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2007年11月12日
通貨ユーロの秘密【オルタナティブ通信】
http://alternativereport1.seesaa.net/archives/20071112-1.html
経済人類学者カール・ポランニーは、今まで人類が経験した、経済の類型を3つのパターンに分類している。
1番目が、市場経済であり、現在の世界経済の在り方が、これに該当する。商品には代金という、「有償」の見返りが伴う。
第2番目が、再分配経済である。これは、豊かな社会階層から税金を取り、その資金で貧困層に対し、福祉・教育制度を拡充し、適用するといった、国家による経済運営の制度である。豊かな地域から税金を取り、道路建設等の公共事業を貧しい地域に対して行うという、日本型福祉国家もこの類型に入る。
この場合、要になるのが、国家による経済支配・コントロールである。
3番目が、贈与経済である。贈与経済については、マーシャル・サーリンズ等による研究書が多数出ているが、日本のお歳暮、お中元等が、その典型となる。
贈与経済には、市場経済のように貨幣の支払いと引き替えに、商品・サービスを要求する「有償」の仕組みは無いが、贈与を受けた側は、その贈与に対し「負い目」を負い、何らかの優遇措置を相手に対し、取らなければならない心理状況に追い込まれる。これは、お中元等に典型的である。
農産物の産地直送等で、コメ農家が台風のためコメが全滅してしまっても、消費者はコメの代金を支払うシステムが存在するが、これは台風で農産物が全滅し、農家に収入が無くなっても、農家には毎日の生活費用、子供の教育費用、高齢者の介護・医療費用が必要であり、生活が維持できなければ、農家は農業を放棄し、別の職種に転業してしまうためである。こうした転業が多発すると、社会全体で食料不足が発生する事になる。台風等、天災により農家が農産物を出荷出来ない状態であっても、翌年、農業生産活動が継続出来るようなシステムを作る事が、社会全体の食料確保の観点からは、必ず必要になる(再生産費用)。
産地直送等に見られる、農産物を提供されなくてもその代金を消費者が支払う=再生産費用の補填は、一種の「無償の贈与経済」となり、市場経済原理の欠陥を補うシステムになっている。
市場経済と異なり、贈与は「無償」が基本となる。
1929年、世界経済恐慌が起こる。市場経済を自由放任(レッセ・フェール)しておけば、完璧であると考える市場原理が、欠点だらけのシステムである事が暴露された。
企業は金儲け=利益のために事業を行う。サラリーマンが1日働き、1万円分の商品を生産しても、企業は7000円の給与しか支払わない。残金の3000円が利益である。この利益が無ければ、企業は事業を行わない。
サラリーマンが給与全てを消費に回しても、商品は7000円分しか売れない。しかし商品は、1万円分生産されている。3000円分の商品は常に、売れ残る。この在庫3000円分は、企業の利益3000円分と等しい。
企業利益とは、在庫である。
在庫=売れ残りが増えると、企業は「これ以上作っても売れないので」生産をストップし、サラリーマンをクビにする。働き手が必要でなくなるためである。
クビになったサラリーマンは収入が無くなるため、ますます消費しなくなり、企業は在庫が、ますます増える。企業は、ますますサラリーマンをクビにする。クビになったサラリーマンは、ますます消費しなくなり、在庫が増え、サラリーマンは、ますますクビになる。
これが不況である。
原因は、企業が利益目的で、サラリーマンの給与を3000円分、ピンハネした事にある。
企業利益は、在庫であり、それはサラリーマンをクビにし、不況の原因となる。不況は企業を倒産させる。利益を追求する企業は、「自分で自分の首を絞め殺し、倒産させて」いる。
市場原理とは、企業とサラリーマンの「自殺」経済である。
大規模な不況が世界規模で起こると、世界経済恐慌=パニックとなる。
