げは市場の動揺への応急措置であった。ところがこれによって当分利上げはないと見た一次産品市場は、再び上昇を始めたのである。直近のCRB先物指数は354.29ととんでもない数字になっている。これは一種の市場の反乱である。
サブプライム問題などで米国経済は混乱している。しかしこの責任の一端は日本政府にあると筆者は思っている。来週はこれについて話をしたい。 」
http://adpweb.com/eco/eco507.html