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ドル売り材料の1つになる中東産油国のペッグ制廃止(KlugView)
2007/11/26(月)13:16
最近、サウジアラビアなど中東の産油国では、自国通貨を米ドルに連動させるペッグ制を廃止すべきとの意見が強まっています。ペッグ制とは、自国通貨と特定の他国通貨の為替レートを一定の範囲内に収める制度で、為替レートに多少は動きのあるものの一種の固定相場制といえるものです。
中東産油国は、自国通貨を米ドルと連動させるペッグ制を長く採用しています。米国は、世界最大の原油消費国の1つですので、米国の通貨米ドルと自国通貨を連動(ペッグ)させることで、為替変動に影響されることなく原油収入を安定化させる効果が期待できます。また、原油収入を運用する際にも、世界最大の金融市場を有する米国と通貨をペッグさせたほうが、為替変動に影響されることなく運用リターンを自国に還流させることもできます。中東産油国の多くが、隣国イスラエルに比べ軍事力が弱いことから、安全保障を米国に頼らざるを得ないという政治的事情をペッグ制の理由に挙げる方もいます。
こうした理由を考えると、中東産油国にとって米ドルとのペッグ制は、それなりに利点のある制度でした。しかし、米FRBが利下げを実施し、為替市場でドル安が進んだことから事情が変わってきました。
自国通貨を米ドルとペッグさせるには、中央銀行は自国の金利を米国と同程度に変更する必要があります。仮に自国と米国との間の金利に差が生じると、金利を狙った取引が拡大し、結果として自国通貨と米ドルとの為替レートが変わる可能性が高まるためです。中国のように金利をあえて変更せず、為替介入で為替レートをペッグさせる方法もありますが、介入は市場原理を歪める行為ということもあり、コストが少ない金利の変化でペッグ制を維持するのが一般的です。実際、米FRBが利下げをしたことから、中東産油国もあわせるように利下げをしています。アラブ首長国連邦(UAE)は、貸出の指標金利である譲渡性預金金利を0.1から0.2%引き下げ、サウジアラビアも政策金利を0.25%引き下げています。
ただ、ペッグ制を維持するために金利を引き下げたことで、中東産油国ではインフレ圧力が高まっています。中東産油国は、原油価格の高騰を背景に好景気を続けているため、金利引き下げが消費拡大ひいては物価上昇に直結しやすい状況にあります。たとえばサウジアラビアの生活コスト指数は、前の年に比べ4.4%上昇しています(8月時点)。サウジアラビアのインフレ率は、昨年まで1〜2%程度だったことを考えると、インフレ圧力は高まっているといえます。
インフレ圧力を和らげるには金利を引き上げるのが効果的です。しかしペッグ制を維持するのであれば、
米国が利下げをしている以上、金利を引き上げるわけにはいきません。このため、最近になって中東産油国においてペッグ制廃止の議論が高まっています。
中東産油国の1つであるクウェートは、今年5月、インフレ抑制を目的にペッグ制を廃止しています。今後も米国が金利を引き下げ、中東産油国のインフレ圧力が高まるようだと、クウェートに続けとばかりに、サウジアラビアやUAEなどもペッグ制廃止に踏み切る可能性が高まります。中東産油国のペッグ制廃止は、米ドルという通貨の威信低下を象徴する出来事ともいえるため、為替市場のドル売り材料の1つになることにも注意が必要です。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
サウジアラビアの生活コストは8月に前年比で何%上昇した?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
4.4%
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