唯一の解決策は、戦争である。
戦争で、毎日、飛行機、戦車を破壊し、ピストルの弾を消費し、刃物で人間の心臓を突き刺すと同時に、軍服を引き裂き、軍隊用のガソリン、食料を提供し消費させる。軍隊は何も生産せず、ひたすら破壊する。在庫の、鉄鋼、自動車、飛行機、火薬(化学製品)、衣類、食料は全て消費される。
戦争は全ての在庫を処理する。
戦争が起こり、人間が殺し合いをするのは、企業が利益目的で、サラリーマンの給与から3000円ピンハネした事が原因である。
企業利益は、戦争の原因である。企業の利益追求とは、戦争による殺人である。
企業が利益追求を止め、サラリーマンの給与を現在の数倍にし、最低賃金法でパート・アルバイトの最低賃金を50万円にし、50万円以下の給与を支払った会社経営者を、戦争犯罪人として終身刑で刑務所に入れれば、不況と戦争は、地球上から無くなる。
1929年、世界経済恐慌により、市場経済が欠点システムと分かり、世界中で、市場経済から再分配経済への移行が行われた。
米国では、ルーズベルト大統領のニューディール政策で、豊かな階層から税金を取り、ダム建設等の公共事業を国家が行い、失業者を建設事業で雇用した。
国家が、市場に代わり、経済運営を担い始めた。ケインズ経済学による、いわゆるケインズ政策である。
米国の、国家による経済支配・運営は、比較的ゆるやかであった。
日本の天皇制ファシズム、ドイツのヒットラー、イタリアのムッソリーニによるファシズム体制は、経済のみでなく、人間の生活の全てを、国家により徹底的に管理・統制した。
一方、ソ連等、共産主義国は、経済部門を国家により所有する方法を採用した。ファシズム体制が、個人企業の国家管理・統制を採用したのに対し、共産主義は企業そのものを国家が「所有」した。
ケインズ政策、共産主義、ファシズム体制、共にゆるやか、または徹底管理の違いはあっても、「国家による経済運営」という再分配経済システムを採用し、市場経済原理に「見切り」を付けた点では同一であった。
冷戦時代、アメリカ対ソ連、「資本主義VS共産主義」等と言う対立が主張されたが、ケインズ政策を採用する米国と、ソ連共産主義は、国家主義、再分配経済という点では同一であった。
フロリダ産のオレンジとカリフォルニア産のオレンジ、どちらが正義か?
そのような議論は成立しない。どちらもただのオレンジである。ケインズ政策の米国、共産主義のソ連、どちらもただの国家主義である。どちらかが正義等という議論は、成立しない。
第二次世界大戦で、日本、ドイツ、イタリアが敗戦する事によって、ファシズム体制は崩壊した。
1991年、ソ連が崩壊した事によって、共産主義は崩壊した。
残っているのは、ケインズ主義だけである。
郵政民営化を主張した日本の竹中平蔵のように、全てを市場原理に任せるという事は、1929年以前の時代に逆戻りする事を意味する。
市場原理とは、戦争である。
市場原理に全てを任せるという事は、戦争しましょうという事である。29年の経済恐慌から、何1つ学ばなかったという事である。
「市場原理に全て任せる」という主張は、過去の教訓から何も学ばない愚論か、デマゴギーである。
デマゴギーの本質は、以下の通りである。
世界中で、市場原理の欠陥が明らかになった1930年代、世界各国で農産物マーケティング・ボード・システムが採用された。
農家と国の代表が集まり、コメ、小麦、綿花、オレンジ等、農産物ごとに生産量を管理し、価格を決定し、流通ルートを確保するボード=会議が創立された。
先述の、農産物の産地直送システムのように、農家に再生産費用を保障するためには、農産物の価格の下落を避け、生産量を過剰にならないよう「計画経済」システムを、採用せざるを得なかったのである。
ソ連の計画経済を非難し敵対していた、アメリカ、カナダ、英国、フランス等で、この「計画経済」は採用された。国家経済の基本である、食料生産の安定確保は至上命令であり、その分野を国家が徹底管理下に置いたのである。
