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http://markets.nikkei.co.jp/column/fxwatch/index.cfm
(2007/11/27)
米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題は日を追うごとに深刻化し、世界中でリスク縮小の動きが起きている。市場が不安定になると、金利差を狙った取引は不利になる。価格の変動リスクが高過ぎるからである。そのため、為替市場では「低金利通貨売り・高金利通貨買い」の取引の逆流が起き、円高が進行している。特に対ドルでの円高傾向が目立つが、こうした傾向を国内の実需筋が後押ししているという事情もあるようである。
まず、国内の輸出企業。現在ほとんどの輸出企業は為替の社内想定レートを設定している。今年度のドル円の想定レートは110-115円に集中しているようである。しかし、現在それよりも円高水準になっているために、今輸出予約を締結すると損失が出る。そのため、今後110円を越えるような局面があれば、かなりドル売り円買いを集中させる可能性が高く、これが円安の流れの阻害要因となってくる。
また、年を越えると各企業は来期(2008年度)の社内想定レートを決める作業に入る。足元の状況次第であるが、08年度は円高リスクも高そうな気配であると予想し、かなり円高水準での設定になる可能性が高い。実勢より円高水準にレートを設定した際には、早めにドル売り円買い予約を締結すれば、ある程度の利益を確保できるため、期が始まる前に、来期分のドル売り予約を前倒しで行ってくるであろう。
一方輸入業者の動きにも変化が見られている。ここ数年間輸入業者の間では長期の輸入為替予約という取引が活発化していた。この予約は「フラット為替」とも呼ばれ、数年間、中には10年にも及ぶ期間、毎月一定額のドル買い円売りを一定のレートですることができるという為替予約である。換言すれば将来の仕入れ代金の支払いに伴うドル買い円売りを事前に予約してしまうという取引のことである。この予約が活発化したのは日米金利差を活用して、実勢よりかなりドル安円高の水準でドル買いができるという仕組みになっていたからである。
ここ数年は為替市場が比較的安定していたため、円高局面があると輸入業者はこの長期輸入為替を締結が活発化するという傾向があった。これが円高の流れを阻止するという効果もあったのだと思う。しかし、今回はサブプライムローン問題があまりに大きく注目を集めているため、ほとんどこうしたドル買いの動きはみられない。今まで円高を阻止していた取引の1つが鈍化してしまったということにある。
さらに問題なのは、既に長期輸入予約を締結している人がこの予約を時価評価しなければならなくなった場合、現在のような円高局面では相当の損失がでてしまう可能性もあるということである。今のところ時価評価の必要はないということのようであるが、一部時価評価すべきという意見も専門家の中からでてきているようである。
26日、日経金融新聞に日本のある事業法人が輸入に関する通貨オプションに関して多額の損失を被っていることが報じられた。取引の内容まで記載されていなかったので、詳細はわからないが、通貨オプションなどのデリバティブ商品を活用して、一定の円高になると大きな損失がでてしまうという商品が日本の事業法人にかなり売られている可能性は高い。こうした目に見えない円高方向へのリスクがまだまだ眠っているのかもしれない。