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「経済コラムマガジン07/11/26(506号)
・原油価格に見るバブル
・原油価格の推移
米国のサブプライム問題をずっと取上げている。たしかに底をなかなか見せないサブプライム問題自体は大問題であるが、その背景となった「金余り」こそがもっと関心を集めるべき問題と筆者は考える。この「金余り」現象が続く間は、金融当局も次に打つ手が限られる。
米国はサブプライム問題の発生によって「内なる新興国」、つまりヒスパニック系移民を中心にした低所得層の住宅ブームは終焉を迎えようとしている。これが原因となり米国の経済成長率はかなり低下すると見られる。米政府や金融当局は、利下げを行いたいところである。しかし今のところ「金余り」による投機マネーはまだまだ健在であり、原油代も再び上昇している。
筆者は、3年前04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」http://adpweb.com/eco/eco352.html で原油価格はピーク時で70ドルと予想し、1年前06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」http://adpweb.com/eco/eco458.html でそれをフォローした。しかし筆者の予想を超え、100ドルに近付いているのである。世間では100ドル超えが当り前のように語られている。
100ドルどころか、そのうち150ドルにもなるという極端な声もある。しかもこの声の根拠を簡単には否定できない。一つは中国とかインドといった人口の多い国が高い経済成長を続けるという見通しが強く、石油の需要がますます増えると見られることである。第二として世界的に大油田の発見がなくなり、供給量に頭打ちが見られることである。そして第三に、物価の上昇によって米ドルの価値自体が下がっているので、今日の原油価格はそれほど異常ではないという見解である。
最初の二つは程度の問題はあるがほぼ事実と思われる。ただ最後の物価との関係を検証してみる。第二次オイルショック時の原油価格のピークは80年代初頭のバーレル当たり40ドルであった。今日の米国の物価は当時の約2.2倍になっている。したがってピーク時の40ドルは、今日の90ドル程度に相当する。つまり今日の100ドルに迫る原油価格は、既にこれを超えているのである。
考えなければならないのは、第二次オイルショック時の40ドルも多分に投機的要素によって作られた価格ということである。実際、その後の原油価格は落着き、長期的には20ドル程度で推移して来た(湾岸戦争や同時多発テロなどで一時的に高騰したが)。つまりピーク時は投機的要素によって倍くらいになっていたのである。
そのうち原油価格が150ドル、200ドルになるというから、原油市場に投機マネーが入って来て100ドルという価格が現実のものになる。しかしとても150ドルにならないと分れば、一斉に投機マネーは逃出し価格は暴落すると考える。さらに筆者は新興国の需要予測も過大に見積もられていると見ている。
さすがに150ドルにもなったら世界中の人々も石油の消費を減らすことを真剣に考えるはずである。したがってバーレル当たり150ドルという価格は非現実的である(100ドルも非現実的)。そしてこの価格が非現実的と周知されるにつれ、原油価格は一時的に暴落するものと見ている。
・新たな投機マネーの流入
筆者は、投機的要素がなくなるという条件で、原油価格は50ドル程度に落着くと見ている。ただ米ドルの下落を見越すと、60〜70ドル辺りが妥当と考える。いずれにしても現在の価格はこれらからかなり高い。そして中長期的に原油価格は、代替エネルギーの開発と省エネの進展によって決まると筆者は考えている。
しかし長く続いた原油価格20ドル時代はもう来ないものと見て良い。ところで日本経済は省エネの進展によって原油価格の動向に左右されない形になった。しかし原油代がここまで上がってくればさすがに話は違ってくる。
日本の原油輸入額の対GDP比は5%から最近の1%強に低下して来ていた。これはGDP自体の伸びと円高、そして日本の省エネの進展の結果である。特に省エネの進展によって日本は先進国の中で一番原油価格の上昇に対する抵抗力が強くなった。本来なら今回の原油価格高騰の影響も軽微なはずであった。
さらにGDP比1%と言っても、これは原油代に限った話である。NLGや石炭、そしてウランといった他のエネルギー源の輸入を加えると、輸入エネルギー源全体の対GDP比はもっと大きくなる。さらに他のエネルギー源の価格も原油価格に連動して高くなって来ているのである。筆者は、直近の輸入エネルギー源全体の対GDP比は8〜10%程度と推定している。
石油市場に投機マネーが流入して、これが原油価格の決定に深く関与している。たしかに昔から石油は投機の対象になっていた。しかし以前は石油を投機の対象にしていた人々は限られていた。実際に石油価格を決めるのは昔ならメジャーであり、その次はOPECであった。
ところがこの石油市場で大手のファンドやヘッジファンドが、新たに資金の運用を始めたのである。商品市場の中では大きいと思われる石油市場であるが、株式市場や債券市場に比べれば小さなものである。このような小さな市場に大きな投機的マネーが流入したのだから、価格が高騰するのが当り前である。国際的なカルテル機構であるOPECもこれに追随する他はなく、原油価格の決定権はOPECからニュヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)に移った。OPECはNYMEXで決まる原油価格をフォローするような生産調整を行っているに過ぎない。さらに原油だけでなく、他の商品市場にも大手のファンドやヘッジファンドの資金が流れている。これについては来週取上げる。
石油市場や商品市場に新たな投機マネーが流入した背景には、世界的な「金余り」がある。もしサブプライム問題による経済の落込みを解決しようと金融を緩和すれば、「金余り」を助長し、さらに一次産品価格の高騰を招く恐れがある。世界の金融当局の金融政策は大変難しい局面に立たされている。ただサブプライムローンという一つのバブルが破裂したのだから、これが影響して他のバブルも次々と破裂するという見方もある。もう少し様子を見たいが、筆者もこれに賛成したい気持である。
来週は商品市場におけるバブルを取上げる。 」
http://adpweb.com/eco/eco506.html