形式的には、農民が自主的に集まる協同組合の形を取りながら、「参加しない」事は国家が許さない、「強制的な自主参加・協同組合」であった。
先進国が採用した、この農産物マーケティング・ボードにより、先進国の農業は保護され、食料自給率は飛躍的に上昇した。カナダが、小麦輸出大国に成長した理由は、このマーケティング・ボードの成功によっている。
しかし、1960年代以降、このマーケティング・ボードは、少しづつ廃止の方向にある。
名目上は、農産物の国家管理から、「全てを市場原理に任せる」ためである。
しかし実際には、世界規模で活動する穀物商社の登場により、農産物を「国家レベル」で管理する事が、規模的に不可能、不適切になったために、マーケティング・ボードは廃止されて行く。
オレンジジュース市場が、その典型である。
オレンジジュースは、世界で消費される30%以上をブラジルが単独で生産し、チリ、アルゼンチン等、南米に加え、米国フロリダ州、イスラエル等が主な輸出国である(米国カリフォルニア州のオレンジは生食用であって、ほとんどがジュース加工されない)。
当初は、輸出各国がオレンジジュース・マーケティング・ボードを持ち、生産管理を行っていた。典型的な事例は、イスラエルである。
大部分のイスラエルの企業は、日本の八幡製鉄所を手本に創立されている。かつて日本政府は、八幡製鉄所を創立し、経営が軌道に乗ると、民間に払い下げ新日鉄とした。新日鉄の技術者として、この企業経営方式を学んだショール・アイゼンベルグは、新日鉄会長の娘と結婚し、第二次大戦後、イスラエルを建国する。アイゼンベルグは世界最強のスパイ組織モサドを創立する一方、イスラエルを代表する、レウミ銀行、ランベール銀行等を創立し、世界から資金を集め、イスラエル国営企業を大量生産し、経営が軌道に乗ると、民間に払い下げ続けた。イスラエル産業界は、こうして創立された。全て出発点は国営である。それは、日本の八幡製鉄所を手本としている。
イスラエル農業も、国営のマーケティング・ボードにより管理・運営され、オレンジジュースは、イスラエル柑橘マーケティング・ボードCMBIにより管理されて来た。
しかし、イスラエルは、ブラジル等、南米からの安価なオレンジジュースとの競合の中、南米オレンジ・ジュースを独占する米国カーギル社、ドレフィス社(この企業はフランス系のイスラエル企業である)との協議体制を形成し、特にヨーロッパ市場へのオレンジジュース輸出では、生産・価格調整体制を作り出す。
国家のマーケティング・ボードが、穀物商社同士のマーケティング・ボード体制に「移行」したのである。
カーギルの経営者ロックフェラーは、イスラエルを本拠地とし、ドレフィスもフランス系イスラエル企業であり、イスラエルを中心とした多国籍・穀物商社による「管理体制」が、国家管理に「取って代わった」のである。
「全てを市場原理に任せる」というデマゴギーの正体は、国家から多国籍企業による「管理体制に任せる」という意味であった。
世界1位の食料輸出大国アメリカ=カーギル、世界2位の食料輸出大国フランス=ドレフィス、イスラエルが、ヨーロッパ農産物市場において一体化した事になる。
この農産物市場での一体化を基盤として、ヨーロッパ最大の農業金融クレディ・アグリコルとイスラエルのランベール銀行が、統一EU、そしてユーロ通貨を創立する。創立当初、EU本部は、ベルギーにあるイスラエルのランベール銀行の中に置かれ、通貨ユーロを番人として管理し、ユーロ通貨基金を運営するクレディ・アグリコルの経営は、かつて世界中を奴隷支配した東インド会社=インドスエズ金融が行い、インドスエズ金融の運営は、カーギルの経営者ロックフェラーの銀行ゴールドマン・サックスが担っている。
かつて、東インド会社の別働部隊として、ベトナム、ラオス、カンボジア等を植民地支配したインドシナ銀行の実態は、穀物商社ドレフィスであり、通貨ユーロの担い手が、カーギル、ドレフィス、イスラエルという、「世界とヨーロッパの食料支配企業」の手に、しっかりと把握されている。